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Episode1. 女神が駄女神になったワケ
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それは突然の出来事だった。正直、その瞬間に何が起こったのか誰にも分からなかった。国家間の諍いはままあったが、それでも概ね平和、と言うのがこの世界の共通認識だったに違いない。あの日までは。魔王と名乗る存在が、世界を蹂躙し始めたその日から、世界の在り様は変わってしまった。
惑星ドミニオン。幾つかの大陸と島々から成る、地球型惑星だ。地球とは鏡合わせの銀河系にあって、本来なら交わることの無い世界でもある。人間の他にもエルフやドワーフなどの亜人たちの国もあり、概ね平和な星であった。地球と違うのは、亜人たちの存在以外に魔法もあった。それ故に科学技術の方はあまり発展していない。まあ、ゲームやライトノベルにあるような異世界と言ったところだろう。
ただ、あの日までは魔獣だの魔物だのといった存在はこの世界に無かった。当然、魔王と言う存在もだ。
故に、人々にとっての脅威は伝染病や異種族間で時折起こる戦争だった。病や戦が無ければのんびりと生きていける世界に、飽いていたのは何よりこの世界を見守るはずの女神エニューオーだった。
世界を見守る神は代替わりをする。創造神デミウルゴスがドミニオンを想像し、生物を作り上げた後、秩序の神が世界を見守った。それから三代目のエニューオーに代替わりしてから久しい。エニューオーは戦と恐怖を司る神でもあった。まあまあ平和なこの世界は、彼女にとって退屈な世界だった。退屈過ぎて、他の世界を覗いてみたり、実際異邦人として遊びに行ったりしてしまうほどには。
そうしてエニューオーは出会ってしまったのだ。
魔王と言う概念。そして異世界転生、または異世界転移という言葉に。
これだ‼
とまるで天啓を受けたように、エニューオーは感じた。むしろ天啓を与える側だろうということには思い至らなかった。それほど彼女にとっては衝撃的だった。
魔王と言う存在が居れば、世界は今以上に恐怖に支配されることだろう。戦争も今以上に規模が大きくなるだろうし、さぞ多くの血が流れるだろう。戦と恐怖を司る女神である自身にどれだけ大きな力が宿ることだろうか。
そこまで考えて、エニューオーは地球からドミニオンへ帰った。そうして自身の神殿でこれからについて熟考する。
「まずは魔王を作らなければ。そうして暫くこの世界を蹂躙させて、そうして勇者とやらを呼んでやろう。魔王が破れてしまっては早々に戦争は終結してしまうから、これはより強く設定しなくては。勇者が死んでしまってはそれはそれでつまらないし… 補助する者も読んでやった方がいいか…」
ぶつぶつと呟きながらエニューオーは、人々にとって災難でしかないことを念入りに計画していった。
惑星ドミニオン。幾つかの大陸と島々から成る、地球型惑星だ。地球とは鏡合わせの銀河系にあって、本来なら交わることの無い世界でもある。人間の他にもエルフやドワーフなどの亜人たちの国もあり、概ね平和な星であった。地球と違うのは、亜人たちの存在以外に魔法もあった。それ故に科学技術の方はあまり発展していない。まあ、ゲームやライトノベルにあるような異世界と言ったところだろう。
ただ、あの日までは魔獣だの魔物だのといった存在はこの世界に無かった。当然、魔王と言う存在もだ。
故に、人々にとっての脅威は伝染病や異種族間で時折起こる戦争だった。病や戦が無ければのんびりと生きていける世界に、飽いていたのは何よりこの世界を見守るはずの女神エニューオーだった。
世界を見守る神は代替わりをする。創造神デミウルゴスがドミニオンを想像し、生物を作り上げた後、秩序の神が世界を見守った。それから三代目のエニューオーに代替わりしてから久しい。エニューオーは戦と恐怖を司る神でもあった。まあまあ平和なこの世界は、彼女にとって退屈な世界だった。退屈過ぎて、他の世界を覗いてみたり、実際異邦人として遊びに行ったりしてしまうほどには。
そうしてエニューオーは出会ってしまったのだ。
魔王と言う概念。そして異世界転生、または異世界転移という言葉に。
これだ‼
とまるで天啓を受けたように、エニューオーは感じた。むしろ天啓を与える側だろうということには思い至らなかった。それほど彼女にとっては衝撃的だった。
魔王と言う存在が居れば、世界は今以上に恐怖に支配されることだろう。戦争も今以上に規模が大きくなるだろうし、さぞ多くの血が流れるだろう。戦と恐怖を司る女神である自身にどれだけ大きな力が宿ることだろうか。
そこまで考えて、エニューオーは地球からドミニオンへ帰った。そうして自身の神殿でこれからについて熟考する。
「まずは魔王を作らなければ。そうして暫くこの世界を蹂躙させて、そうして勇者とやらを呼んでやろう。魔王が破れてしまっては早々に戦争は終結してしまうから、これはより強く設定しなくては。勇者が死んでしまってはそれはそれでつまらないし… 補助する者も読んでやった方がいいか…」
ぶつぶつと呟きながらエニューオーは、人々にとって災難でしかないことを念入りに計画していった。
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