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第18話だぞ【デートの終わり】
しおりを挟む「貴様ら、全員かかってくるが良い。」
「はぁ……本当にバカな野郎なんだなお前。おら、お前ら、もう何も気にするな、あいつを撃ち殺せ。」
するとそこで、三人組は全員武器を我の方に向けた。
「えな、お前は後ろに下がっていろ。」
「……ッ!で、でも――」
「良いから、下がれ。」
「――は、はい……ッ!」
そうしてえなは後ろへと走って行く。
よし、これでひとまずえなは安全だな。
じゃあ、一瞬で終わらせようではないか。
「おい、どうしたのだ?我は知らんが貴様らが手に持ち、こちらへ向けて来ているのはこの世界の武器なのだろう?」
「……ッ!言われなくてもすぐ地獄に送ってやるよぉ、後ろの女も一緒になッ!」
パァンッ!!
三人組のひとりがそうセリフを吐いた瞬間、その男が我の方に向かって手に持つ武器から先程聞いた爆発音と共に何か鉄の塊の様な物を飛ばして来た。
なるほど、やはり手に持っていたのは弓の様な飛び道具か。まぁ、我からしてみればどちらも無意味でしかないが。
「ワールドクロック、プロイベーレ」
そこで我は魔力を使う。その瞬間、空の雲も、飛んで来ていた鉄の塊も、この場所から離れようと必死に遠くへ走っている人間も、まるで元から止まっていたかの様に動きを止めた。
これは元の世界でも我しか使う事の出来なかった時間を停止させる技、「ワールドクロック」だ。
――まぁ、だからと言ってレベルの高い相手だと魔力の流れで気付かれる事もあるから、頻繁に使う様な物でも無いが、今回の相手に関しては魔力の存在すら知らない人間。要するに、これを発動した時点で我の勝ちは決まったという訳だ。
そして、止まった時間の中でたったひとりだけ動ける我は更に畳み掛ける。
「タイムパラドックス」
ワールドクロックと同じく我のみが使う事の出来る――世界の仕組み、今起こっている事に干渉する力を持つタイムパラドックスを発動すると、「今我の方へ飛んで来ている鉄の塊が、我ではなく放った男の足へ飛んで行く。」様に世界を変更する様念じ、
「プロケード」
そこまでしたところで止まっていた時間を我は再び動かした。――すると次の瞬間、
「ぐあぁぁ!?」
鉄の塊を我の方に放った男が叫び声を上げ、そのまま地面に倒れ込んだ。
「お、おい……!?どうしたんだ!?」
「お前!?何かしたのか!!」
ふははは、やはり、混乱しているな。
だが、それもそのはずだ。我からしてみれば数秒前の話ではあるが、あの男たちからしたらいきなりの出来事なのだからな。
「なぁに、我は何も攻撃はしていない。そこの男が勝手に自滅をしただけだろう?ふはは、全く愚かな人間だ。」
「……ッ!?う、撃てッ!?」
すると、そんな我に対して恐怖感を抱いたのだろうか、先程までの余裕など全く無くなったリーダーはそう叫ぶと、残ったふたりは同時に我の方へ武器を向けて来た。
はぁ……まだやる気なのか。バカなのか?勝てないと分かっているだろう?
もう良い。やはり相手がただの人間だと面白くない。
もう、終わらせようか。
「電磁洗脳」
「な……!?うぅ……」「ぁあ……」
だから、そこで我は直接ふたりの脳へ魔力を飛ばすと、そのまま意識を保つ回路を止めた。
途端にプツリと電源が落ちたかの様に地面へと倒れ込む男たち。
「はぁ――えな、終わったぞ。警察(という名前で合っていただろうか?)を呼べ」
「――は、はい!!」
安全を確認すると、我は後ろを向いてえなにそう叫ぶ。それに対してえなは少し離れた場所で未だに身体をプルプルと震えさせながらもポケットからスマホを取り出し、おそらく警察を呼んでいるのだろう、必死に作業をしていた。
ふぅ……これで一旦終わりはしたが――えなは楽しめただろうか?
♦♦♦♦♦
「本当に、良いのか?」
「はい、流石について来てもらうのも悪いですし、」
「まぁ我は全然構わないが、えなが大丈夫ならついては行かん。」
それから警察が来るまで待ち、来たところで男たちを引き渡すと、その時にはもう空が暗くなり始めていたという事もあり、我とえなはそのまま帰る流れになった。
今は春丘テーマパークの入り口前まで来たところだ。
それにしても、まさかデートの日にあの様な人間と会ってしまうとは、我も中々についていないな。
そこでえなの服に目線を向ける。
きっとあの時、恐怖で地面に座り込んでいたからだろうか純白のワンピースが、地面の砂で所々汚れていた。
だが、そんな感情など感じさせない様にいつも通り接してくれているえな。
そんな姿を見ていると、あの男たちへの怒りと、申し訳なさが出てくる。
「……ッ」
が、そこでそんな暗い感情が顔に出ていたのか、
「魔王さん?大丈夫ですか?」
えなが心配そうな顔でこちらを下から覗き込んで来た。
「あ、あぁ!すまない!――今日はせっかくのデート。我もえなに楽しんで欲しかったのだが、こんな終わり方をしてしまって申し訳なくてな。」
「いえいえ!それは魔王さんのせいなんかじゃないと思いますよ?」
「あぁ、確かにそうだが、それでも――」
やはり申し訳ない。こんな事ならデートなんか――
「しなければ良かった。」そう口から出そうとした瞬間、えなは笑顔で、
「それに、あの時私を守ろうとしてくれた魔王さん、かっこよかったです。」
そう良い、そのまま顔を我の顔に近づけると、
チュ
頬にそう温かく、柔らかい感触が伝わって来た。――って、、ま、まさか今の……!?!?
「……ッ!?!?お、おいえな今のは一体なんだ!?」
ま、まさか、悠介さんが言っていたき、キスというものか……!?
いきなりの出来事に先程の申し訳なさなど一気に吹き飛び、取り乱す我。
しかし、対してえなは顔を真っ赤に染めると、
「か、勘違いしないで下さいねっ!?今のはその……今日守ってくれた事へのお礼なんですからっ!!」
身体をぶんぶんと振りながらそう言い、そのまま走って行ってしまった。
こうして、我とえなの初デートは幕を閉じたのだった。
(この後、悠介さんが迎えに来ず、ひとりで先程のキスの事を考えながら歩いて部屋まで帰ったのはまた別の話)
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