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第五幕 様々な秋の訪れ
一 様々な秋の訪れ
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宴を終えた翌朝、目を覚ますと、葉流は窓の外を眺めていた。
ついこの前までは、まだ緑の葉もあったというのに、今は全ての葉が色付き秋なのだと感じさせる。
戦国時代に来て数日が経とうとしているが、今では少しずつこの時代にも慣れ始めていた。
「幸村です、少しよろしいでしょうか」
「はい、どうぞ」
声をかけられ返事をすると、幸村が部屋へと入ってくる。
「どうかされたのですか?」
「あの、もしよろしければ、紅葉を一緒に見に行きませんか?」
「紅葉ですか!丁度紅葉を見たいと思っていたところなので是非お願いします」
戦国時代の紅葉も見てみたいと思っていたところだったのでお願いし、幸村と二人早速城の外へと出た。
するとそこには、信玄と佐助の姿があり、幸村も驚いた様子で二人の元へと歩み寄る。
「お館様、何故ここに!?それに佐助まで」
「幸村、我を差し置いて葉流と共に二人で紅葉を見に行くなど、我がほおっておくはずがないであろう」
「ッ、何処からその情報を!?」
「幸村様、何かあっては危険ですので俺も同行します」
「佐助、お前まで……」
幸村は残念そうに肩を落とすが、結局三人で紅葉を見に行くことになった。
だがその前に、三人が喧嘩を始めてしまいなかなか出発ができずにいた。
「葉流は我の馬に乗せると言っておるであろう」
「いえ、俺の馬に乗せますのでお館様は先頭をお願い致します」
「いや、そういったことは幸村様の家臣である俺の仕事です」
こんな調子でなかなか決まらず、結局信玄が強引に押し切り、葉流は信玄の馬に乗せてもらうこととなった。
馬に乗るのは初めてではないのだが、まだ慣れているわけではないため少し怖さを感じてしまう。
「馬が怖いのか?」
「はい、少し……」
「安心せよ、我と馬に乗っておるのだからな」
突然体を力強く抱き寄せられ、安心どころか更に鼓動が高鳴りだす。
「少し早くなるぞ」
「え?きゃッ!!」
馬に乗った途端、突然信玄は馬を走らせる。
後ろから幸村と佐助の声が聞こえた気がしたが、葉流は振り落とされないように掴るのに必死で、馬の速度が落ちたときにはすでに二人の姿は見えなくなっていた。
「武田さん、お二人が追いつけていないようですが」
「ああ、二人を撒くためにしたのだからな」
「え?」
「葉流と二人きりで紅葉を楽しみたかったのだ」
優しい微笑みを向けられ、近い距離に昨夜のことを思い出し頬に熱が宿る。
そんなことを思い出していると馬が止まり、信玄が馬から降りた。
「今日はお主に見せたい場所があってな。ここからは歩いて行くぞ」
見せたい場所とは何だろうと思いつつ差し出された手に掴まり馬から降りると、信玄は手を握ったまま歩き出す。
少し歩いたところで信玄の足が止まり、着いたぞと声が掛けられ顔を上げると、目に飛び込んできたのは鮮やかに色付く葉の姿だった。
二人を取り囲むように周りは秋の色に包まれており、その光景に葉流は言葉を失った。
「気に入ってもらえたようだな」
「はい!この様な素敵な場所に連れて来てくださりありがとうございます」
礼を伝え一礼すると、突然伸ばされた手に腕を掴まれ、そのまま抱き寄せられてしまう。
近い距離に顔が赤く染まるのが自分でもわかる。
「お主の顔も、この美しい紅葉のように色付いておるな」
二人の間にある距離は次第になくなり、唇が触れそうになったその時、声が聞こえ視線を向けると幸村と佐助の姿が見える。
「やっと見つけましたよお館様ッ!!」
「やっぱりここに来てやがったな。って、なにしてやがる!さっさとそいつから離れやがれッ!!」
こうして昨夜と同じく二人に助けられ、信玄はまた二人に邪魔をされたと残念そうにしている。
「お館様、勝手に行かれては困ります!!」
「お主らは本当に空気を読まぬな」
「だから読んでんだっつの!!」
そんないつもの光景に自然と頬が緩み笑みを浮かべる。
しばらくすると、日も暮れてきたので城へ戻りましょう、と言う幸村の言葉で空を見上げると、すでに空は周りの紅葉と同じように茜色に染まっている。
皆でお城へ帰る途中、葉流を誰の馬に乗せるかで再び喧嘩となったが、城へ戻ったときには疲れたのかぐっすりと眠ることができた。
そんな色々なことがあった1日が終わった翌日、今日は何をしようかと部屋で一人考えていると、部屋に幸村が朝食を届けに来てくれた。
「あの、もし貴女さえよろしければ、山へ一緒に山菜を採りに行きませんか?」
「山へ山菜を?」
「はい。秋は紅葉だけでなく食べる物でも感じることができますから」
「そうですね。是非御一緒させてください」
こうして幸村と共に城の近くにある山へと向かうことになったのだが、そのためには馬に乗らなければいけない。
「まだ馬には慣れませんか?」
「はい……」
「大丈夫ですよ、俺が貴女を守りますから」
さらっと言われた言葉に胸が高鳴るのを感じながら、馬の背に揺られ山へと向かう。
山へ着くと馬はその場に置き、そこからは歩いて山の奥へと入っていく。
「足場が悪いので、俺の手に掴まってください」
差し出された手に掴まり歩いていくと、薬草が至るところに生えており、二人は持ってきた籠に入れていく。
「あ、あそこにも、きゃッ!?」
「葉流ッ!!」
山菜を見つけ採ろうと、幸村の手を放したその時、土に足をとられ足を滑らせてしまった。
慌てて駆け寄ってきた幸村に、大丈夫ですよと言いながら立ち上がろうとするが、足に痛みが走り立つことができない。
そんな葉流の膝裏に幸村は手を差し込むと、軽々と姫抱きにする。
「ッ、大丈夫ですよ!一人で歩けますから」
「その足では歩くことはできないでしょう」
「でも……」
「大丈夫です。山菜も沢山採れましたし、貴女の足の手当てもしなければいけませんから、今日は城へ戻りましょう」
自分の不注意で怪我をし、幸村に迷惑をかけてしまったことを申し訳なく思いながら馬の背に揺られているとあることに気づく。
いつもより馬の速度がゆっくりであり、幸村が足に負担をかけないようにしてくれているのがわかる。
視線を上げれば、眉を寄せ、元気のない幸村の顔が瞳に映った。
それからなんとか日が暮れる前に城へとつき自室へ戻ると、幸村が手当てをしてくれたのだが、やはり幸村はどこか元気がない。
ついこの前までは、まだ緑の葉もあったというのに、今は全ての葉が色付き秋なのだと感じさせる。
戦国時代に来て数日が経とうとしているが、今では少しずつこの時代にも慣れ始めていた。
「幸村です、少しよろしいでしょうか」
「はい、どうぞ」
声をかけられ返事をすると、幸村が部屋へと入ってくる。
「どうかされたのですか?」
「あの、もしよろしければ、紅葉を一緒に見に行きませんか?」
「紅葉ですか!丁度紅葉を見たいと思っていたところなので是非お願いします」
戦国時代の紅葉も見てみたいと思っていたところだったのでお願いし、幸村と二人早速城の外へと出た。
するとそこには、信玄と佐助の姿があり、幸村も驚いた様子で二人の元へと歩み寄る。
「お館様、何故ここに!?それに佐助まで」
「幸村、我を差し置いて葉流と共に二人で紅葉を見に行くなど、我がほおっておくはずがないであろう」
「ッ、何処からその情報を!?」
「幸村様、何かあっては危険ですので俺も同行します」
「佐助、お前まで……」
幸村は残念そうに肩を落とすが、結局三人で紅葉を見に行くことになった。
だがその前に、三人が喧嘩を始めてしまいなかなか出発ができずにいた。
「葉流は我の馬に乗せると言っておるであろう」
「いえ、俺の馬に乗せますのでお館様は先頭をお願い致します」
「いや、そういったことは幸村様の家臣である俺の仕事です」
こんな調子でなかなか決まらず、結局信玄が強引に押し切り、葉流は信玄の馬に乗せてもらうこととなった。
馬に乗るのは初めてではないのだが、まだ慣れているわけではないため少し怖さを感じてしまう。
「馬が怖いのか?」
「はい、少し……」
「安心せよ、我と馬に乗っておるのだからな」
突然体を力強く抱き寄せられ、安心どころか更に鼓動が高鳴りだす。
「少し早くなるぞ」
「え?きゃッ!!」
馬に乗った途端、突然信玄は馬を走らせる。
後ろから幸村と佐助の声が聞こえた気がしたが、葉流は振り落とされないように掴るのに必死で、馬の速度が落ちたときにはすでに二人の姿は見えなくなっていた。
「武田さん、お二人が追いつけていないようですが」
「ああ、二人を撒くためにしたのだからな」
「え?」
「葉流と二人きりで紅葉を楽しみたかったのだ」
優しい微笑みを向けられ、近い距離に昨夜のことを思い出し頬に熱が宿る。
そんなことを思い出していると馬が止まり、信玄が馬から降りた。
「今日はお主に見せたい場所があってな。ここからは歩いて行くぞ」
見せたい場所とは何だろうと思いつつ差し出された手に掴まり馬から降りると、信玄は手を握ったまま歩き出す。
少し歩いたところで信玄の足が止まり、着いたぞと声が掛けられ顔を上げると、目に飛び込んできたのは鮮やかに色付く葉の姿だった。
二人を取り囲むように周りは秋の色に包まれており、その光景に葉流は言葉を失った。
「気に入ってもらえたようだな」
「はい!この様な素敵な場所に連れて来てくださりありがとうございます」
礼を伝え一礼すると、突然伸ばされた手に腕を掴まれ、そのまま抱き寄せられてしまう。
近い距離に顔が赤く染まるのが自分でもわかる。
「お主の顔も、この美しい紅葉のように色付いておるな」
二人の間にある距離は次第になくなり、唇が触れそうになったその時、声が聞こえ視線を向けると幸村と佐助の姿が見える。
「やっと見つけましたよお館様ッ!!」
「やっぱりここに来てやがったな。って、なにしてやがる!さっさとそいつから離れやがれッ!!」
こうして昨夜と同じく二人に助けられ、信玄はまた二人に邪魔をされたと残念そうにしている。
「お館様、勝手に行かれては困ります!!」
「お主らは本当に空気を読まぬな」
「だから読んでんだっつの!!」
そんないつもの光景に自然と頬が緩み笑みを浮かべる。
しばらくすると、日も暮れてきたので城へ戻りましょう、と言う幸村の言葉で空を見上げると、すでに空は周りの紅葉と同じように茜色に染まっている。
皆でお城へ帰る途中、葉流を誰の馬に乗せるかで再び喧嘩となったが、城へ戻ったときには疲れたのかぐっすりと眠ることができた。
そんな色々なことがあった1日が終わった翌日、今日は何をしようかと部屋で一人考えていると、部屋に幸村が朝食を届けに来てくれた。
「あの、もし貴女さえよろしければ、山へ一緒に山菜を採りに行きませんか?」
「山へ山菜を?」
「はい。秋は紅葉だけでなく食べる物でも感じることができますから」
「そうですね。是非御一緒させてください」
こうして幸村と共に城の近くにある山へと向かうことになったのだが、そのためには馬に乗らなければいけない。
「まだ馬には慣れませんか?」
「はい……」
「大丈夫ですよ、俺が貴女を守りますから」
さらっと言われた言葉に胸が高鳴るのを感じながら、馬の背に揺られ山へと向かう。
山へ着くと馬はその場に置き、そこからは歩いて山の奥へと入っていく。
「足場が悪いので、俺の手に掴まってください」
差し出された手に掴まり歩いていくと、薬草が至るところに生えており、二人は持ってきた籠に入れていく。
「あ、あそこにも、きゃッ!?」
「葉流ッ!!」
山菜を見つけ採ろうと、幸村の手を放したその時、土に足をとられ足を滑らせてしまった。
慌てて駆け寄ってきた幸村に、大丈夫ですよと言いながら立ち上がろうとするが、足に痛みが走り立つことができない。
そんな葉流の膝裏に幸村は手を差し込むと、軽々と姫抱きにする。
「ッ、大丈夫ですよ!一人で歩けますから」
「その足では歩くことはできないでしょう」
「でも……」
「大丈夫です。山菜も沢山採れましたし、貴女の足の手当てもしなければいけませんから、今日は城へ戻りましょう」
自分の不注意で怪我をし、幸村に迷惑をかけてしまったことを申し訳なく思いながら馬の背に揺られているとあることに気づく。
いつもより馬の速度がゆっくりであり、幸村が足に負担をかけないようにしてくれているのがわかる。
視線を上げれば、眉を寄せ、元気のない幸村の顔が瞳に映った。
それからなんとか日が暮れる前に城へとつき自室へ戻ると、幸村が手当てをしてくれたのだが、やはり幸村はどこか元気がない。
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