76 / 104
遠回りの恋/テーマ:子どもの頃の友達 ※別サイトにて優秀作品
2 遠回りの恋
しおりを挟む
「裏切り者ー! そうやって蒼は私の先を行くんだー」
「何だそれ」
蒼は意味がわからず眉を寄せているけど、これは私が勝手に拗ねているだけ。
今まで沢山助けてもらったんだし、蒼の恋を応援してあげようじゃないかと、バッと伏せていた顔を上げると「うわっ!? 今度はなんだよ」と驚く蒼。
私に好きな人を話すのが気まずいなら陰ながら応援しようと、立ち上がった私は蒼の両肩に手を置き「任せてね」と言って席につく。
何がなんだかわからない蒼は「何をだよ……」なんて言ってたけど、兎に角二人の関係が更に親密になるようにすればいいんだから、いっちょ私が一肌脱ぐかな。
その日のお昼。
中学までの私なら、自然と蒼と一緒にお昼を食べていたけど、今回は違う。
先ず蒼の席に行き「学食行くか」と言った蒼の言葉のあとに私はチラリと森川さんに視線を向けて「森川さんも一緒にお昼食べない?」とさり気なく誘う。
今まで私と蒼が二人でお昼を食べていたことを知ってる森川さんは自分が誘われたことに戸惑ってたみたいだけど「ダメかな?」と言う私の言葉に「うん、いいよ」と返事をしてくれた。
「学食は一階の奥だったよね」
「ああ、学校案内のパンフレットに載ってたからな」
いい感じに話す二人と学食へ向かう途中、私は「あっ! 用事あるの忘れてた」と今思い出したかのようによそおいその場から離れた。
本当は何の用事もない私は、購買でパンを買って教室に戻ると自分の席でお昼を食べる。
これで好きな人と二人になれたんだから、蒼は私に感謝すべきね。
こんな感じで二人きりになる機会をつくれば、お互いに惹かれ合ってゴールインになるかもしれない。
そう思ったら嬉しいはずなのに、心がモヤモヤするのは何故だろう。
パンを食べていた手は止まり私の表情は曇る。
森川さんは良い人だし、しっかりしているのに明るくて可愛い一面もある。
蒼も小さい頃から女の子みたいに可愛くて、髪を変えた今なんてまるで本当の女の子みたいで、正直二人はお似合いだと思う。
「私も、森川さんみたいだったら……」
ポツリと口から出た言葉に、私は口元を手で隠す。
私が森川さんみたいだったらなんだというのか。
なんで森川さんになりたいなんて思ったんだろう。
わからない。
ただ、嫌なんだ。
蒼が私から離れていくみたいで。
もう、今までのような関係が続けられないんじゃないかって。
「違う……そんな理由じゃなくて。私は蒼が──」
「おい! なかなか戻ってこねーから来てみれば、何でお前は教室でパン食ってんだよ」
自分の気持ちに気づいた瞬間、教室に蒼が現れるなんてついてない。
この気持ちを伝えたところで蒼にとって迷惑にしかならないから、私は黙って蒼の恋を応援しなくちゃいけない。
それが、幼馴染である私がするべき事のはず。
なのに何で、涙が溢れちゃうんだろう。
「っ!? おい、どうし──」
心配する蒼の言葉を遮り、私は教室を飛び出した。
蒼、驚いた顔してた。
当たり前だ、突然泣き出したんだから。
教室に居た人たちの顔までは見れなかったけど、きっと皆に見られたに違いない。
泣くつもりなんてなかったのに、何で私の涙は未だに止まらないんだろう。
早く枯れてしまえばいいのに。
そうしたら「驚かせてごめんね」って、笑顔で蒼に言えるのに。
とうとう屋上まで来てしまった私は、呼吸を乱して肩で息をする。
教室にも戻りづらいし、蒼とも顔が合わせづらくなってしまった。
このまま授業をサボって屋上にいるのも悪くない。
その間にこの気持ちも涙も収まるかもしれないから。
「はぁはぁ……お前な、何で逃げんだよ」
扉に視線を向ければ、息を切らした蒼の姿。
追いかけてきて何てほしくなかったのに、放っておいてくれればよかったのに。
「何で追いかけてきたの。森川さん、待ってるんじゃない。早く行ってあげなよ」
「今は森川よりお前だろ。何かあったのかよ」
優しい言葉なんてかけないで。
森川さんより私なんて言わないで。
折角押し込めようとしている感情を引きずり出さないで。
背を向けていた私の頭にぽんっと手が置かれ。
まるであやすようなその手の温もりに、私は口にしてしまう。
「何だそれ」
蒼は意味がわからず眉を寄せているけど、これは私が勝手に拗ねているだけ。
今まで沢山助けてもらったんだし、蒼の恋を応援してあげようじゃないかと、バッと伏せていた顔を上げると「うわっ!? 今度はなんだよ」と驚く蒼。
私に好きな人を話すのが気まずいなら陰ながら応援しようと、立ち上がった私は蒼の両肩に手を置き「任せてね」と言って席につく。
何がなんだかわからない蒼は「何をだよ……」なんて言ってたけど、兎に角二人の関係が更に親密になるようにすればいいんだから、いっちょ私が一肌脱ぐかな。
その日のお昼。
中学までの私なら、自然と蒼と一緒にお昼を食べていたけど、今回は違う。
先ず蒼の席に行き「学食行くか」と言った蒼の言葉のあとに私はチラリと森川さんに視線を向けて「森川さんも一緒にお昼食べない?」とさり気なく誘う。
今まで私と蒼が二人でお昼を食べていたことを知ってる森川さんは自分が誘われたことに戸惑ってたみたいだけど「ダメかな?」と言う私の言葉に「うん、いいよ」と返事をしてくれた。
「学食は一階の奥だったよね」
「ああ、学校案内のパンフレットに載ってたからな」
いい感じに話す二人と学食へ向かう途中、私は「あっ! 用事あるの忘れてた」と今思い出したかのようによそおいその場から離れた。
本当は何の用事もない私は、購買でパンを買って教室に戻ると自分の席でお昼を食べる。
これで好きな人と二人になれたんだから、蒼は私に感謝すべきね。
こんな感じで二人きりになる機会をつくれば、お互いに惹かれ合ってゴールインになるかもしれない。
そう思ったら嬉しいはずなのに、心がモヤモヤするのは何故だろう。
パンを食べていた手は止まり私の表情は曇る。
森川さんは良い人だし、しっかりしているのに明るくて可愛い一面もある。
蒼も小さい頃から女の子みたいに可愛くて、髪を変えた今なんてまるで本当の女の子みたいで、正直二人はお似合いだと思う。
「私も、森川さんみたいだったら……」
ポツリと口から出た言葉に、私は口元を手で隠す。
私が森川さんみたいだったらなんだというのか。
なんで森川さんになりたいなんて思ったんだろう。
わからない。
ただ、嫌なんだ。
蒼が私から離れていくみたいで。
もう、今までのような関係が続けられないんじゃないかって。
「違う……そんな理由じゃなくて。私は蒼が──」
「おい! なかなか戻ってこねーから来てみれば、何でお前は教室でパン食ってんだよ」
自分の気持ちに気づいた瞬間、教室に蒼が現れるなんてついてない。
この気持ちを伝えたところで蒼にとって迷惑にしかならないから、私は黙って蒼の恋を応援しなくちゃいけない。
それが、幼馴染である私がするべき事のはず。
なのに何で、涙が溢れちゃうんだろう。
「っ!? おい、どうし──」
心配する蒼の言葉を遮り、私は教室を飛び出した。
蒼、驚いた顔してた。
当たり前だ、突然泣き出したんだから。
教室に居た人たちの顔までは見れなかったけど、きっと皆に見られたに違いない。
泣くつもりなんてなかったのに、何で私の涙は未だに止まらないんだろう。
早く枯れてしまえばいいのに。
そうしたら「驚かせてごめんね」って、笑顔で蒼に言えるのに。
とうとう屋上まで来てしまった私は、呼吸を乱して肩で息をする。
教室にも戻りづらいし、蒼とも顔が合わせづらくなってしまった。
このまま授業をサボって屋上にいるのも悪くない。
その間にこの気持ちも涙も収まるかもしれないから。
「はぁはぁ……お前な、何で逃げんだよ」
扉に視線を向ければ、息を切らした蒼の姿。
追いかけてきて何てほしくなかったのに、放っておいてくれればよかったのに。
「何で追いかけてきたの。森川さん、待ってるんじゃない。早く行ってあげなよ」
「今は森川よりお前だろ。何かあったのかよ」
優しい言葉なんてかけないで。
森川さんより私なんて言わないで。
折角押し込めようとしている感情を引きずり出さないで。
背を向けていた私の頭にぽんっと手が置かれ。
まるであやすようなその手の温もりに、私は口にしてしまう。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
【完結】記憶が戻ったら〜孤独な妻は英雄夫の変わらぬ溺愛に溶かされる〜
凛蓮月
恋愛
【完全完結しました。ご愛読頂きありがとうございます!】
公爵令嬢カトリーナ・オールディスは、王太子デーヴィドの婚約者であった。
だが、カトリーナを良く思っていなかったデーヴィドは真実の愛を見つけたと言って婚約破棄した上、カトリーナが最も嫌う醜悪伯爵──ディートリヒ・ランゲの元へ嫁げと命令した。
ディートリヒは『救国の英雄』として知られる王国騎士団副団長。だが、顔には数年前の戦で負った大きな傷があった為社交界では『醜悪伯爵』と侮蔑されていた。
嫌がったカトリーナは逃げる途中階段で足を踏み外し転げ落ちる。
──目覚めたカトリーナは、一切の記憶を失っていた。
王太子命令による望まぬ婚姻ではあったが仲良くするカトリーナとディートリヒ。
カトリーナに想いを寄せていた彼にとってこの婚姻は一生に一度の奇跡だったのだ。
(記憶を取り戻したい)
(どうかこのままで……)
だが、それも長くは続かず──。
【HOTランキング1位頂きました。ありがとうございます!】
※このお話は、以前投稿したものを大幅に加筆修正したものです。
※中編版、短編版はpixivに移動させています。
※小説家になろう、ベリーズカフェでも掲載しています。
※ 魔法等は出てきませんが、作者独自の異世界のお話です。現実世界とは異なります。(異世界語を翻訳しているような感覚です)
私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜
みおな
恋愛
大好きだった人。
一目惚れだった。だから、あの人が婚約者になって、本当に嬉しかった。
なのに、私の友人と愛を交わしていたなんて。
もう誰も信じられない。
【本編完結】若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
はづも
恋愛
本編完結済み。番外編がたまに投稿されたりされなかったりします。
伯爵家に生まれたカレン・アーネストは、20歳のとき、幼馴染でもある若き公爵、ジョンズワート・デュライトの妻となった。
しかし、ジョンズワートはカレンを愛しているわけではない。
当時12歳だったカレンの額に傷を負わせた彼は、その責任を取るためにカレンと結婚したのである。
……本当に好きな人を、諦めてまで。
幼い頃からずっと好きだった彼のために、早く身を引かなければ。
そう思っていたのに、初夜の一度でカレンは懐妊。
このままでは、ジョンズワートが一生自分に縛られてしまう。
夫を想うが故に、カレンは妊娠したことを隠して姿を消した。
愛する人を縛りたくないヒロインと、死亡説が流れても好きな人を諦めることができないヒーローの、両片想い・幼馴染・すれ違い・ハッピーエンドなお話です。
全てを捨てて消え去ろうとしたのですが…なぜか殿下に執着されています
Karamimi
恋愛
侯爵令嬢のセーラは、1人崖から海を見つめていた。大好きだった父は、2ヶ月前に事故死。愛していた婚約者、ワイアームは、公爵令嬢のレイリスに夢中。
さらにレイリスに酷い事をしたという噂まで流されたセーラは、貴族世界で完全に孤立していた。独りぼっちになってしまった彼女は、絶望の中海を見つめる。
“私さえいなくなれば、皆幸せになれる”
そう強く思ったセーラは、子供の頃から大好きだった歌を口ずさみながら、海に身を投げたのだった。
一方、婚約者でもあるワイアームもまた、一人孤独な戦いをしていた。それもこれも、愛するセーラを守るため。
そんなワイアームの気持ちなど全く知らないセーラは…
龍の血を受け継いだワイアームと、海神の娘の血を受け継いだセーラの恋の物語です。
ご都合主義全開、ファンタジー要素が強め?な作品です。
よろしくお願いいたします。
※カクヨム、小説家になろうでも同時配信しています。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~
柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。
その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!
この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!?
※シリアス展開もわりとあります。
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる