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第一篇第一章 旅路の出逢い
義を貫く盗賊
しおりを挟む囲炉裏の前で暖かい料理を口にし、腹も
満たされた頃にロードはシャーレに
満を辞して尋ねる。
「ってかよ、結局アイツらは何者で。シャーレは何で追われてんだ?」
「何方の質問から答えて行くとしようか」
腹が満たされたシャーレはふうと息を吐き
ロードの質問に答えようと目を向ける。
「先ず、奴等は此の町で一番の豪族ドノバンに雇われたヤクザ者さ、奴等には此の町の人間が苦しめられている」
「ヤクザ者か、まあ見た目通りだな」
「厳しい搾取にあってこの長屋町の人間を始め近隣の人間達にとっては迷惑な話さ。ドノバンとそのヤクザ者、伯盛一家が手を組んでからは…皆食事をするにも苦労をしているのが現実なんだ」
シャーレからこの町の現状を知らされた
ロードは胸糞悪い思いが抑えられず
眉間に皺を寄せ、苛立ちを隠せない。
「そしてもう一つの質問の答えに行こうか。私はその豪族の蔵から何度か金目になる物を盗んでは金に変えてこの長屋町に人知れず配っている、盗賊さ」
「…盗賊?謙遜しやがって。そういうのは義賊って言うんだよ」
「綺麗に言おうと盗みは盗みさ。大義はあろうとも盗みで正義を掲げるのは、唯の自己満足であると理解している」
「…へぇ…!」
シャーレの話を聞いたロードはシャーレの
義の想いに笑顔を弾けさせる。
シャーレは、風呂敷包みを開くと価値は
解らないが高そうな壺と壺の中に宝石が
詰め込まれていた。
明日は此れを売って夜には此れを金にして
長屋町に配る予定らしい。
シャーレの知り合いに売り捌けば
足は付かず、ドノバンにはバレる心配
は無いらしい。
だが、今回の件で此処まで追われた事は
ミスと言えると暗い表情を見せたシャーレ。
「明日誰かに危害が降り掛からねばいいが…」
「なあオイ、俺ここから早く出てった方がよくね?」
事の事態を理解したロードは焦った様に
立ち上がりシャーレに声を張り上げる。
「ロード、君の気持ちはわかるが巻き込んでしまったのは私だ。君は何も気にする必要はないさ。もし何かあったとしても此の私が撒いた種である。収束の責任も勿論私にある」
シャーレの覚悟が伝わる。
其の言葉にロードは口をつぐんで
黙るしか選ぶ選択肢が無かった。
「旅で訪れたばかりの君がそこまで怒りを隠さない表情を見せてくれるのは嬉しい事だな。本当に有難い」
シャーレは静かに笑みを浮かべる。
ロードの熱い一面を見れたことがシャーレにとっては嬉しい事だったのだ。
「夜も遅い。今日は泊まって行くといい。急ぐ旅で無ければなのだが」
「…すまねぇ…恩に着る」
今宵はそのままシャーレの長屋に泊まる
事となったロード。
敷布団を並べ床に着く二人だったが
眠りに着いたシャーレの横で頭の後ろで
両腕を組んで天井を見上げロードは
暫しの間、眠りに着けずにいた。
何やら、物思いに耽って
夜はそのまま更けていく。
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