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カイン
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マルクトは東西南北にメインストリートが走り、その通りの両脇に商店街が建ち並ぶ。街の中央には広場があり、その真ん中にメサイア支部があった。
カインたちは広場に面している宿屋に部屋を取った。マルクト市街の地図を、宿屋の主人からもらう。
「へー、南北の目抜通りが食品関係の商店街になるんだ。」
地図を見て、カインは納得する。通りで目に入る店が食品関係だったわけだ。空腹が原因では無かったようだ、と少し安心する。
ちなみに、東西の目抜通りは日用雑貨や服飾品・装備品の店が中心に並んでいる。
今回もカインとリリンは同じ部屋にした。
「今さらでしょ?」
とは、リリンの談である。
「で、予定だっけ?」
カインが荷物を置いて宿屋の主人からもらったマルクト市街地図に目を通し終わったところで、リリンが声をかける。
「そう。目指すところがもやっとしてて、流されてるだけみたいで、キモチ悪いんだよ。」
視線をリリンに移して、カインは肩を竦めて答えた。
「最終目標は世界を壊すこと。それはオッケー?」
「うん、まあ。イマイチ納得してないけど。」
「まだ言うか。」
煮え切らない様子のカインに、リリンは溜め息を吐くがその顔は険しい。
「しょうがないだろ、話が壮大すぎて現実感っつーか、リアリティが無いんだよな。これでも理解する努力はしてるからな一応。」
負けず、カインも言い返す。
「…、あーそれで予定ってこと?」
「うん。それもある。」
じゃーしょうがないっか、そう言ってリリンは備え付けの机に地図を広げた。
「さて。」
リリンは気を取り直し、カインに向き合った。
「まずはざっくりと。第一段階はキミの強化、第二段階は他の勇者と合流、最後に世界の破壊。それがルシフェル様の御希望。」
「ルシフェルさんが考えたの?」
「あくまでもざっくりとした流れを、ね。細かいところは、実際行動を共にして判断するように言われてる。」
ルシフェル様は地上に長く御滞在できないから、細かい計画は立てられないんだって。と、リリンが肩をすくめた。
「仮に細かく計画しても、キミの成長具合で調整の必要も出てくるだろうし、だって。」
「そうなんだ。因みに君はどんなふうに考えてる?」
ダアトの森での出来事を思い出し、カインは妙に納得した。急に消えてしまった。あれじゃあ、計画も何もないよな。少し心許ないと、カインは感じた。
「十大都市を回りながら実戦形式で強くなってもらおーかと。ここマルクトを起点としてぐるっと。」
リリンが地図上のマルクトから各都市をなぞっていく。
「オレ、聞いただけなんだけど、確か各エリアで怪物のタイプも違うんだよな?」
「地形も違うしね。」
机の上の地図に、カインは視線を落とす。マルクトや隣のイェソドは草原地帯だが、森林地帯や山岳地帯にあるエリアもある。
そう言えば、自分の故郷は森林地帯だ。このマルクトエリアは随分印象が違った。
「各エリアごとに課題があるって理解でいいかな?」
地図を眺めながら、カインはリリンに確認する。
頭の中では、必死にヨナタンの話を思い出していた。あのワクワクした冒険の話は、どのエリアだったんだろう。あの、恐ろしい怪物は――…
「うん。出現する怪物とキミの能力で都度決めるつもり。だから細かい計画って言っても、マルクトエリアの事しか今は説明できないかな。」
カインの回想を断つように、リリンが答える。
「それでも良いよ。単に強化、って言われてもさ。不安しかない。」
ヨナタンの話と、ルシフェルから聞いた話と、リリンの話がカインの頭の中でこんがらがって、イマイチ整理がつかない。
「そお?」
「そーだよ。ここはどうする予定?」
気楽だよな、とリリンの様子にカインは毒づきたくなるが、勝てる気がしないので黙っておく。
とりあえず少しでもこの不安と混乱をどうにかしたくて、リリンに詳細を語るよう促す。
「まずはー実戦向きの装備をそろえるでしょ。」
親指を折ってリリンが予定を数え始める。が、
「実戦向きの装備 …って?」
一つ目の段階でカインが問いかける。
「革製品って多少は防御力あるけど… … … …。」
「防御力はあるけど、何だよ、そこで沈黙すんのは止めてくれる? 気になるだろ。」
カインの問いに答えかけて、リリンが沈黙した。少し待っても、固まったままのリリンに不吉な予感を感じてしまう。
「うっかりしてた。」
「あ?」
リリンの言葉に、意味が分からないとカインは首を傾げた。一瞬、聞き間違ったのかとも思い、彼女の次の言葉を待つ。
「キミの能力タイプが分からない。」
「能力タイプ?」
普段聞かない言葉に、カインは瞬きを一つ。
「うん。剣士タイプとか、術師タイプとか、そーゆーの。装備品もそれによって変わる場合もあるし…」
「今さら!?」
思わず裏返った声で、カインはリリンにツッコむ。
「だからうっかりしてたコトは認める。革製品は誰でも装備できるから… さっきイキオイで買い物に行かなくて良かった。」
ひどくまじめな顔をしている。さすがに反省しているんだろう、とカインは勝手に解釈した。
「それは何より。…で、その能力タイプってどうやって調べるんだ? オレは、今初めて聞いたくらいだから、何も知らないんだけど。」
「使い魔ちゃんに調べてもらうよ!」
さっきまでの殊勝な様子から打って変わって、威勢よくリリンが答える。自信があるんだろうなぁ、と思いつつ、はて、とカインは彼女の言葉に引っ掛かりを覚える。
「使い魔ちゃん…?」
聞きなれない言葉に、カインは眉を顰めた。
彼女の説明によると、ヒト型魔族はより下級のケモノ型の魔物を小間使いのように従えているのだとか。そしてその使い魔によって、得意とする能力は変わるのでどれだけの使い魔を従えることができるか、が彼女たちのステータスでもあるという。
カインがなるほど、と、納得しているのをよそに、リリンが彼女の使い魔を召喚する。
彼女の右手の中指の指輪、オニキスなのだろう黒い宝石のはまったそれ。それを掲げるように、リリンが右手を掲げる。カインには聞き取れない(理解できない)言葉を、リリンが唱え始める。指輪の宝石が輝く。カインの位置からは確認できないが、宝石の中に文字が浮かび――、
さらに発光した。
あまりの眩しさに、カインは目を庇うように腕をかざす。
とすん、と、何か軽いものが落ちた(着地した?)音を、カインは聞いた。
光が収まった。カインは腕を下ろし周りを確認する。
リリンの足元に、黒い猫。
「もしかして、その黒猫が使い魔?」
「うん、そう。でもホントは猫じゃないよ。地上にいるからこの姿なんだよね。」
と、リリンは肩をすくめた。彼女曰く、本当は地上の動物に例えるなら虎に近い姿をしているのだそうだ。ケモノ型の魔物は人型の魔族に比べて魔力のコントロールが上手くなく、地上では消耗が激しくなってしまうので、小型の似たような姿でいることが多いのだとか。
リリンの使い魔然り。
「そんなワケで、ちょっとじっとしてて。」
リリンはカインにそう言って、そうして使い魔に何事か指示を出す。やはり聞きなれない言葉だ、と、リリンに言われた通り身動きはせずにカインは彼女と使い魔を観察する。
黒猫の目が妖しく光る。かと思えば、瞳から光線がカインに向かって発せられ、発光し、さらに屈折して壁を照らす。幸いにも、その光は目に優しかった。カインは光を追って視線を動かす。
壁にはカインの見たことが無い文字が映し出されていた。
「あれは… 文字? だよな?」
何が起こっているのか、あの模様は文字でいいのか、カインは視線を壁に向けたままリリンに聞いた。
「エノク文字って言うのよ。」
「エノク文字?」
どうやらあれは文字で間違いないようだ。それにしても、いったい何が書かれているのだろう。猫のような姿の使い魔の目から放たれる光に当てられながら、カインはそのエノク文字とやらを見つめる。
「神と魔王とそれぞれの眷属たちが使う文字ね。どれどれ。」
文字についてさらっと説明して、リリンは壁の文字を読む。そこには、今のカインの顕在能力が潜在能力に対してどの程度解放されているか等が記されているという。
「へー、キミ、結構能力高いんだね。」
感心したように、リリンが壁の文字を読んでいる。
「そう? メサイアになりたくてアベルと一緒にトレーニングはしてたからかな。我流だけど。」
褒められてまんざらでもない様子で、カインは答える。
やっぱりトレーニングしといて良かった、なるのはメサイアじゃなくて勇者、ってやつだけど。
エノク文字は全く理解できないけれど、カインは満足気に壁に映る文字を眺めた。
「そうなんだー。その分、早く先に進めるね!」
「そう? …ちなみにオレの能力のタイプって?」
能力の高さは及第点を超えている。それならもう一つ。そのタイプだ。どんなタイプがあるのか全貌を知らないけれど、トクベツ感のある能力だといいな、とカインは緊張しながらリリンの回答を待つ。
「うんとね、勇者の特殊能力を除くとね、魔法剣士タイプになるかな! 軽戦士系とも言うね。」
「魔法剣士が何かも気にはなるんだけどさ、勇者の特殊能力って、何?」
最も耳慣れない言葉。勇者の特殊能力。特別な存在なのだから、言われてみればそんな能力があっても不思議じゃないな、とカインは思う。思うがそれが何かが気になって仕方がない。
「飛行能力と再生の高位の蘇生術。あと、一部メサイアしか使えないテレパシーと転移もフツーに使えるようになるよ!」
リリンが勇者の特殊能力を数え上げる。
「飛行能力? 空が飛べるってこと?」
「飛ぶって言うか… 空中戦もできるようになるって言うか… 移動は転移の方が早く移動できるしー。まあ、覚えた時に色々試してみてよ。」
空が飛べる? カインはその能力に強く興味を惹かれた。ずっと狭い町に閉じ籠る生活を余儀なくされていたからか、鳥のように空を飛べたらいいとずっと憧れてきた。
メサイアにも不可能な、空を飛ぶということができるようになる。
カインの胸は、感激に打ち震えていた。
実は蘇生と言う世の理を覆す強大な能力もあったが、詳細まで説明されなかったせいかカインには印象が薄かったようだ。
飛行能力より難易度も稀少度も高い能力だというのに。
「じゃあ、魔法剣士って?」
我に返って、カインはもう一つの気になっていたことを、リリンに尋ねる。
「軽戦士、スピード重視タイプの戦士の一種だよ。」
そう言ってリリンは説明を始めた。
一つ、スピード重視のため余り重い防具は装備しない(できない)。
攻撃を躱すことでダメージを受けないというのが軽戦士系の戦闘スタイル。
一つ、同じく武器も細身の重量が無いものを装備する。
重さではなくスピードで攻撃力を生む。
一つ、スタミナは中程度。
重戦士系に劣り術士系に勝る。仲間の盾になるのには向かない。
「で、その中の魔法剣士なんだけど。戦士系の中でも使用できる魔法が多いし、耐性もあるんだよ。まぁ、術士には劣るけど。」
「うん… なんか中途半端な能力だなぁ…」
全体的に真ん中、って感じがする。カインはリリンの説明を聞いてそう印象を受けた。
「万能型とも言うね。中途半端になるか、万能戦士になるかはキミ次第かな!」
悪意の欠片も見せずリリンがさらっと毒を吐く。
「…そう言われたら、中途半端なことできないじゃないか。しないけど。」
「そうだよねー。で、キミの能力タイプも分かった事だし、予定もさらに細かく決められるね!」
リリンの足元では使い魔の黒猫(仮)が退屈そうに欠伸をしている。
いつの間にかカインの能力を調べるために発していた光は途切れていた。
「…ちなみに、どんな予定になりそうなんだ?」
ほんの少しの不安を胸に抱えながら、カインはリリンに聞く。同時に、今まで肝心の能力タイプ無しにどうするつもりでいたのか、は、聞くだけ怖いので質問しないでおこうとカインは思う。
「今日は軽戦士系用の装備を整えるでしょ、そしていよいよ明日から実戦形式で修行、と相成るわけですよ。」
で、コレね。と、リリンはこれまた宿屋の主人から地図と一緒にもらっていた、マルクト周辺の出現怪物一覧の用紙を机に出した。
「親切だよね、まぁこれは本来、怪物を見かけた時の逃走手段の指南書なわけだけど。」
その用紙には、怪物のイラストと(人間が勝手につけた)名前、特徴と能力、主な出現場所、逃げる時の注意点が分かりやすく記されている。
「この逃げる時の注意点だけど、無視するか戦闘の参考にしてね。考えようによっては、スキを突くのに参考にはなるよ。」
「これ、全部覚えるの?」
「覚えるのは各タイプの特徴でいいかな。出現場所なんて気にする必要ないし、名前だって便宜上ヒトがつけたものだしね。」
なんと言う身も蓋もない意見。とカインは思うが、全部覚える必要が無いのは楽でいいな、と考え直す。
「で、」
リリンの声の変化をカインは聞き取った。あんまりよくない(カインにとって)話が始まるかもしれない。カインはこっそり覚悟する。
「このマルクトエリアの予定と言うか目標なんだけど。とりあえずー、この辺の怪物は小型で単体で行動するのが多いから、キミは無傷で、一撃で仕留められるようになったらクリアかな。期間は初めての実戦だし、基本の能力から見て一週間から十日くらいが目安。」
「…。マジで?」
小型だから一撃で、って言うのはともかく。と、カインは思う。
と言うか、小型でも怪物を一撃で仕留められたらカッコイイと思うので、可能なら是非できるようになりたいと思う。だから、そこはいい。そこはいいけど。
…無傷で? 聞き間違いじゃなくて?
「何よ、その顔。」
「無傷で、って言った?」
「言ったね。キミは軽戦士系になるんだから、この辺の怪物より早く動けないとー。」
そう言う理屈なわけね、リリンの言い分を聞いて彼女の言わんとすることは理解できた。
理解はできたけど、期間内に実現可能な事なんだろうか。最長十日って短くないか? 実戦経験ゼロなのに。
そもそも、アベルとメサイア本部を目指した時だってキャラバンに同行させてもらっての事だったのに。と、カインは心の中でぼやいた。
――キャラバン。武装商隊。十大都市を巡る大キャラバン、十大都市と各エリアの町や村を繋ぐ中キャラバン、町や村同士を繋ぐ小キャラバンがある。
以前は各町村で自給自足で生き抜くしかなかった。天使によって主要な街道が破壊されたり占拠されたりしていたからだ。地上には住める場所が減り、人口も減り、流通という言葉は無くなった。
その後メサイアが組織され、ゆっくりと交易が始まった。
やがて天使が怪物になり、普通の人間にも抵抗手段が身近なものになる。メサイアに選ばれなかった者たちの中でも血気盛んな者たちが力をつけ、組織を作り怪物に対抗し始めた。それがキャラバンの始まりだった。
ちなみにカインたちは一度中キャラバンに同行してエリア都市のホドまで、ホドからは大キャラバンに同行してメサイア本部のあるティファレトまで来ていた。
カインには実戦経験はない。せいぜいヨナタンの討伐任務の話を聞いていたことと、キャラバンに同行中彼らの戦闘を近くで見れたくらいだ。
「大丈夫だよ! キミ、アタシの予想より能力が高かったから、明日から実戦でも。」
「…もし、君の予想通りの能力だったらどうするつもりだった?」
あんまりにも気楽に言うものだからつい、要らないことを聞いてしまうカインだった。
「え? とりあえず基礎トレかな。予定値まで筋力と霊力をあげてからの実戦。キミの筋力と言うか運動能力は問題ないから、明日から始められるね!」
なるほど、筋トレみたいなのをさせられる予定だったのかな。と、カインは想像する。
「あれ? でも霊力って?」
そもそもそんな発想は以前のカインにもアベルにも無かった。ヨナタンの話で、なんとなくメサイアになると特殊な能力が使えるようになるんだろうな、くらいのものだった。
鍛え方も、体力と違って想像もつかない。未だに。
「霊力はまだまだ発展途上なんだけど、この辺の怪物相手なら無くてもヘーキ。だから寝る前にちょっとずつトレーニングしようね。これは急いでないけど今夜から始めよっか。」
「急がなくていいやつなんだ?」
急がない割に今夜からトレーニングと言う矛盾に、カインは首を傾げる。
「急いでどうにかなるなら急ぐけど… こればっかりは。筋トレみたいに効果が出ればいいのにねーとは思ってるよ。」
「なんかもやっとするなぁ…」
「まー取りあえず霊力についてはトレーニングの時に説明するね。」
ふうん? カインは全くイメージが掴めず、キツネにつままれたようにぱちくりと瞬きをした。
カインたちは広場に面している宿屋に部屋を取った。マルクト市街の地図を、宿屋の主人からもらう。
「へー、南北の目抜通りが食品関係の商店街になるんだ。」
地図を見て、カインは納得する。通りで目に入る店が食品関係だったわけだ。空腹が原因では無かったようだ、と少し安心する。
ちなみに、東西の目抜通りは日用雑貨や服飾品・装備品の店が中心に並んでいる。
今回もカインとリリンは同じ部屋にした。
「今さらでしょ?」
とは、リリンの談である。
「で、予定だっけ?」
カインが荷物を置いて宿屋の主人からもらったマルクト市街地図に目を通し終わったところで、リリンが声をかける。
「そう。目指すところがもやっとしてて、流されてるだけみたいで、キモチ悪いんだよ。」
視線をリリンに移して、カインは肩を竦めて答えた。
「最終目標は世界を壊すこと。それはオッケー?」
「うん、まあ。イマイチ納得してないけど。」
「まだ言うか。」
煮え切らない様子のカインに、リリンは溜め息を吐くがその顔は険しい。
「しょうがないだろ、話が壮大すぎて現実感っつーか、リアリティが無いんだよな。これでも理解する努力はしてるからな一応。」
負けず、カインも言い返す。
「…、あーそれで予定ってこと?」
「うん。それもある。」
じゃーしょうがないっか、そう言ってリリンは備え付けの机に地図を広げた。
「さて。」
リリンは気を取り直し、カインに向き合った。
「まずはざっくりと。第一段階はキミの強化、第二段階は他の勇者と合流、最後に世界の破壊。それがルシフェル様の御希望。」
「ルシフェルさんが考えたの?」
「あくまでもざっくりとした流れを、ね。細かいところは、実際行動を共にして判断するように言われてる。」
ルシフェル様は地上に長く御滞在できないから、細かい計画は立てられないんだって。と、リリンが肩をすくめた。
「仮に細かく計画しても、キミの成長具合で調整の必要も出てくるだろうし、だって。」
「そうなんだ。因みに君はどんなふうに考えてる?」
ダアトの森での出来事を思い出し、カインは妙に納得した。急に消えてしまった。あれじゃあ、計画も何もないよな。少し心許ないと、カインは感じた。
「十大都市を回りながら実戦形式で強くなってもらおーかと。ここマルクトを起点としてぐるっと。」
リリンが地図上のマルクトから各都市をなぞっていく。
「オレ、聞いただけなんだけど、確か各エリアで怪物のタイプも違うんだよな?」
「地形も違うしね。」
机の上の地図に、カインは視線を落とす。マルクトや隣のイェソドは草原地帯だが、森林地帯や山岳地帯にあるエリアもある。
そう言えば、自分の故郷は森林地帯だ。このマルクトエリアは随分印象が違った。
「各エリアごとに課題があるって理解でいいかな?」
地図を眺めながら、カインはリリンに確認する。
頭の中では、必死にヨナタンの話を思い出していた。あのワクワクした冒険の話は、どのエリアだったんだろう。あの、恐ろしい怪物は――…
「うん。出現する怪物とキミの能力で都度決めるつもり。だから細かい計画って言っても、マルクトエリアの事しか今は説明できないかな。」
カインの回想を断つように、リリンが答える。
「それでも良いよ。単に強化、って言われてもさ。不安しかない。」
ヨナタンの話と、ルシフェルから聞いた話と、リリンの話がカインの頭の中でこんがらがって、イマイチ整理がつかない。
「そお?」
「そーだよ。ここはどうする予定?」
気楽だよな、とリリンの様子にカインは毒づきたくなるが、勝てる気がしないので黙っておく。
とりあえず少しでもこの不安と混乱をどうにかしたくて、リリンに詳細を語るよう促す。
「まずはー実戦向きの装備をそろえるでしょ。」
親指を折ってリリンが予定を数え始める。が、
「実戦向きの装備 …って?」
一つ目の段階でカインが問いかける。
「革製品って多少は防御力あるけど… … … …。」
「防御力はあるけど、何だよ、そこで沈黙すんのは止めてくれる? 気になるだろ。」
カインの問いに答えかけて、リリンが沈黙した。少し待っても、固まったままのリリンに不吉な予感を感じてしまう。
「うっかりしてた。」
「あ?」
リリンの言葉に、意味が分からないとカインは首を傾げた。一瞬、聞き間違ったのかとも思い、彼女の次の言葉を待つ。
「キミの能力タイプが分からない。」
「能力タイプ?」
普段聞かない言葉に、カインは瞬きを一つ。
「うん。剣士タイプとか、術師タイプとか、そーゆーの。装備品もそれによって変わる場合もあるし…」
「今さら!?」
思わず裏返った声で、カインはリリンにツッコむ。
「だからうっかりしてたコトは認める。革製品は誰でも装備できるから… さっきイキオイで買い物に行かなくて良かった。」
ひどくまじめな顔をしている。さすがに反省しているんだろう、とカインは勝手に解釈した。
「それは何より。…で、その能力タイプってどうやって調べるんだ? オレは、今初めて聞いたくらいだから、何も知らないんだけど。」
「使い魔ちゃんに調べてもらうよ!」
さっきまでの殊勝な様子から打って変わって、威勢よくリリンが答える。自信があるんだろうなぁ、と思いつつ、はて、とカインは彼女の言葉に引っ掛かりを覚える。
「使い魔ちゃん…?」
聞きなれない言葉に、カインは眉を顰めた。
彼女の説明によると、ヒト型魔族はより下級のケモノ型の魔物を小間使いのように従えているのだとか。そしてその使い魔によって、得意とする能力は変わるのでどれだけの使い魔を従えることができるか、が彼女たちのステータスでもあるという。
カインがなるほど、と、納得しているのをよそに、リリンが彼女の使い魔を召喚する。
彼女の右手の中指の指輪、オニキスなのだろう黒い宝石のはまったそれ。それを掲げるように、リリンが右手を掲げる。カインには聞き取れない(理解できない)言葉を、リリンが唱え始める。指輪の宝石が輝く。カインの位置からは確認できないが、宝石の中に文字が浮かび――、
さらに発光した。
あまりの眩しさに、カインは目を庇うように腕をかざす。
とすん、と、何か軽いものが落ちた(着地した?)音を、カインは聞いた。
光が収まった。カインは腕を下ろし周りを確認する。
リリンの足元に、黒い猫。
「もしかして、その黒猫が使い魔?」
「うん、そう。でもホントは猫じゃないよ。地上にいるからこの姿なんだよね。」
と、リリンは肩をすくめた。彼女曰く、本当は地上の動物に例えるなら虎に近い姿をしているのだそうだ。ケモノ型の魔物は人型の魔族に比べて魔力のコントロールが上手くなく、地上では消耗が激しくなってしまうので、小型の似たような姿でいることが多いのだとか。
リリンの使い魔然り。
「そんなワケで、ちょっとじっとしてて。」
リリンはカインにそう言って、そうして使い魔に何事か指示を出す。やはり聞きなれない言葉だ、と、リリンに言われた通り身動きはせずにカインは彼女と使い魔を観察する。
黒猫の目が妖しく光る。かと思えば、瞳から光線がカインに向かって発せられ、発光し、さらに屈折して壁を照らす。幸いにも、その光は目に優しかった。カインは光を追って視線を動かす。
壁にはカインの見たことが無い文字が映し出されていた。
「あれは… 文字? だよな?」
何が起こっているのか、あの模様は文字でいいのか、カインは視線を壁に向けたままリリンに聞いた。
「エノク文字って言うのよ。」
「エノク文字?」
どうやらあれは文字で間違いないようだ。それにしても、いったい何が書かれているのだろう。猫のような姿の使い魔の目から放たれる光に当てられながら、カインはそのエノク文字とやらを見つめる。
「神と魔王とそれぞれの眷属たちが使う文字ね。どれどれ。」
文字についてさらっと説明して、リリンは壁の文字を読む。そこには、今のカインの顕在能力が潜在能力に対してどの程度解放されているか等が記されているという。
「へー、キミ、結構能力高いんだね。」
感心したように、リリンが壁の文字を読んでいる。
「そう? メサイアになりたくてアベルと一緒にトレーニングはしてたからかな。我流だけど。」
褒められてまんざらでもない様子で、カインは答える。
やっぱりトレーニングしといて良かった、なるのはメサイアじゃなくて勇者、ってやつだけど。
エノク文字は全く理解できないけれど、カインは満足気に壁に映る文字を眺めた。
「そうなんだー。その分、早く先に進めるね!」
「そう? …ちなみにオレの能力のタイプって?」
能力の高さは及第点を超えている。それならもう一つ。そのタイプだ。どんなタイプがあるのか全貌を知らないけれど、トクベツ感のある能力だといいな、とカインは緊張しながらリリンの回答を待つ。
「うんとね、勇者の特殊能力を除くとね、魔法剣士タイプになるかな! 軽戦士系とも言うね。」
「魔法剣士が何かも気にはなるんだけどさ、勇者の特殊能力って、何?」
最も耳慣れない言葉。勇者の特殊能力。特別な存在なのだから、言われてみればそんな能力があっても不思議じゃないな、とカインは思う。思うがそれが何かが気になって仕方がない。
「飛行能力と再生の高位の蘇生術。あと、一部メサイアしか使えないテレパシーと転移もフツーに使えるようになるよ!」
リリンが勇者の特殊能力を数え上げる。
「飛行能力? 空が飛べるってこと?」
「飛ぶって言うか… 空中戦もできるようになるって言うか… 移動は転移の方が早く移動できるしー。まあ、覚えた時に色々試してみてよ。」
空が飛べる? カインはその能力に強く興味を惹かれた。ずっと狭い町に閉じ籠る生活を余儀なくされていたからか、鳥のように空を飛べたらいいとずっと憧れてきた。
メサイアにも不可能な、空を飛ぶということができるようになる。
カインの胸は、感激に打ち震えていた。
実は蘇生と言う世の理を覆す強大な能力もあったが、詳細まで説明されなかったせいかカインには印象が薄かったようだ。
飛行能力より難易度も稀少度も高い能力だというのに。
「じゃあ、魔法剣士って?」
我に返って、カインはもう一つの気になっていたことを、リリンに尋ねる。
「軽戦士、スピード重視タイプの戦士の一種だよ。」
そう言ってリリンは説明を始めた。
一つ、スピード重視のため余り重い防具は装備しない(できない)。
攻撃を躱すことでダメージを受けないというのが軽戦士系の戦闘スタイル。
一つ、同じく武器も細身の重量が無いものを装備する。
重さではなくスピードで攻撃力を生む。
一つ、スタミナは中程度。
重戦士系に劣り術士系に勝る。仲間の盾になるのには向かない。
「で、その中の魔法剣士なんだけど。戦士系の中でも使用できる魔法が多いし、耐性もあるんだよ。まぁ、術士には劣るけど。」
「うん… なんか中途半端な能力だなぁ…」
全体的に真ん中、って感じがする。カインはリリンの説明を聞いてそう印象を受けた。
「万能型とも言うね。中途半端になるか、万能戦士になるかはキミ次第かな!」
悪意の欠片も見せずリリンがさらっと毒を吐く。
「…そう言われたら、中途半端なことできないじゃないか。しないけど。」
「そうだよねー。で、キミの能力タイプも分かった事だし、予定もさらに細かく決められるね!」
リリンの足元では使い魔の黒猫(仮)が退屈そうに欠伸をしている。
いつの間にかカインの能力を調べるために発していた光は途切れていた。
「…ちなみに、どんな予定になりそうなんだ?」
ほんの少しの不安を胸に抱えながら、カインはリリンに聞く。同時に、今まで肝心の能力タイプ無しにどうするつもりでいたのか、は、聞くだけ怖いので質問しないでおこうとカインは思う。
「今日は軽戦士系用の装備を整えるでしょ、そしていよいよ明日から実戦形式で修行、と相成るわけですよ。」
で、コレね。と、リリンはこれまた宿屋の主人から地図と一緒にもらっていた、マルクト周辺の出現怪物一覧の用紙を机に出した。
「親切だよね、まぁこれは本来、怪物を見かけた時の逃走手段の指南書なわけだけど。」
その用紙には、怪物のイラストと(人間が勝手につけた)名前、特徴と能力、主な出現場所、逃げる時の注意点が分かりやすく記されている。
「この逃げる時の注意点だけど、無視するか戦闘の参考にしてね。考えようによっては、スキを突くのに参考にはなるよ。」
「これ、全部覚えるの?」
「覚えるのは各タイプの特徴でいいかな。出現場所なんて気にする必要ないし、名前だって便宜上ヒトがつけたものだしね。」
なんと言う身も蓋もない意見。とカインは思うが、全部覚える必要が無いのは楽でいいな、と考え直す。
「で、」
リリンの声の変化をカインは聞き取った。あんまりよくない(カインにとって)話が始まるかもしれない。カインはこっそり覚悟する。
「このマルクトエリアの予定と言うか目標なんだけど。とりあえずー、この辺の怪物は小型で単体で行動するのが多いから、キミは無傷で、一撃で仕留められるようになったらクリアかな。期間は初めての実戦だし、基本の能力から見て一週間から十日くらいが目安。」
「…。マジで?」
小型だから一撃で、って言うのはともかく。と、カインは思う。
と言うか、小型でも怪物を一撃で仕留められたらカッコイイと思うので、可能なら是非できるようになりたいと思う。だから、そこはいい。そこはいいけど。
…無傷で? 聞き間違いじゃなくて?
「何よ、その顔。」
「無傷で、って言った?」
「言ったね。キミは軽戦士系になるんだから、この辺の怪物より早く動けないとー。」
そう言う理屈なわけね、リリンの言い分を聞いて彼女の言わんとすることは理解できた。
理解はできたけど、期間内に実現可能な事なんだろうか。最長十日って短くないか? 実戦経験ゼロなのに。
そもそも、アベルとメサイア本部を目指した時だってキャラバンに同行させてもらっての事だったのに。と、カインは心の中でぼやいた。
――キャラバン。武装商隊。十大都市を巡る大キャラバン、十大都市と各エリアの町や村を繋ぐ中キャラバン、町や村同士を繋ぐ小キャラバンがある。
以前は各町村で自給自足で生き抜くしかなかった。天使によって主要な街道が破壊されたり占拠されたりしていたからだ。地上には住める場所が減り、人口も減り、流通という言葉は無くなった。
その後メサイアが組織され、ゆっくりと交易が始まった。
やがて天使が怪物になり、普通の人間にも抵抗手段が身近なものになる。メサイアに選ばれなかった者たちの中でも血気盛んな者たちが力をつけ、組織を作り怪物に対抗し始めた。それがキャラバンの始まりだった。
ちなみにカインたちは一度中キャラバンに同行してエリア都市のホドまで、ホドからは大キャラバンに同行してメサイア本部のあるティファレトまで来ていた。
カインには実戦経験はない。せいぜいヨナタンの討伐任務の話を聞いていたことと、キャラバンに同行中彼らの戦闘を近くで見れたくらいだ。
「大丈夫だよ! キミ、アタシの予想より能力が高かったから、明日から実戦でも。」
「…もし、君の予想通りの能力だったらどうするつもりだった?」
あんまりにも気楽に言うものだからつい、要らないことを聞いてしまうカインだった。
「え? とりあえず基礎トレかな。予定値まで筋力と霊力をあげてからの実戦。キミの筋力と言うか運動能力は問題ないから、明日から始められるね!」
なるほど、筋トレみたいなのをさせられる予定だったのかな。と、カインは想像する。
「あれ? でも霊力って?」
そもそもそんな発想は以前のカインにもアベルにも無かった。ヨナタンの話で、なんとなくメサイアになると特殊な能力が使えるようになるんだろうな、くらいのものだった。
鍛え方も、体力と違って想像もつかない。未だに。
「霊力はまだまだ発展途上なんだけど、この辺の怪物相手なら無くてもヘーキ。だから寝る前にちょっとずつトレーニングしようね。これは急いでないけど今夜から始めよっか。」
「急がなくていいやつなんだ?」
急がない割に今夜からトレーニングと言う矛盾に、カインは首を傾げる。
「急いでどうにかなるなら急ぐけど… こればっかりは。筋トレみたいに効果が出ればいいのにねーとは思ってるよ。」
「なんかもやっとするなぁ…」
「まー取りあえず霊力についてはトレーニングの時に説明するね。」
ふうん? カインは全くイメージが掴めず、キツネにつままれたようにぱちくりと瞬きをした。
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