RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

文字の大きさ
上 下
219 / 648
第六篇第二章 港町に集う者達

海に想う復興の意志

しおりを挟む


デュークは何かを思い悩む様に海を眺める。



「何かただ海が好きって訳でも無さそうだな」



其の横顔にロードは気付くと声を掛ける。



「…まあ、思う所は有ると言う事だ」


「それがアンタが革命軍に居る理由だったりするのか?」



ロードの言葉にデュークは表情全くと言って
いい程に崩す事は無いままに黙り込む。

そして多少の思案を重ねた後にデュークは
海を眺めたまま緩りと穏やかな口調で自身
についての話を口を開いて話し始める。



「私は此の水の街アリアアクアの港町…ラヴェンダの出身なのだ。そして私の性であるオースティンとはかつては貿易名家として名を馳せた家系でもあった」


「ぼーえきめいか…?」


「海外と契約を結び、各々の国同士のパイプ役となる生業をしていたという事だ」


「…え?…それって…」




細かい話の内容はロードには解らない。

難しい事は理解出来ないのだが、そんな中で
ロードはたった一つの疑問点で思考が止まり
デュークの顔を見上げている。



「鎖国が制定された約百年前は私の爺様の代であった」



デュークは言葉を続ける。

貿易名家だったオースティン家は其処から
転落の一途を辿った事は容易に解る。

デュークの爺様の代は他の事業に力を入れて
鎖国が解かれる事を期待しつつ其の時の為に
準備を怠る事はしていなかった。

だが、デュークの父親の代で別事業にも陰り
が見え始めた所で更なる風向きの変化を実感
したデュークの父は政府に直談判を行った。

鎖国の解除とは言わずとも緩和をして欲しい
と伝えに向かったと聞かされている。

だが、デュークの父は其処で反逆罪として
断罪される事となってしまった。

一市民に依る政府への物言い。

当時の政府側には罪深いと感じさせてしまう
結果となり父が断罪されたあの日からいつか
は此のオースティン家の復興を願うデューク
の代が始まって行くのだった。



「其の中で開国を狙うノアとの運命的な出逢いがあった。そして今に至る、という訳だ」


「家柄の復興…か。職業的に鎖国の煽りをモロに食らってしまった訳か…」


「…父や爺様の見た此の海の景色は私の目的を色褪せぬ物としてくれる。いつかはノアと共に開国を成し遂げる為に明日も夢見がちな自身を戒めて戦うだけだ」



デュークはそう言うとロードに背中を向けて
丘の上から姿を消して行った。



「…どいつもこいつも…自分のやるべき事に真っ直ぐだな…。俺は…結局…ランスに会っても何も進まなかったってのに…」



ロードは静かな海の音に包まれながら俯いて
自身の拳を力強く握り締めていた。

そして明日は貨物船の到着予定日となる。

明日に備えてロード達は静かに眠りに付いて
明日起こる其の戦いに備える事となった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私はあなたの母ではありませんよ

れもんぴーる
恋愛
クラリスの夫アルマンには結婚する前からの愛人がいた。アルマンは、その愛人は恩人の娘であり切り捨てることはできないが、今後は決して関係を持つことなく支援のみすると約束した。クラリスに娘が生まれて幸せに暮らしていたが、アルマンには約束を違えたどころか隠し子がいた。おまけに娘のユマまでが愛人に懐いていることが判明し絶望する。そんなある日、クラリスは殺される。 クラリスがいなくなった屋敷には愛人と隠し子がやってくる。母を失い悲しみに打ちのめされていたユマは、使用人たちの冷ややかな視線に気づきもせず父の愛人をお母さまと縋り、アルマンは子供を任せられると愛人を屋敷に滞在させた。 アルマンと愛人はクラリス殺しを疑われ、人がどんどん離れて行っていた。そんな時、クラリスそっくりの夫人が社交界に現れた。 ユマもアルマンもクラリスの両親も彼女にクラリスを重ねるが、彼女は辺境の地にある次期ルロワ侯爵夫人オフェリーであった。アルマンやクラリスの両親は他人だとあきらめたがユマはあきらめがつかず、オフェリーに執着し続ける。 クラリスの関係者はこの先どのような未来を歩むのか。 *恋愛ジャンルですが親子関係もキーワード……というかそちらの要素が強いかも。 *めずらしく全編通してシリアスです。 *今後ほかのサイトにも投稿する予定です。

異世界召喚されたのは、『元』勇者です

ユモア
ファンタジー
突如異世界『ルーファス』に召喚された一ノ瀬凍夜ーは、5年と言う年月を経て異世界を救った。そして、平和まで後一歩かと思ったその時、信頼していた仲間たちに裏切られ、深手を負いながらも異世界から強制的に送還された。 それから3年後、凍夜はクラスメイトから虐めを受けていた。しかし、そんな時、再度異世界に召喚された世界は、凍夜が送還されてから10年が経過した異世界『ルーファス』だった。自分を裏切った世界、裏切った仲間たちがいる世界で凍夜はどのように生きて行くのか、それは誰にも分からない。

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

料理人がいく!

八神
ファンタジー
ある世界に天才料理人がいた。 ↓ 神にその腕を認められる。 ↓ なんやかんや異世界に飛ばされた。 ↓ ソコはレベルやステータスがあり、HPやMPが見える世界。 ↓ ソコの食材を使った料理を極めんとする事10年。 ↓ 主人公の住んでる山が戦場になる。 ↓ 物語が始まった。

聖女は祖国に未練を持たない。惜しいのは思い出の詰まった家だけです。

彩柚月
ファンタジー
メラニア・アシュリーは聖女。幼少期に両親に先立たれ、伯父夫婦が後見として家に住み着いている。義妹に婚約者の座を奪われ、聖女の任も譲るように迫られるが、断って国を出る。頼った神聖国でアシュリー家の秘密を知る。新たな出会いで前向きになれたので、家はあなたたちに使わせてあげます。 メラニアの価値に気づいた祖国の人達は戻ってきてほしいと懇願するが、お断りします。あ、家も返してください。 ※この作品はフィクションです。作者の創造力が足りないため、現実に似た名称等出てきますが、実在の人物や団体や植物等とは関係ありません。 ※実在の植物の名前が出てきますが、全く無関係です。別物です。 ※しつこいですが、既視感のある設定が出てきますが、実在の全てのものとは名称以外、関連はありません。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

充実した人生の送り方 ~妹よ、俺は今異世界に居ます~

中畑 道
ファンタジー
「充実した人生を送ってください。私が創造した剣と魔法の世界で」 唯一の肉親だった妹の葬儀を終えた帰り道、不慮の事故で命を落とした世良登希雄は異世界の創造神に召喚される。弟子である第一女神の願いを叶えるために。 人類未開の地、魔獣の大森林最奥地で異世界の常識や習慣、魔法やスキル、身の守り方や戦い方を学んだトキオ セラは、女神から遣わされた御供のコタローと街へ向かう。 目的は一つ。充実した人生を送ること。

茶番には付き合っていられません

わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。 婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。 これではまるで私の方が邪魔者だ。 苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。 どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。 彼が何をしたいのかさっぱり分からない。 もうこんな茶番に付き合っていられない。 そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。

処理中です...