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第二編第一章 辻斬り事件
背に迫る追手
しおりを挟む帝国軍軍兵の妙に活気ある声が響く中
ロードは建物の屋根の上でしゃがみ込む。
聞こえて来る声の中にはやはり「辻斬り」
「赤髪」「犯人」などと気になるワードが
所々に転がっており、もしかしたら
シャーレとポアラがロードに放った
言葉は当たっていたのかもしれない。
だが、それでも無実なのは本人達から
すれば、解りきったこと。
ロードと遣り場の無いイライラは募る。
すると、何やらロードは立ち上がり始め
屋根裏から薄暗い脇道へ降り立つ。
「そ、そうだよ。何で俺がコソコソしなきゃいけねーんだ…何にもしてねぇんだからよ…」
とは言いつつも、脇道の壁に背を当てて
通りをコソコソと覗く様な姿勢を見せる。
「よ、よし。行くぞ…っ…堂々と歩いてやる…俺は無実だッ…!」
意を決した様に、ロードはそーっと足を
通りに踏み出そうと前に伸ばす。
これがまた、本当に緩りと。
だが、其の足がピタっと止まり静かな
脇道にロードの息を飲む音が浸透する
様に自然と響き渡る。
「ニャ…ニャロウがァ…!!無理だ!やっぱり誤解でも何でも追われてる気しかしねぇ…!!」
人気の無い脇道を奥へ進む様にロードは
無念の涙を浮かべながら突如、走り出す。
そして、奥へ走り込んだロードは
息を切らして膝に手を置いて肩を震わせる。
「なんでこんな目に合わなきゃいけねーんだ…ニャロウが…」
「其処の赤髪、少し話を聞かせて頂きたい…」
気配も無かった。
ロードの背後に迫る影の存在に
気付いたのは声を掛けられてから。
ロードは其の声に咄嗟に反応して
顔を上げて目を見開く。
其処に居たのはU・Jと同じ小紫色の
羽織を確りとした形で着こなした男。
「誰だ、アンタは…?」
「拙者は国王直下帝国軍で少将を務めさせて頂いている若輩者…名をニッキー・ドーマンと申す」
額に白のヘッドガードを身につけ
両眼の下から真っ直ぐに二本線が入った
とても短い短髪の男はそう名乗った。
「少将…アイツと同じランクか…で。そんなヤツが俺に何の用だ…?」
大体は察していたが、ロードは敢えて
ドーマンに其の真意を問いただす。
「話が聞きたい…抵抗はせぬ様にお頼み申し上げる」
「その話の中身を聞いてんだ…」
「…此の光の街セイントピアは拙者の管轄…此処で巷を賑わす辻斬り事件…其の犯人に酷似した男の目撃情報が入っておる」
補足として、プレジアには王都の他に
十五の大きな街を境界に地域を分けている。
其処を管轄として任されるのは帝国軍に
於いて大将以下少将迄の強者十五名。
始まりの街・コミンチャーレの管轄支部長は
U・J・ブラッド少将で此のセイントピアは
ニッキー・ドーマンが務めている。
「チッ…やっぱりそうか。無駄足だぜ?俺は今日初めてここに来た…二日前まではコミンチャーレに居たんでな…」
「言い分は解り申した。…だが、話は帝国軍の支部施設内で緩りと訊かせて頂こう」
そう言ってのけたドーマンが腰に据えた
刀身の長い長刀に手を掛ける。
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