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第3章2部【ソルクユポ編】

第78話【出撃〜思わぬ助っ人〜】

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 それからしばらくしてミラボレアたちが冒険者を連れてベイユ競技場前の広場に戻って来ると、その冒険者たちにも作戦内容や役割を軽く説明し、とうとう俺たちは帝都ティルトルの入り口まで馬車で移動した。

「とうまちゃんたちぃ、忘れ物は無いかしらぁ?」
「あぁ、問題ない」「私もよ」「大丈夫だ!」「うん!」

 俺たちは御者の位置に座るミラボレアの問いかけに対してそう返すと、荷台の方へ歩いて行く。
 しかし、その寸前に俺は馬車よりも向こう――帝都ティルトルに向けて歩いて来ているふたりの姿を見て足を止めた。
 そしてすぐにこう叫ぶ。

「――って、オネメル!!それにヒルデベルトも!!」

 そう、なんと魔大陸へ出発する寸前に俺たちの前に姿わー見せたのは始まりの街ラペルで仲の良かったオネメルとヒルデベルトだったのだ。

 いや、マジでなんでこいつらがここに……!?
 数日前に今起きている事態と計画している作戦の事は手紙を送り伝えたが……来てくれなんて事は言ってねぇぞ?
 
 そりゃもちろんこいつらとはこの世界だと中々付き合いが長いから来てくれて嬉しいし、心強いんだが……急に現れたもんだから驚きが勝っている俺だ。

「ふぅ……やっと着いたわ。初めて中央大陸に足を踏み入れたけれど、中々に帝都ティルトルこの街浜辺から離れているのね」
「遅れてしまい、申し訳ないですな」
「いや、まぁ別に良いんだが……その……」

 すると、そこでそう未だに状況を理解出来ていない俺に対して、みさとは何かを思い出した様にこう言った。

「あ!そういえばとうまには言って無かったわね。実は一緒に書いた手紙とは別にもう1枚、作戦に参加してくれないかという旨の手紙を送っていたのよ。」
「そうだったのか……」

 いや、絶対それ忘れたらダメな事だろ……
 
「ま、まぁ良い。」

 ――だが、だからってこんな時に引きずるのも違うだろう。俺は咳払いひとつで心を落ち着かせると、簡易的にふたりに今回の作戦の軽い説明をした。(ちなみにだがオネメルとヒルデベルトは街を守側に回ってもらう)

「大体分かったか?すまんなこんな簡易的な説明で。俺たちこれから魔大陸に行くところだったからよ。」
「いやいや、十分理解出来たわ。」
「要するに、我々はこの大陸に来たモンスターを全て倒せば良い。という事ですな?」
「あぁ、そうだ」
 
 ---
 
「じゃあ、頼むぞ」

 ふたりに作戦を理解してもらった後、俺以外のメンバー全員が荷台に乗り終わると、最後に俺も乗り込み、そう声を掛ける。

「えぇ、任せなさい!ラペル屈指の冒険者の力、見せつけてやるわ!」
「とうま殿たちもどうかお気を付けて」
「あぁ!」
「じゃあぁ、馬車を動かすわねぇ」
「頼む!」
「っしゃあ!いっちょ暴れたるでぇ!」

 こうして俺たちは魔大陸に向かい、馬車を動かし始めた。

 ---

 それから数十分後、俺たちはミラボレアの氷結の道フリーズ・ザ・ロードで凍った海を馬車で渡り、そろそろ魔大陸に着くだろうかという時。それは突如として見えた。

「お、おい!?ちょいお前ら!あれ見てみい!!」
「ん?なんだよ。」

 はぁ……さっきからずっと目を瞑って集中力を高めてたってのに、なんだ?
 目を開け、荷台の窓から必死の表情で指を突き出すレザリオのセリフにそう返すと、俺も反対側の窓から顔を出し、魔大陸の方を見る。

 すると、なんとそこには何体もの小さな羽の生えたモンスターが飛んでいる姿があった。って……!?

「お、おいなんだよあいつら!!」

 いや、分かってるさ。エイブ・シュタイナーは今日魔大陸で漆黒龍ブラックドラゴンを召喚すると言っていた、そりゃその計画を簡単に邪魔される訳には行かないからモンスターくらい他にも召喚させるよな。

 だから、空を飛んでいるモンスターに驚いているのではなく、何故いきなり姿が現れたのかに驚いていた。

 すると、そこで御者の位置に座り、馬車を動かしているミラボレアがこう言う。

「まさかぁ……魔大陸全域を覆う様に迷彩魔法カモフラージュを……?これはやられたわねぇ」

 声の明るさこそいつもと変わらないおっとりとした物だったが、顔を見なくても分かる程に焦っているのが分かった。

 「迷彩魔法カモフラージュってどういう事だよ!おいスザク!一体今何が起きてるんだ!?」

 ミラボレアの焦りに、怖くなってきた俺はすぐさまスザクにそう言う。
 ってか俺、事ある度にスザク頼りだな……凄く申し訳ないが……今はそんな事言ってる場合じゃない!

 すると、そんな俺に対してスザクは「もしミラボレアが言っている通りなら」そう前提を出してから今の状況を説明してくれた。

 まず、迷彩魔法カモフラージュというのは名前の通り発動している一帯を外から見えなくする魔法らしい。
 この魔法自体は、スザクが言うにはそこまで珍しいものでは無いと。

 しかし、ミラボレアの氷結の道フリーズ・ザ・ロード同様にここまでの広範囲にずっとそれを持続させるなんて出来るのはそれこそ上級冒険者並。
 要するに――――

「おそらく、相手には最低ひとり、ミラボレアに匹敵する魔法使いが居る。」
「マジかよ……」
「しかも、今の状況のヤバさはそれだけでは無い。とうま、よく考えてみろ。今魔大陸には誰が居る?」

 魔大陸には誰が居る?いや、なんだよ急に。ここに来てナゾナゾか?
 だが、こんな時に冗談を言うタイプでは無い、スザクは。

「そんなのソルクユポのやつらと魔族――って……!?」
「やっと気付いたか。そう、魔大陸にはソルクユポを監視している魔族たちが居る。なのに、なんで今もああやって空をモンスターが飛んでいるんだ?魔族あいつらは魔法が使える。遠距離攻撃が出来ないという訳では無いんだぞ?」
「まさか……全滅……?」
「それは最悪のパターンだ。まぁどちらにせよ、今の状況としてはかなり厳しいだろうな。」

 くそ……こんな事になるならもっと急いで来ていたのに……だから、遠くからはまだ何も起こっていない様に見せる為、迷彩魔法カモフラージュを張っていたという事か……くそ、ソルクユポの奴らめ……!

「ミラボレア、急いでくれ!!」
「分かってるわぁ」

 魔族のみんな……どうか持ち堪えて居てくれ……!
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