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第六篇第三章 ジェノスハーバー攻防戦
王女の苦悩と光の涙
しおりを挟む政府直下裏帝軍幹部ライア・ガガルディンの
前に頼みのロード迄もが血に染まり倒れる。
両膝を着いて不思議と緩りと流れる其の時間
の中でシェリーの表情から血の気が引き現状
に起きている全てに頭の整理が追い付く事は
不可能と言っていい程、凄惨な景色を見る。
自身の真横には傷付き倒れ苦しそうに肩で
息をするポアラが石の地面に横たわる。
目の前では特徴的な其の髪色よりもドロドロ
とした生々しい赤い液体の中に倒れ込んで
動きを見せないロードの姿がある。
シェリーは口が開いたまま、過呼吸の様な
荒々しい息遣いの儘で言葉は出てこない。
其のシェリーの目の前へと足を進めて来た
ライアは見下ろす様にシェリーを眺める。
シェリーは何とか首を上げてライアを一瞥
するともう視線は逸らせない程の恐怖感に
包まれてしまい滴る汗が止まらない。
「姫は此の童達を信じていたんでありんすか?」
ライアから投げ掛けられた疑問にシェリーは
何とか口を開くが恐怖で弛緩した口からは
胸の内の言葉は喉元で固まった儘だ。
「辛い話でありんす。信じる事は罪では無く裏切る事は罪なのに…此処はまるで地獄絵じゃ…。何故なら信じ抜く程に裏切られがちなのが今の時代だからでありんす…」
同情を含んだ様なライアの言葉にシェリーの
中にあった何かしらの堰が切れたかの様に
全ての感情がごちゃ混ぜに溢れ出る。
其の集まった感情は正しく、絶望であった。
瞳を動かす事すら出来なかったシェリーは
顔を下げ両拳を石の地面に付けると溢れ出た
絶望感から言葉を発して行く。
「…な、なんでっ…。ぅぅ…なんで私がいると皆様がこんな目にあうのっ…なんで皆様が…なんで私じゃなくて…っ…」
「……およしよ…姫。妾達にも護るべきモノがあるのじゃ。気持ちは乗りはせんが泣き落としに付き合う程…時間は永遠とは行かぬのでありんす…」
「…ぅぅ…っ…。レザノフ…シャーレ様っ…ポアラ様っ…ロード様ぁ…私が弱いせいでっ…私がなにも出来ないせいで…こんな事に…っ…うあああァあああァ…!!!!」
ライアの言葉は今の錯乱したシェリーには
届く事は無く汚れ擦り切れ、土埃に塗れた
ドレス姿で喉を切る様に叫ぶ其の姿からは
王女という側面は消えていた。
ライアはどんよりとした表情の儘で鉄扇を
真上に振り翳すと此の場にピリオドを討つ
べくトドメの一撃を準備に入る。
錯乱している目の前の少女を一人殺すだけ。
ライアは腹を括り其の鉄扇に力を込めると
次の瞬間に振り下ろそうと意を決する。
だが、シェリーは其の瞬間に俯いたままで
心の中でとある祈りを呟いた。
「(奇跡でもなんでもいいっ…お願い…ッ。皆様を護りたい…今度は私がッ!!!)」
其の祈りに桃色の光のチカラが呼応した。
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