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第三篇第二章 一脈の幕間
集う反乱の同志達
しおりを挟む場面は切り替わり、風の街の酒場町である
カンピオンノールの外れに位置する海辺の
小さな洞窟の入り口の奥にある場所。
岩肌の道を進んだ先には大きな小部屋が
広がり其処は、洞窟内ではあるものの
完全に修繕し尽くされた部屋があった。
床も壁も岩では無く、ソファが幾つか
並んでおり其処に三人の人間が坐していた。
「おい、小娘…アイツはいつ来るんだ?」
「…小娘はやめてっていつも言ってるでしょ…はぁ…もう直ぐ来るみたいよ…」
「まさか、的にかけた姫を取り逃がすとはのう。驚きじゃ…あの男が…」
其々別々のソファに座った三人の共通項は
漆黒の団服、そう反乱軍の格好。
メンバーは、ロードとカンピオンノールの
脇道で刃を交えた元刀鍛冶のギルド。
小娘と呼ばれた空色の髪のツインテールの
女性が、其の戦いを仲裁した参謀アドリー。
更に始まりの街でシャーレ共に向かった
豪族ドノバンと、伯盛一家との戦いで
初めて顔を合わせた元ヤクザのアドラス。
反乱軍の幹部以上が三人も雁首を揃えた
のには理由があり、其れを話し始める。
「…何にしてもこれ以上革命軍に隠されたら…厄介だわ…はぁ…情報源からの提供があってもね…」
「そうじゃな…。奴からの情報が本物やったら帝国軍も動く…イモ引いとって儂等がカタにはめられる前にやるしかないわ…」
「俺ァ、戦えればそれで良い。強いヤツとやりあえるなんざツイてる証よ」
「…はぁ…ギルド。貴方はお気楽過ぎる…アドラスを見習うといいわ…」
アドリーの深い溜息と共に綴じられた会話の
中で出た“情報源”という言葉。
更にアドラスの言葉から察すると
其の情報は帝国軍にも流れている様だ。
「…ウィルフィンの到着を待って、其れと同時に革命軍のアジトがある、ロジャーズグリフへと向かう…はぁ…気は進まないけどね…」
「どうしたんだ、小娘?いつになく落ち込んだ顔してよォ」
「あれじゃろ…敵の副長…ティアは儂等の参謀にとっての幼馴染じゃ」
アドラスの言葉にアドリーは顔を背けたまま
無言を貫くが、其の表情は辛さを映す。
そして、会話内のロジャーズグリフという
地名が判明している事から、反乱軍の言う
情報源から革命軍のアジトの位置は丸裸だ。
更に革命軍の副長ティアと反乱軍の参謀
アドリーが幼馴染という事実。
何故二人は今、戦いの運命を辿るのか。
其れは今夜起こる戦いの中で見えてくる
のかもしれない、三人はウィルフィンの
到着を待ちながら、準備を進めて行く。
「…ティア…もう戦いは避けられないわ…はぁ…ごめんね、姫の命は貰うわ…」
アドリーは立ち上がると、小さく呟いて
拳を強く握り、唇を噛めしめた。
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