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第一部
第六話 強い敵でも勝つのは簡単
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ブラックオーガは、魔族オーガ種の中で最も高貴で魔王に近い。
恵まれた巨躯、産まれながらの高魔力、戦闘のセンスに才能に適正に…………いくらでも並べられるそれらを、先人達の厳しい指導と鍛錬で更に更に研ぎ澄ます。現魔王の親衛隊も多くは彼らであり、落伍者であっても大国の指南役へと引く手は数多。
そんなのが元諜報員?
そんなのが強盗列車に同乗?
視界に入れた時点で、こうなるんじゃないかと想定していたよ。
「グロウバルン! オリハルコンが目的なら、僕は持ってないよ!?」
「抜かせ! あの広域放送流したのお前だろ!? 警備の主力が強盗列車にまで来て制圧されて、隙を見てやっとここまで来たんだぞ、俺らは!」
「雑~魚っ、雑~魚っ! 隣接3か国のスパイだらけで、国際問題待ったなしだねっ! 警備隊長殿は頭を抱えて本国からの指示待ちかなっ!?」
「そこまで予想出来てるんなら説明しろよ!」
身長280cm、推定体重190kgの筋肉質が、床の埃を巻き上げず流麗な歩法で距離を詰めた。
武器は持たず、金属製のハンドガードと肘まで覆う流形腕甲。
ただのジャブとフックを隙なく繰り返し、あまりの速さに燕を思う。いや、拳と拳の合間に見せる切り返しが飛燕なだけで、一撃の速度は鞭の先端。たまにパンパン音を鳴らして、音速超えの衝撃波が頬の肉を叩いて痛い。
距離を取ろうにも速すぎて、腰だめのアサルトライフル連射は軽く避けられすぐに弾切れ。
「あっ、ちょっと待って! キミ強いねっ!? キミ強いねっ!」
「今更命乞いしても遅いからなっ!」
「そんなことないってっ! アルマリアぁっ! ブディランスぅっ!」
「援護を期待するんじゃねぇよ!」
「むしろこっちを援護してっ!」
カバーに使っている装置を強化し、襲撃者3人と撃ち合う向こうも大変。
何せ、反撃しているのはアルマリアが持つハンドガン型魔銃1丁。ブディランスはガスグレ投擲しようにも、弾幕が厚く自爆の危険。それでも投げたであろう幾つかは氷の球体に包まれて、起爆する前に中身ごと凍らせられている。
どうしよう?
ブディランスはともかく、アルマリアは連れていきたいな。身体の報酬目当てで。
「アルマリアっ、二日二晩でどうっ!?」
「浮気しないって言ってるでしょっ!?」
「余裕あるな、おいっ!? グリゼレン! 目標の確保急げ!」
「排液中だ! 推定30秒!」
いつの間にか超乳少女のガラス槽を中心に、向こうの4人は展開をしていた。
目的は揺り籠ではなく、オリハルコンでもなく、あの見目麗しく可憐で魅力溢れる女体なのか。でも、ソレは僕が先約している略奪物。所有権は僕にあるのだから、横取りなんてさせはしない。
空の弾倉を外して放り、グロウバルンは撃ち落さずそのまま避ける。
続いてアサルトライフルも同様に。
「苦し紛れに武器捨てて、観念したかっ!?」
「そんなことないよっ! っていうか覚えてる!? 列車の運営は捕まっても何もしてくれない! 略奪品の所有権は全部略奪者のモノ! それってどういう意味か分かる!? ねぇ、わかるかなあっ!?」
「関係あるかっ! 死ぬまで殴らせろっ!」
「サムアっ、受け取ったわ!」
「メテオ級設置完了! いつでも良いぞっ!」
「!?」
聞き逃してはいけない『メテオ級』に驚き、グロウバルンはブディランスに向いた。
他3人からは陰になって見えず、こっちからは丸見えのカバー裏。僕が投げて『転移させた』弾倉を持って、アルマリアとブディランスは手を取り合う。傍らには人の頭より大きな円柱が一つ、『00.07.29』の表示を時間と共に減らしていく。
そして、もう一つ投げたアサルトライフルは――――
「はあっ!? なんでケース内に銃なんて――」
「グリゼレン、離れろ!」
「じゃあねっ、バイバイルーキーっ!」
親指中指を重ねて溜めて、親指付け根を中指で叩く。
『パチンッ!』の軽い音と共に、一瞬で景色が変わって強めの着地。深い深い森の中で、発酵した土や枯れ葉が生命サイクルの臭いを散らす。直上には6本の光柱に乗った巨大列車が高速で過ぎ去り、一瞬遅れて落ちてきた超乳少女を受け止めたらギュッと抱きしめ。
――――すぐ近くで銃が落ちるバサッ!
――――少し離れて、二人分が着地失敗するドサッ!
「メテオの光はキレーダナー……」
――――遠く遠く数km先で、一瞬の光となぎ倒す轟音。
わかっていたから展開していた障壁魔術を軋ませて、周りの木々を視界後方になぎ倒し吹き飛ばす。流石戦略兵器として使われる『メテオ級魔力爆弾』。生存者はいったい何人いるのか、でも慣れたベテラン連中はみんな無事だろう。
後日、酒場で真相を話したらどんな顔をするのか。
楽しみで楽しみで仕方ない。
「……ん? あれ?」
「いたたたたっ…………何? 忘れ物でもした?」
「いや…………この娘、死んでる」
恵まれた巨躯、産まれながらの高魔力、戦闘のセンスに才能に適正に…………いくらでも並べられるそれらを、先人達の厳しい指導と鍛錬で更に更に研ぎ澄ます。現魔王の親衛隊も多くは彼らであり、落伍者であっても大国の指南役へと引く手は数多。
そんなのが元諜報員?
そんなのが強盗列車に同乗?
視界に入れた時点で、こうなるんじゃないかと想定していたよ。
「グロウバルン! オリハルコンが目的なら、僕は持ってないよ!?」
「抜かせ! あの広域放送流したのお前だろ!? 警備の主力が強盗列車にまで来て制圧されて、隙を見てやっとここまで来たんだぞ、俺らは!」
「雑~魚っ、雑~魚っ! 隣接3か国のスパイだらけで、国際問題待ったなしだねっ! 警備隊長殿は頭を抱えて本国からの指示待ちかなっ!?」
「そこまで予想出来てるんなら説明しろよ!」
身長280cm、推定体重190kgの筋肉質が、床の埃を巻き上げず流麗な歩法で距離を詰めた。
武器は持たず、金属製のハンドガードと肘まで覆う流形腕甲。
ただのジャブとフックを隙なく繰り返し、あまりの速さに燕を思う。いや、拳と拳の合間に見せる切り返しが飛燕なだけで、一撃の速度は鞭の先端。たまにパンパン音を鳴らして、音速超えの衝撃波が頬の肉を叩いて痛い。
距離を取ろうにも速すぎて、腰だめのアサルトライフル連射は軽く避けられすぐに弾切れ。
「あっ、ちょっと待って! キミ強いねっ!? キミ強いねっ!」
「今更命乞いしても遅いからなっ!」
「そんなことないってっ! アルマリアぁっ! ブディランスぅっ!」
「援護を期待するんじゃねぇよ!」
「むしろこっちを援護してっ!」
カバーに使っている装置を強化し、襲撃者3人と撃ち合う向こうも大変。
何せ、反撃しているのはアルマリアが持つハンドガン型魔銃1丁。ブディランスはガスグレ投擲しようにも、弾幕が厚く自爆の危険。それでも投げたであろう幾つかは氷の球体に包まれて、起爆する前に中身ごと凍らせられている。
どうしよう?
ブディランスはともかく、アルマリアは連れていきたいな。身体の報酬目当てで。
「アルマリアっ、二日二晩でどうっ!?」
「浮気しないって言ってるでしょっ!?」
「余裕あるな、おいっ!? グリゼレン! 目標の確保急げ!」
「排液中だ! 推定30秒!」
いつの間にか超乳少女のガラス槽を中心に、向こうの4人は展開をしていた。
目的は揺り籠ではなく、オリハルコンでもなく、あの見目麗しく可憐で魅力溢れる女体なのか。でも、ソレは僕が先約している略奪物。所有権は僕にあるのだから、横取りなんてさせはしない。
空の弾倉を外して放り、グロウバルンは撃ち落さずそのまま避ける。
続いてアサルトライフルも同様に。
「苦し紛れに武器捨てて、観念したかっ!?」
「そんなことないよっ! っていうか覚えてる!? 列車の運営は捕まっても何もしてくれない! 略奪品の所有権は全部略奪者のモノ! それってどういう意味か分かる!? ねぇ、わかるかなあっ!?」
「関係あるかっ! 死ぬまで殴らせろっ!」
「サムアっ、受け取ったわ!」
「メテオ級設置完了! いつでも良いぞっ!」
「!?」
聞き逃してはいけない『メテオ級』に驚き、グロウバルンはブディランスに向いた。
他3人からは陰になって見えず、こっちからは丸見えのカバー裏。僕が投げて『転移させた』弾倉を持って、アルマリアとブディランスは手を取り合う。傍らには人の頭より大きな円柱が一つ、『00.07.29』の表示を時間と共に減らしていく。
そして、もう一つ投げたアサルトライフルは――――
「はあっ!? なんでケース内に銃なんて――」
「グリゼレン、離れろ!」
「じゃあねっ、バイバイルーキーっ!」
親指中指を重ねて溜めて、親指付け根を中指で叩く。
『パチンッ!』の軽い音と共に、一瞬で景色が変わって強めの着地。深い深い森の中で、発酵した土や枯れ葉が生命サイクルの臭いを散らす。直上には6本の光柱に乗った巨大列車が高速で過ぎ去り、一瞬遅れて落ちてきた超乳少女を受け止めたらギュッと抱きしめ。
――――すぐ近くで銃が落ちるバサッ!
――――少し離れて、二人分が着地失敗するドサッ!
「メテオの光はキレーダナー……」
――――遠く遠く数km先で、一瞬の光となぎ倒す轟音。
わかっていたから展開していた障壁魔術を軋ませて、周りの木々を視界後方になぎ倒し吹き飛ばす。流石戦略兵器として使われる『メテオ級魔力爆弾』。生存者はいったい何人いるのか、でも慣れたベテラン連中はみんな無事だろう。
後日、酒場で真相を話したらどんな顔をするのか。
楽しみで楽しみで仕方ない。
「……ん? あれ?」
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「いや…………この娘、死んでる」
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