上 下
14 / 18
3 拠点作成(クラフト)

14.幼女は素材集めと共に②

しおりを挟む
私達は先日素材集めに来た西の森とは違う、東の森に来ていた。
こちらの方が比較的安全な森だ。

「ふぅ。木の匂いが落ち着くなぁ。」

「やっぱり、ケットシーは森の中が落ち着くんだ。」

確かケットシーは森の中に集落を作る種族だ。
シーナは街の中に住んでいるが本能的に森の中が落ち着くのだろう。

「さてと、それじゃあ早速採取をしちゃいますか!」

シーナがそう言って手に斧を持つ。
リノから貰った奴だ。

「そだね。手分けして集めちゃお。」

私とシーナは手分けしてそこら辺の木を切り倒して行く。
かなりの量の木材が必要だから2人で手分けしても中々大変だ。

「ヒメちゃん!何かいる!」

と、シーナが耳をピクピクと動かして尻尾を立てて言った。
その姿は警戒する猫その物の様だ。

「敵?」

「わかんないけどモンスターに違いは無さそう。」

そう言ってシーナが斧から2振りの短剣に持ち変える。
短剣を逆手に持って体勢を低くしたシーナは一点を見つめ続けた。

「まさか2人きりの時になんてね。」

私も鎌を取り出す。
敵が複数いるならこっちの方がやりやすい。

「かなり近い・・・来るよ!」

シーナの言葉とほぼ同時に黒い狼が3匹現れる。
ブラックウルフか。
個々の能力はそこまで強いモンスターでは無いが連携攻撃を得意とし、集団で来られると苦戦する相手だ。

「3匹だけ?」

「気配は。」

私達は小声で会話する。
大声を出せば奴らの仲間を呼びかねない。

「多分、偵察ってとこ。」

「私が瘴気かけるからその間に一体ずついこう。」

私が言うとシーナは静かに頷いて短剣を握りしめる。

「毒の瘴気!」

私がそう言って鎌を一振すると紫色の煙が辺りを漂い始める。
これこそが瘴気だ。

「ハイドスラッシュ!」

シーナの声が聞こえた。
それと共にきゃうんとブラックウルフが倒れる声と音がする。

「瘴気侵蝕!」

私が言うと瘴気がブラックウルフ達に纏わりつく様に漂い始めた。

「パワースラッシュ!」

シーナの声と共にもう一体落ちる。
これで残り一体だ。

「瘴気よ、喰らい尽くせ!」

私がそう言って鎌を振ると瘴気が残ったブラックウルフを包み込み、そして瘴気が消えるとそこには倒れたブラックウルフがいた。

「相変わらず、傷1つ無しに倒しちゃうのは凄いなぁ。」

シーナが私の倒したブラックウルフを見て言った。
シーナの倒したブラックウルフはどちらも胸の辺りに切り傷がある。
まぁ、短剣で切り倒したのだから当たり前だ。
私の瘴気は毒で毒殺したので外傷は無い。
まぁ、素材を売るのなら高値で売れるのは私の方だが倒すのに時間がかかるのが難点だ。

「倒したのは後でリノに解体お願いしよっか。」

私が言うとシーナは頷いて倒したブラックウルフをストレージにしまう。
パーティーにはバトラーとサポーターの2種類に分かれる。
バトラーとは戦闘をメインとし、戦闘時のアタッカー、タンクを務める者達で戦闘系スキルを多く持つ反面、生産系や商業系スキルはほとんど持たず、持っている方が珍しい程だ。
対してサポーターは戦闘中のサポーター、ヒーラーとしての活動やバトラーが円滑に戦闘を行えるよう、周囲の索敵や休憩時の場所確保、荷物持ちなどのサポートを行う。
その為戦闘スキルよりも生産系や商業系スキルを数多く持つ。
私達のメンバーだとリノのみサポーターだ。
元々パーティー戦と言うのはアタッカー2名とタンク1名のバトラー3名とサポーター1名の4名が基本戦術となる。
私達の場合はタンクをシーナが回避盾として担う事でアタッカー3人を実現している。
ただ、私達の中でモンスターの解体はリノしか出来ないし、回復効果のある食事はリノしか作れない。
私達も食事は作れるがそれはただの食事でしか無く、戦闘と戦闘の間に挟む食事は回復能力を持つ食事の方が良い為その効果を持つ食事を作れるリノにお願いする。
他のパーティーのサポーターと違うのは全員が魔法倉庫マジックストレージのスキルを持つ為荷物持ちの必要が無い事だろう。
このストレージは生産系空間魔法の為、バトラーで使える人は少ない。
現に、シーナは入学時使えなかったし、エリーも入学時は5つまでしかストレージに入れられなかった。
魔法と言うだけあり、適正さえあれば練習により容量を増やせる。
私もお母様に習い同じ様にストレージを大きくしたのだ。
その方法を2人にも実践して貰い2人のストレージも荷物が余裕で入るレベルには大きいストレージになった。
まぁ、リノのストレージに比べれば私達のストレージなんて半分以下なのだが・・・
でも、こうしてサポーターと別行動して素材集め出来るのは私達くらいだろう。

「ヒメちゃーん!ぼーっとしてないで早くいこー!」

少し遠くでシーナが手を振っていた。
私は急いでシーナの元に駆け寄った。

「ごめんごめん。」

「また考え事?公爵令嬢様は悩み事が尽きないですねぇ。」

シーナがそう言っていたずらに微笑む。

「もう!そういうのじゃないよ!」

「あはは、分かってるよ。ごめんごめん。ほら、さっさと終らせてあよ2人を驚かそ?」

シーナはそう言って斧を手にした。
私達は採取の続きをするのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい

梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。

ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ

雑木林
ファンタジー
 現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。  第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。  この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。  そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。  畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。  斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。

キャンピングカーで往く異世界徒然紀行

タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》 【書籍化!】 コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。 早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。 そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。 道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが… ※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜 ※カクヨム様でも投稿をしております

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

奴隷を買うために一億円貯めたいので、魔王討伐とかしてる暇ありません~チートって金稼ぎのためにあるもんでしょ?~

服田 晃和
ファンタジー
 四十歳という若さで死んでしまった、童貞の男がいた。  容姿が悪かったから?度胸が無かったから?そんな理由で童貞だったわけではない。  そんな男が奇跡に巡り合い、神の計らいによって世界「ヴァリタリア」へと転生する。  男が新たな生を掴む際、神は一つだけ頼みごとをした。  『三十年後に現れる魔王を倒してください。そのために己を鍛え、多くの仲間と出会い、絆を結んでください』と。  そして神は男に素晴らしい能力を授けたのだった。  十八歳という若い体を手に入れた男は、それからの二年間神の言う通り必死に己を鍛えぬいた。  多くは無いが仲間とも出会い、絆を深めた。そして最早人類には敵なしというほどまでの力を手に入れたのであった。  なぜ男は魔物に襲われ何度も死にかけながらも、男は必死に戦い続けたのだろうか。  神様に望まれたたった一つの願いを叶えるために?  『いやいやそんな高尚な人間じゃぁないよ、俺は。俺の願いはただ一つ。そう──  『運命の奴隷』にあって、イチャイチャラブラブ人生を送る事だ!!  魔王なんざしったこっちゃねぇぇ!!  こうして神の願いを無視した男の異世界生活が始まるのであった。

処理中です...