RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

文字の大きさ
上 下
181 / 783
第五編第二章 立ち上がる若き新芽

デモンストレーションマッチ

しおりを挟む


「……取り敢えず…手合わせなら受けてやるッス…でも覚醒はそんなにおいそれと見せるモンじゃないから遠慮するッスよ…!」


「………ケチくせぇ」


「どの口が言うんッスか!?」



何となく状況を察したロード達はな庭先を
隅の方で眺めていたシェリーとレザノフに
合流すると、芝の上に敷かれたシートの上
に其々座るとほんの少し休憩を始める。



「君達、もうお昼時だから良かったら此れ食べて下さいね」



室内から出て来たザックはサンドイッチの
入ったバスケットを手渡すとシートの上に
正座をしてお茶を飲み始めた。



「やりィ…ザックさんサンキューな!」


「お腹ぺこぺこだよっ、食べよ?シェリーちゃん」


「はいっ!はわわっ、美味しそうですっ」


「お姫様の口に合うかはわかりませんよ?」



サンドイッチに手を伸ばしたシェリーを見て
ザックがほんの少し心配そうに覗き込む。

だが、シェリーはサンドイッチを頬張ると
幸せそうに微笑んでおり、ザックはほっと
した表情を浮かべてお茶を啜る。



「あ、そうだ。レザノフさん。頂いた豆から珈琲も淹れて来てたんでした、飲まれますか?」


「是非とも。すみません、ザック殿。気を遣わせてしまって」


「いえいえ。他にも珈琲、飲まれる方は居ますかね?」


「シャーレ殿は珈琲、飲まれるでしょう?」


「ええ。頂きます」



大人組と子供組といった所なのだろうか。

サンドイッチに夢中で居るのはロードを
始めとしたシェリーとポアラの三人。

ザックが淹れたコーヒーに集まったのは
レザノフとシャーレで優雅に珈琲を啜る。

まるでピクニック状態となっていたロード達
の視界の先では未だにU・Jとサーガが
不毛なやり取りを繰り広げていた。



「アイツ等…結局何がしてぇんだ?」


「さあ?…シェリーちゃん、タマゴとハムどっちがいいっ?」


「ポアラ様が好きな方で構いませんよっ?」



食事の話が八割、修行の話が二割。

悲しいかな、そんな風になってしまっており
U・Jとサーガが此の後繰り広げるであろう
手合わせがまるで興行の様に映ってしまう。



「……ッ…此の珈琲、美味しいですね…レザノフさん…!」


「若いのに此の味が解りますか…。流石はシャーレ殿ですね…」


「(差し入れ後にするべきだったでしょうか?…何だかU・Jとサーガへの関心が薄れて行っていますね…申し訳ない…)」



ザックはそんな風に心の中で呟くと苦笑いを
浮かべて改めて中庭に目を向けた。



「はぁ…良い案ではあったのに興味失ってるッスけど?あの子等…」


「心配すんなよ。サーガ君…嫌でも直ぐにコッチに視線が集まんだからよ…」


「因みに…何割の力でやるッスか…?」


「サーガ君と手合わせすんのも久しぶりだからなあ…まあせっかくだし八割くらいでどうよ?」


「ノッたッス…!」



ニヤリと笑って距離を取るサーガとU・J。

だが、何だかサーガは一つ忘れている様な
気がしていたが思い出せず集中を始めた。
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

私が出て行った後、旦那様から後悔の手紙がもたらされました

新野乃花(大舟)
恋愛
ルナとルーク伯爵は婚約関係にあったが、その関係は伯爵の妹であるリリアによって壊される。伯爵はルナの事よりもリリアの事ばかりを優先するためだ。そんな日々が繰り返される中で、ルナは伯爵の元から姿を消す。最初こそ何とも思っていなかった伯爵であったが、その後あるきっかけをもとに、ルナの元に後悔の手紙を送ることとなるのだった…。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

処理中です...