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第3章2部【ソルクユポ編】
第69話【目指すは〜不気味な魔大陸〜】
しおりを挟む今回、再びチュロント森に現れた季節外れの変異種モンスターと、その隣に立っていたと言われる謎の人物。
そんな謎を暴く為、俺たちは今のところ1番怪しそうな「ソルクユポ」の本拠地がある大陸、「魔大陸」に行く事になった。
「――で、ここまでは順調に来れたが一体こっからどうやってこの海を渡るんだ?」
スザクとミラボレアに馬車を用意して貰い、そこに俺たちパーティーメンバー全4人と、プラスでレザリオの計7人で帝都ティルトルを出発してから約2時間。
ようやくこのぎゅうぎゅうな馬車が浜辺に到着したところで俺は御者の役割をしているミラボレアに荷台からそう尋ねる。
まさかここに来て「忘れてた」とかはねぇよな……?
マジで片道の約2時間、後ろの荷台に6人も乗ってたからめちゃくちゃしんどかったんだぞ?まぁ女の子達に挟まれる気分は悪くなかったが。
だが、周りを見渡してもやはり船やボートの様な物は無い。
おいおい、本当にどうする気だ……?
――しかし、今思えばこの時俺はミラボレアを、そしてこの世界を甘く見ていた。
ここは前の科学で成り立っている世界では無く、魔法で成り立っている世界。
だから当然、海を渡るくらいの魔法、無いはずが無いのだ。
「ふっ……」
そこでミラボレアは俺の質問に対してそう吹いた。
そして次の瞬間――
「氷結の道」
ミラボレアの唱えた呪文により、一瞬で目の前の海面が凍りだし、うっすらと見える魔大陸まで一直線の氷の道を作ったのだ。って、
「す、すげぇぇ!!」
「おいおい……そんなに驚く事か……?」
「いや、あれは凄いだろ!スザクは何度も見てるのかも知れないが、俺は初めてなんだぜ?」
「じゃあぁ、道も出来た事だし進むわねぇ。」
「っしゃ!レッツゴーだお前ら!」
「「レッツゴー!」」「レッツゴーやでぇ!」
「はぁ……呑気な奴らだ。」
こうして俺たちはミラボレアの作った氷の道を通り、魔大陸へと向かった。
---
そしてそこから約30分後、俺たちは無事、魔大陸へと上陸をした。
途中で氷の道が砕けるかもなんて思ったりもしたが、全然余裕だったな。
すると、大陸に着くなりミラボレアは地面に降りた。
それを見てスザク、レザリオも荷台から降りて行く――ってあれ?まだ大陸に上陸しただけで目的地にも着いてないんじゃないか?
って、実際のところ俺たちは未だに今目指してる場所も分かんねぇしよ。いきなりソルクユポの本拠地って訳でも無さそうだし。
全く、無計画な連中である。
でもまぁ良いか、確かにこの大陸は見た感じ地面もボコボコで上手く進めそうも無いしな、ミラボレアが馬車で進むのは危ないと判断したんだろう。
「よし、じゃあ俺たちも降りるぞ」
「えぇ」「おう」「うん」
そうして俺たちも荷台から降りると、もう既に歩き始めている3人を小走りで追い掛けた。
---
それから俺たちは魔大陸の内陸を目指し歩いているとすぐに森へ入った訳だが――これがまた雰囲気最悪だった。
まず、もちろん地面は整備などされておらず、歩く道は道かもどうか怪しいけもの道。
そして周りも草木が生い茂り、曇った空も相まって今が夜と言われても疑わないくらいの暗さだ。
なんかこの感じ、前にエルフ族の元へお姉さんやエスタリと一緒に通ったオリアラの森を思い出すな。
「……ッ!」
と、するとそこで俺は周りに古い石の建造物がある事に気付いた。
辺りを見渡してみるとどうやらひとつだけでは無い様で、ところどころにポツポツとある。
全て壁が壊れていたり屋根が崩れていたりしているが、しっかり人が住んでいた雰囲気はしていた。
まさか……これもソルクユポの……?
そこで俺は初めて無言で時々周りを見渡しながら先へ進むスザクに、今どこへ向かっているのかを尋ねた。
「お、おい。一体今俺たちはどこに向かってるんだ?いきなりソルクユポの本拠地って訳じゃないだろうし……」
それに、仮にソルクユポの本拠地だったとしてもなんで知ってるんだよってなるしな。
するとそこでスザクは足を止める事無く、軽い感じにこう言った。
「魔王のいる場所――魔王城だ。」
---
「って、、、」
ま、ま、魔王……だ、と……?
いや、聞き間違えじゃ無いよな?むしろ聞き間違えであって欲しいが。
魔王ってあれだろ?ゲームのラスボスとかで良く出てくるあの悪魔みたいなやつだろ?
確かにこの大陸の名前は魔大陸だし、一瞬まさか?とは思ったがまさか本当にそうなんて思わないって!
しかし、そんな明らかに焦る俺と、同様にガタガタと震え出したみさと、ちなつ、くるみに対してスザクは、
「どうした?魔王が怖いか?」
「いや、怖いに決まってるだろうが!!」
「そうか?俺の認識では魔王は魔族のトップに君臨する魔法のスペシャリストで、魔大陸に住んでいるソルクユポなどの人間とも普通に共存しているイメージなのだが。」
「きょ、共存……?魔王って、村に火を撒いたりとか、お姫様を攫ったりとか――そんなやつじゃないのか?」
「あぁ、少なくともお前ら以外の俺、ミラボレア、レザリオはそんな認識ではないな。」
そしてスザク曰く、今はだいぶ昔に魔大陸に足を運んだ冒険者が書いた地図の内容を元に、魔族たちの住んでいる魔王城に向かっているんだと。
するとそこでスザクは足を止めると、森の向こうを指さし、こう言う。
「――お、話をしていたら見えて来たな。あれが魔王城だと思う。」
「って、」
「「!?」」
そこには、ツタやコケなどに覆われた巨大な石の城があった。
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