RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第四編第二章 絶望のオアシス

約束の夜までに

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「…お姉ちゃん…ごめんねっ、ありがとう…!」



フィオナが泣き止む迄ポアラは其の少女の
身体を抱き抱え頭を撫で続けて居た。

そして遂に笑顔を取り戻したフィオナを
見送ると二人は北に聳える宮殿を見遣る。

刻は間もなく夕刻を過ぎ去り夜へと向かう。

夕焼けに包まれたダフマの町を一歩ずつ
二人は真っ直ぐに北の宮殿を目指して進む。



「約束の夜迄に片付ければ何も問題無いだろう」


「ロードのワガママに振り回されてるのはこっちだよ…少しぐらい待たせたっていいんだから…」


「それもそうだな。だが、ロードが居なくてもこうやって捨て置く事は出来ないというのも難儀な話さ…」


「言えてる…染まってってるよね、確実に」


「だが、そう生きた方が気持ちが楽と云うのもまた事実。あの少女の為、苦しんでいる民の為に…暫し戦いに興じよう…!」



シャーレとポアラはそんな会話を繰り広げ
ながら向かったのはダフマの宮殿。

そして其の目の前に辿り着くと共に二人で
シャラムという豪族の棲家である宮殿を
見上げて決意を固めると視線を下ろす。

シャーレが左右を確認しているとポアラが
まさかの行動に出ようとしていた。

既にナックルダスターを手に持ったポアラは
入り口の扉を打ち破ろうとしていたのだ。



「ポアラ…!」


「なにっ?シャーレ…」



呼び止めに応じて一度動きを止めたポアラ。



「ロードじゃあるまいし…。態々正面から殴り込む必要はあるのか…?」


「もう…何回りくどい事言ってんの?アタシは…腑煮えくり返って止まんない…のッ!!!」



身体に纏わせた翠色の大地のギフトのオーラ
を右腕に集中させたポアラは一撃で重厚な
宮殿の門をぶち破ってしまった。



「(…あーあ…やってしまった…。というかもうそんな事よりも…ポアラの前であんまりオイタするのは止めておこう…本当に死ぬかもしれない…ッ…!)」



冷や汗をダラダラと流すシャーレは上手く
行ったと無邪気に笑顔で飛び跳ねるポアラ
を見ながら心の中で言い聞かせる様に呟く。



「行こう、スケベっ」


「何故、今スケベ…と…ああ。いや…スケベです、ごめんなさい…」



駆け出したポアラの背を追うシャーレの
不思議な反応にポアラはハテナを浮かべる。

二人がオアシスの横を走って抜けていると
宮殿内から慌てた様に衛兵達がわんさかと
飛び出して来ており二人は一度足を止める。



「…此れは一石二鳥かもしれないな」


「うん…実はアタシもそう思ってた。フィオナや町を助ける為と…」


「目覚めたチカラを試す良い機会…私達とダフマにとっては恐らくメリットしか無いだろう…」


「だね…悪い事してる人にはお仕置きしなきゃ…フィオナちゃんを泣かせるのは許さないッ!!」



シャーレとポアラはロードとの合流を控える
夜の前に偶然知り合った少女の為に戦う。

名を付けるとするならば、そう。

表と裏が別れ、苦しむ人間達の為に
豪族からダフマという町を取り戻す。

“ダフマ奪還戦”開始。
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