24 / 783
第一篇第二章 拳術道場の女
静かに燃ゆる炎
しおりを挟む辺りは既に暗闇に包まれた。
マーシャルの拳術道場がガスリーという
男に嫌がらせを受けていると知った二人は
更なる襲撃に備えて、道場裏の丘の上で
焚き火に当たっていた。
そのまま夜が更けて行くと、道場の灯りも
消え、市場町から多少外れた此の場所は
二人が燃やす焚き火の明かりのみとなった。
此の後は、交互に休憩を挟みながら
道場に不審な者達が現れないかを見張ると
決めた二人が目を光らせる中、どんどん
夜は更けて行くのだった。
其処から何時間時が進んだか、解らない
中で見張りをしていたシャーレにロードが
声を掛ける。
「そろそろ代ろう、シャーレ。少し休んで来いよ」
「いや、待て。」
「どうしたよ?」
「誰か来た…」
シャーレが道場に近付く人影を確認すると
ロードは気を引き締める。
「暗くて見えねぇな。行こう」
顔迄は確認出来る距離では無く、ロードは
慌てて焚き火の火を消すと、シャーレと
共に丘を駆け降りて行く。
しかも下り坂ではなく、多少突き出した
岩場が足場になりそうなだけの絶壁を
何の躊躇もなく、勢い其のままに進む。
そして、敷地内の人間を確認しようとした
二人は、中央に居るガスリーの姿を発見。
示し合わせて、突入を試みた瞬間に
二人は目を疑う光景を目にする事となる。
合計で二十人程のガスリー一派の連中が
道場に火を付け始めたのだ。
其れも、当たり前かの様な表情で時には
笑みを浮かべる者も居り、ロードは
怒りのまま、声を荒げる。
「何やってんだ、テメェらァァ!!」
其の声に気付いたガスリー一派の半数が
放火を止めてロード達に歩み寄る。
だが、まだ半数は放火を続けて居る。
「何やってるか?見ればわかんだろ。燃やしてんだよ此の道場。で、お前等誰よ?」
一派の連中を掻き分けて出て来たガスリーの
言葉に二人は怒りを隠せない。
「さも当たり前の様に言ってんじゃ無ェ!!!!」
「縁あってマーシャルさんには恩が有る。止めるぞお前達の蛮行!」
「良くわかんねぇがよ…ならアイツが焼け死ぬ前に救い出してみろよッ!!」
叫び声を上げた後に嫌味たらしく舌を
出したガスリーに堪忍袋の尾が切れた
二人は刀を構え、一派連中と乱闘となる。
「想像と違ェ助っ人登場も関係無ェ…下手に出てりゃ此の俺を殴る小娘まで出て来たこんな道場、利権書ごと燃やしてやるよ!!」
「させっかよ…ニャロウ共ォ!!」
二人は、一派の連中を斬っては捨てて
斬っては捨てて放火を行う連中に向けて
走り出すと、半数の一派も此方へと向く。
だが、段々と火の手は進み、ロードは
シャーレに声を掛ける。
「シャーレ!先にマーシャルさんを頼む!ここは俺がやるッ!」
「任せたぞ」
シャーレはロードの言葉に一目散に
道場内へと突き進んで行った。
90
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
私が出て行った後、旦那様から後悔の手紙がもたらされました
新野乃花(大舟)
恋愛
ルナとルーク伯爵は婚約関係にあったが、その関係は伯爵の妹であるリリアによって壊される。伯爵はルナの事よりもリリアの事ばかりを優先するためだ。そんな日々が繰り返される中で、ルナは伯爵の元から姿を消す。最初こそ何とも思っていなかった伯爵であったが、その後あるきっかけをもとに、ルナの元に後悔の手紙を送ることとなるのだった…。
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる