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第二編第一章 辻斬り事件
救援要請
しおりを挟む一度、舞台は切り替わり始まりの街
コミンチャーレに聳える帝国軍第九支部。
とある昼下がりに一室の電話が鳴り響いた。
「はい。此方第九支部。准将パイロです」
電話を手に取ったのは少将U・Jの右腕とも
称されるパイロ・ジョバーニ。
U・Jにのみパイロ・ジョバーニの
イニシャルでP・Jと呼ばれる男。
本人は其の呼び名を嫌っているのだが
嫌がる程U・Jは呼んでくる性格の為
最近、呆れ返って放置しているらしい。
「ええ…ええ。直ぐに叩き起こして伝えて置きますよ。はい、それでは…」
電話を切ると、溜息を吐いてパイロは
立ち上がり、支部長室の扉をノックなど
不要とばかりに普通に開けて中に入る。
すると、パイロは静かに怒り出す。
パイロの視界には昨日迄無かった筈の
ハンモックが部屋に設置され想像通りに
ハンモックに揺られながらU・Jが
涎を垂らして寝息を立てていた。
何とも気持ち良さそうな寝顔に更に
腹が立ったパイロは耳元に移動すると
一気に息を吸い上げて、口を開く。
「起きろーーーーーーッッ!!」
支部長室だけでなく、第九支部全体に
響き渡った准将パイロの声に支部内で
大きな笑いが起こっていた。
実は此れ、第九支部では日常茶飯事。
ある種、名物の様な物と捉えられていた。
「め、めっ…メンチカツ!!」
「何がメンチカツですか!意味不明な夢見てるんじゃないよ、アンタはもう…」
「お!P・J!飯の時間か!?」
「ぶっ飛ばされたいのか、アンタはッ!!」
此の後、准将より偉い筈の少将U・Jは
パイロにガミガミ説教されている間
正座をして肩を小さくさせていた。
其の後、文句を言われながらハンモックを
撤去させられて、やっと本題に入る。
「あの堅物ドーマン君から救援要請?」
「ええ。何でも例の辻斬り事件の犯人らしき男の発見に併せて、別の厄介事が重なって来たらしく…それにこれ」
「ん?これって…」
電話と同じタイミングで電信で写真が
送られて来ており、写真をU・Jが
手に取って首を傾げる。
「辻斬り事件の犯人に間違われてますね、完全に」
「だはははっ。どこ行ってもめんどくせぇ事してやがるなアイツは」
「で、どうします?救援要請」
「俺が行ってくらぁ。コイツの無実も証明してやらないかんしな。まあ、めんどくせぇけどよ」
「良かった…こっちも色々忙しいので暇なのはU・Jだけなんで、行ってくれて助かりますよ」
「だははは、酷ェ事をいつも真顔で言いやがる…!じゃあP・J。いつも通りこっちは任せた…!」
「ええ。お気をつけて」
羽織を見に纏い支部のガレージに止めた
U・Jの愛車、黒光りのボディに派手な
装飾を付けた四人乗りバギーのエンジンを
掛けて、颯爽と光の街を目指す。
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