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戦いの火蓋は切られた
3 戦いの火蓋は切られた
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「冗談だろ。信長ともあろう者が町娘に惚れたってのか」
「政宗、お前の目は見る目がないようだな」
ここまで言い切る信長を前にして皆の興味が町娘へと向けられた。
突然現れたの町娘。
これといって変わったところもない普通の女。
だが、あの信長が妻としたいと考えるほどの相手なら何かしらあるに違いないと、皆の視線が鈴に突き刺さる。
そんな空気の中で、沢山並べられた料理を皆が食べ始める。
お酒を飲んだり話たりとしている姿は現代でもあるような飲み会のように思えてなんだか懐かしい。
「お前も食べろ」
「んぐっ!」
突然口の中に料理を突っ込まれ、鈴はもぐもぐと食べ「美味しい」と声を漏らした。
その言葉に満足そうな信長がだが、この人物が一体何を考えているのかわからない。
戦国時代に来て、条件を受け入れてもらい信長の城で暮らしている鈴。
いつの間にか一月以上は経っているが、未だに信長という人物は理解ができない。
歴史上で信長は破天荒だと聞く。
だが実際一緒過ごしていて思うのは、無邪気な子供というイメージ。
きっと『妻になる女』など言っていたが、鈴が珍しいからだろう。
信長にとって鈴は、珍しい物という感覚なのだろうが、生活さえ保証されればいい鈴にとっては興味を持たれるだけ平穏な日常から遠ざかりそうに感じてした。
戦国時代にタイムスリップした時点で平穏何てないのかもしれないが。
食事を終えて部屋に戻った鈴は、布団に横になり瞼を閉じる。
今日は話を聞く限り、同盟が結ばれたことでの親睦の食事会だった様だが、あれだけ賑やかだった場所から部屋に戻ると一気に静寂に包まれて何だか落ち着かない。
瞼を閉じていてなかなか寝付けずにいると、鈴の音が聞こえ襖を開ける。
するこそこには天の姿があり、首輪に紙が挟まっていた。
天が鈴の部屋の前で止まっているということは自分宛てなのだろうと思い紙を広げる。
そこには「今から俺の部屋に来い」とだけ書かれてあるが、この一文で誰なのか直ぐにわかる。
「天ってば、すっかり信長様の言いなりね」
天はニャーと鳴き声を上げると、何処かへ行ってしまった。
鈴は溜息を吐くと信長の部屋へと向かう。
丁度眠れなかったし、無視すれば何を言い出すかわかったものではないため、ここはおとなしく言う通りにするべきだろう。
「信長様、鈴です」
「入れ」
その言葉で襖を開け中に入ると、鈴は信長の前に座る。
もう夜も遅い時間だというのに呼び出すなんて、一体なんの話なのだろうか。
少なくてもいい話ではないだろう。
「鈴、お前は自分のいた時代に帰りたいか」
思いもしない、予想とは遥かに違う言葉。
信長はあの話を信じていないと思っていたのだが、これは鈴の言った事を信じているということなのか。
そもそも帰りたいかと問うということは、その方法を知っているということなのか。
「勿論帰りたいです。信長様はその方法をご存知なのですか?」
鈴の問に信長は笑みを浮かべ「俺の考えが間違っていなければな」と言う。
一体どういうことなのか詳しい話を聞く。
鈴がこの時代に来たのは、信長と出会う一日前。
そして同時刻、信長は南蛮の物に興味を示していた。
魔術と呼ばれる物に。
南蛮から入手した魔術書の文字は読めなかった信長だが、そこに描いてある絵を紙に描き写した。
すると、突然描いた絵が光りだした。
光が収まると、特になんの変化も無いただの絵となり、信長はその紙を捨てた。
その話と鈴がこの時代に来た件、もしかすると関係があるかもしれない。
奇妙なことが一日に二回も起きたのだ、可能性はある。
「それでその魔術書はどうしたんですか?」
「まだ俺の元にある」
その言葉を聞いて、元の時代に戻れるかもしれないという期待が鈴の中で膨らむ。
「魔術書を譲ってやらなくもない」
「本当ですか!?」
「ただし条件がある」
立ち上がった信長は鈴の目の前まで来て、ぐっと顔を近づけ言った。
「俺の妻となれ」
そんな条件のめるわけもなく、現代に帰る人間が信長の妻になるなど不可能。
「無理にとは言わん。だが、それなら魔術書は諦めるんだな」
「貴方という人は悪魔みたいな人ね」
「お前も俺に城と南蛮の物を譲る代わりの条件を出しただろう。それと同じことだ」
それを言われると何も言い返せない。
魔術書がどこにあるかさえわかれば、こっそり持ち出すことはできるかもしれないが、南蛮の文字が自分に読めるとは思えない。
どうするべきかは決まっていた。
信長の妻にならずに魔術書を入手し帰る方法を見つける。
それはこの城内で起きた、信長と鈴の何とも奇妙な戦いの始まりだった。
《完》
「政宗、お前の目は見る目がないようだな」
ここまで言い切る信長を前にして皆の興味が町娘へと向けられた。
突然現れたの町娘。
これといって変わったところもない普通の女。
だが、あの信長が妻としたいと考えるほどの相手なら何かしらあるに違いないと、皆の視線が鈴に突き刺さる。
そんな空気の中で、沢山並べられた料理を皆が食べ始める。
お酒を飲んだり話たりとしている姿は現代でもあるような飲み会のように思えてなんだか懐かしい。
「お前も食べろ」
「んぐっ!」
突然口の中に料理を突っ込まれ、鈴はもぐもぐと食べ「美味しい」と声を漏らした。
その言葉に満足そうな信長がだが、この人物が一体何を考えているのかわからない。
戦国時代に来て、条件を受け入れてもらい信長の城で暮らしている鈴。
いつの間にか一月以上は経っているが、未だに信長という人物は理解ができない。
歴史上で信長は破天荒だと聞く。
だが実際一緒過ごしていて思うのは、無邪気な子供というイメージ。
きっと『妻になる女』など言っていたが、鈴が珍しいからだろう。
信長にとって鈴は、珍しい物という感覚なのだろうが、生活さえ保証されればいい鈴にとっては興味を持たれるだけ平穏な日常から遠ざかりそうに感じてした。
戦国時代にタイムスリップした時点で平穏何てないのかもしれないが。
食事を終えて部屋に戻った鈴は、布団に横になり瞼を閉じる。
今日は話を聞く限り、同盟が結ばれたことでの親睦の食事会だった様だが、あれだけ賑やかだった場所から部屋に戻ると一気に静寂に包まれて何だか落ち着かない。
瞼を閉じていてなかなか寝付けずにいると、鈴の音が聞こえ襖を開ける。
するこそこには天の姿があり、首輪に紙が挟まっていた。
天が鈴の部屋の前で止まっているということは自分宛てなのだろうと思い紙を広げる。
そこには「今から俺の部屋に来い」とだけ書かれてあるが、この一文で誰なのか直ぐにわかる。
「天ってば、すっかり信長様の言いなりね」
天はニャーと鳴き声を上げると、何処かへ行ってしまった。
鈴は溜息を吐くと信長の部屋へと向かう。
丁度眠れなかったし、無視すれば何を言い出すかわかったものではないため、ここはおとなしく言う通りにするべきだろう。
「信長様、鈴です」
「入れ」
その言葉で襖を開け中に入ると、鈴は信長の前に座る。
もう夜も遅い時間だというのに呼び出すなんて、一体なんの話なのだろうか。
少なくてもいい話ではないだろう。
「鈴、お前は自分のいた時代に帰りたいか」
思いもしない、予想とは遥かに違う言葉。
信長はあの話を信じていないと思っていたのだが、これは鈴の言った事を信じているということなのか。
そもそも帰りたいかと問うということは、その方法を知っているということなのか。
「勿論帰りたいです。信長様はその方法をご存知なのですか?」
鈴の問に信長は笑みを浮かべ「俺の考えが間違っていなければな」と言う。
一体どういうことなのか詳しい話を聞く。
鈴がこの時代に来たのは、信長と出会う一日前。
そして同時刻、信長は南蛮の物に興味を示していた。
魔術と呼ばれる物に。
南蛮から入手した魔術書の文字は読めなかった信長だが、そこに描いてある絵を紙に描き写した。
すると、突然描いた絵が光りだした。
光が収まると、特になんの変化も無いただの絵となり、信長はその紙を捨てた。
その話と鈴がこの時代に来た件、もしかすると関係があるかもしれない。
奇妙なことが一日に二回も起きたのだ、可能性はある。
「それでその魔術書はどうしたんですか?」
「まだ俺の元にある」
その言葉を聞いて、元の時代に戻れるかもしれないという期待が鈴の中で膨らむ。
「魔術書を譲ってやらなくもない」
「本当ですか!?」
「ただし条件がある」
立ち上がった信長は鈴の目の前まで来て、ぐっと顔を近づけ言った。
「俺の妻となれ」
そんな条件のめるわけもなく、現代に帰る人間が信長の妻になるなど不可能。
「無理にとは言わん。だが、それなら魔術書は諦めるんだな」
「貴方という人は悪魔みたいな人ね」
「お前も俺に城と南蛮の物を譲る代わりの条件を出しただろう。それと同じことだ」
それを言われると何も言い返せない。
魔術書がどこにあるかさえわかれば、こっそり持ち出すことはできるかもしれないが、南蛮の文字が自分に読めるとは思えない。
どうするべきかは決まっていた。
信長の妻にならずに魔術書を入手し帰る方法を見つける。
それはこの城内で起きた、信長と鈴の何とも奇妙な戦いの始まりだった。
《完》
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