RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

文字の大きさ
上 下
5 / 648
第一篇第一章 旅路の出逢い

盗みの代償

しおりを挟む

眠れない夜が明け、二人はまた囲炉裏の
前に座り込み、焚べた火を眺めていた。

緩りと進む時を割く様にシャーレが
腰を上げて立ち上がる。


「そろそろ売り捌きに向かいますか。ロード、余り良く寝れていない様子。もう少し休んではいかがだろう?」


「いや。野宿じゃ無いだけ休まった」


そうか、と呟いたシャーレは風呂敷包みを
手に持ち、玄関口へ向かおうとする。

考え事の最中といった詰まった表情で
ロードはシャーレの背中を目で追う。

すると、時を同じくして慌ただしく
息を切らしながらシャーレの長屋の扉を
開けて、そのまま男の子が倒れ込んで来た。

12.13と言った見た目の少年はシャーレの
玄関口に這いつくばる様に倒れ込んだが
必死に顔を上げる。

額からは流血を起こし息を切らした
少年がシャーレの顔を見上げ口を開く。


「シャーレ兄ちゃん…た、大変だ…」


「…ケーシー…どうした?此の怪我…」


その異様な光景に、ロードも目を丸くし
立ち上がると息を呑みその光景を見つめる。


「…っ…伯盛一家の連中が…噴水のある広場…でっ、赤い髪の男をさ、がして暴れ、やがった…」


ケーシーと呼ばれた少年の血が茶髪の
髪に染み込む様に滴り、床に落ちる。

ロードとシャーレは唇を強く噛み
握った拳に力が自然と込もる。


「解った。私も向かう、ケーシー、君は…」


「僕は大丈夫っ!!お願い!行ってシャーレ兄ちゃん!」


ああ、と小さく呟くとシャーレは緩りと
ケーシーを抱え、畳に寝かせる。

その後は言葉を発する事はせず玄関口に
踵を返して駆け出して行く。

伯盛一家は赤髪の男を追っている。

声は掛けられずともロードがシャーレを
追って広場へと向かうのもごく自然の事。

背中に刀を差すと、ロードもまた
声を発さず長屋町を駆け抜ける。

足を止めず、声すら無く。
広場へと辿り着いた二人の目には何とも
酷い景色が広がっていた。

先程の少年、ケーシーの様に痛め付けられた
町民達が噴水の周りで転がっている。

とても、無雑作に。

其れを見たシャーレは周りに既に一家の
連中が居ないと悟り、ロードよりも
一足先に身体を震えを無理に抑え振り返る。

ロードの肩をポンと叩くと、歪んだ
笑みを浮かべて口を開く。


「己を責める事はしないで欲しい。暫し興じて欲しいと頼み、巻き込んだのは私だ。ロード、君は旅の者、此れ以上首を突っ込まなくていい」


「…無理だろ…こんなの」


拳を震わせながら、ロードは呟く。


「悪いがケジメの幕を引くのは私だ。短い付き合いだったが君と逢えたのは強運だった」


シャーレは怒りに満ちた表情を仮面の様な
引き攣った笑みで隠した。

一人にしてくれ、と言い残しシャーレは
町民達に一人ずつ声を掛け始める。

怪我はしているが、意識は有り。
死者は出ていない。

多少の安堵を抱えてシャーレは自分の
長屋の方へまた、緩りと歩を進める。

ロードとは視線を交えずに。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

妻がエロくて死にそうです

菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。 美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。 こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。 それは…… 限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

ダンジョンの最深部でパーティ追放されてボコられて放置された結果、ダンジョンのラスボスの女の子が俺のご先祖様だったから後継者に指名された件

羽黒 楓
ファンタジー
アンデッドダンジョンの最深部で、パーティメンバーに追放宣言されリンチされ放置された俺は、そのまま死ぬはずだった。だが、そこに現れたダンジョンのラスボスは美少女な上に俺のご先祖様だった! そろそろダンジョンマスターも飽きていたご先祖様は、俺を後継者として指名した。 そんなわけで今や俺がここのダンジョンマスターだ。 おや。またあいつらがこのダンジョンにやってきたようだぞ。 タブレットもあるし、全世界配信もできるな。 クラスメートたちも掲示板で実況盛り上がるだろうなあ。 あいつら俺というタンク役を失って苦戦しているって? いまさら後悔してももう遅い。 今や俺がラスボスだ。 さて、どんな風に料理してやろうか? ※きわめて残酷な描写がありますのでご注意ください

転生したら倉庫キャラ♀でした。

ともQ
ファンタジー
最高に楽しいオフ会をしよう。 ゲーム内いつものギルドメンバーとの会話中、そんな僕の一言からオフ会の開催が決定された。 どうしても気になってしまうのは中の人、出会う相手は男性?女性? ドキドキしながら迎えたオフ会の当日、そのささやかな夢は未曾有の大天災、隕石の落下により地球が消滅したため無念にも中止となる。 死んで目を覚ますと、僕はMMORPG "オンリー・テイル" の世界に転生していた。   「なんでメインキャラじゃなくて倉庫キャラなの?!」 鍛え上げたキャラクターとは《性別すらも正反対》完全な初期状態からのスタート。 加えて、オンリー・テイルでは不人気と名高い《ユニーク職》、パーティーには完全不向き最凶最悪ジョブ《触術師》であった。 ギルドメンバーも転生していることを祈り、倉庫に貯めまくったレアアイテムとお金、最強ゲーム知識をフルバーストしこの世界を旅することを決意する。 道中、同じプレイヤーの猫耳魔法少女を仲間に入れて冒険ライフ、その旅路はのちに《英雄の軌跡》と称される。 今、オフ会のリベンジを果たすため "オンリー・テイル" の攻略が始まった。

××の十二星座

君影 ルナ
ファンタジー
※リーブラの外での呼び方をリーからリブに変えましたー。リオもリーって書いてたのを忘れてましたね。あらうっかり。 ※(2022.2.13)これからの展開を考えてr15に変更させていただきます。急な変更、申し訳ありません。 ※(2023.5.2)誠に勝手ながら題名を少し変更させて頂きます。「〜」以降がなくなります。 ─── この世界、ステラには国が一つだけ存在する。国の名も世界の名前同様、ステラ。 この世界ステラが小さいわけではない。世界全てが一つの国なのだ。 そんな広大な土地を治めるのは『ポラリス』と呼ばれる羅針盤(王)と、その下につく『十二星座』と呼ばれる十二人の臣下。その十三人を合わせてこの世界の『トップ』と呼ぶ。 ポラリスはこの世界に存在する四つの属性魔法全てを操ることが出来、更に上に立つ人間性も必要である。そして十二星座全員が認めた者しかなれない。この世界を治めるからには、条件も厳しくなるというもの。 そして十二星座は、それぞれの星座を襲名している人物から代々受け継がれるものである。ただし、それぞれ何かに秀でていなければならない。(まあ、主に戦闘面であるが) そんな世界ステラで、初代に次いで有名な世代があった。小さい子から老人まで皆が知る世代。その名も『××の十二星座』。 その世代のことは小説や絵本などになってまで後世に根強く伝わっているくらいなのだから、相当の人気だったのだろう。 何故そこまで有名なのか。それは十三人とも美形揃いというのもあるが、この代の十二星座はとにかく世界が平和であることに力を注いでいたからだ。だからこそ、国民は当時の彼らを讃える。 これはその『××の十二星座』の時代のお話である。 ─── ※主要キャラ十二人は全員主人公が大好きです。しかし恋愛要素は多分無いと思われます。 ※最初の『十二星座編』は主人公を抜いた主要キャラ目線で進みます。主人公目線は『一章』からです。 ※異世界転生者(異世界語から現代語に翻訳できる人)はいません。なので物の名前は基本現代と同じです。 ※一応主要キャラは十三人とも一人称が違います。分かりやすく書けるようには努めますが、誰が話しているか分からなくなったら一人称を見ていただけるとなんとなく分かるかと思います。 ※一章よりあとは、話数に続いて名前が書いてある時はそのキャラ目線、それ以外はマロン目線となります。 ※ノベプラ、カクヨム、なろうにも重複投稿しています。

【R18】異世界に来たのに俺だけ経験値がセックスな件〜エロスキルで成り上がる

ビニコン
ファンタジー
 突然の学校のクラス全員が転生からの、テンプレ通りの展開で始まる、職業はエロ賢者というアホのような職業だった。  アホのような職業で直ぐに使えないと判定からの、追放されることになる。  ムッツリスケベであった陰キャ主人公が自分の性欲を解放していき、エロで成り上がる。

実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、pixivにも投稿中。 ※小説家になろうでは最新『勇者祭編』の中盤まで連載中。

処理中です...