上 下
45 / 88
第2章1部【中央大陸編】

第43話【世紀すら破壊する大剣〜レザリオThe・ストーリー〜】

しおりを挟む

「え?なんでだ?レザリオはこの街でも最強と謳われてるんだろ?」

 もしくはアンテズ村の村人が言っていた事は間違っていたのか?
 しかし、スザクは「そうの通り。レザリオはこの街で1番強い」そう言う。

「じゃあどういう事なんだよ。」
「ん?お前らレザリオのことをよく知らないのか?」
「え?それってどういうこと?」
「みさとも分かってないって事はやっぱりお前ら全員レザリオの力の事を知らないんだな。」

「ん?ちょっと待ってくれ。まさかなにかあるのか?」
「あぁ、まあな。よし!じゃあ話してやるよ。全然暗い話でも無いから気は抜いとけ」
「そうなのか、分かった。」

 そうしてスザクは、レザリオがなぜ最強と謳われているにも関わらず、帝都ティルトル剣術祭に出ても優勝出来ないと言い切れた理由を話し始めた。


 その昔(と言っても数年前だが)この街に荒くれ者の冒険者が居たそうだ。
 
 その冒険者はいつもひとりで口も悪く、モンスターをその驚異的な力で吹き飛ばしていた事から、付いたあだ名は「狂乱の戦士バーサーカー
 しかし、そんな彼もひとつの悩みを抱えていた。
 それは、その力が自分でも制御出来なくなっている事。

 いつも荒れている彼ではあったが、それは日に日に酷くなっていた。
 そんな時、彼はひとりの魔術師にある依頼をした。

 それは「この力を制御する方法は無いのか」
 すると魔術師はこう言った、「ひとつだけ方法がある」と。
 その方法は、「身体の中に眠る魔力を全てひとつの武器に封印する」というもの。

 そうすれば、普段は全く力を使えなくなるが、その武器を使っている時だけは封印した魔力を解き放つ事が出来ると。

 そして彼はその提案を快諾。自身がずっと使っていた大剣を「世紀すら破壊する大剣センチュリーブレイカー」と名ずけ、その魔力を全て武器へと封印した。

 ――これが彼、レザリオ・ベルーガの過去だった。

「じゃあ今のあいつは――」
「元々あった魔力が抜けた状態だな。そのせいか、普段はあんな風に口調もおかしくなったんだ。」
「なるほどね」「そんな過去があったんだな」「だねー」

 って事は、あの背中に背負った大剣を抜けばあいつは――
 俺は向こうで酒を飲みながら陽気に踊っているレザリオを見る。

 確かに、この話を聞いた後なら俺たちの武器を届けに来た時も大剣を背負っていた理由もよく分かるな。
 だってその武器が無いといざという時に力を出すことが出来ないから。

「――だから、当然いつも使っている武器では無く、その形をした木刀で戦う帝都ティルトル剣術祭ではあいつの真の力を発揮する事は出来ないって訳だ。」
「って事は今のあいつなら俺でも倒せるって訳か?」

 俺は興味本位でそんな事を聞いてみる。
 いや、そりゃ本気でそんなことをする気は微塵も無いが、なんか気になるじゃん?

 するとそれを聞いたスザクはしばらく腕を組んで考えた後――笑いながらそう答えた。

「どうだろうな」
「おい、俺はそんなに弱く見えるかよ」
「いや、そういう事じゃなくてな、あいつは魔力を全て封印したが、生まれつき持っている身体能力は変わらない訳だからある程度は強いんだよ」
「なるほどなー」

 いや、だとしても流石に勝てると思うんだけどなぁ。
 最近中級上位まで上がったし、少し自信が湧いてきている俺である。

 するとそこで、酒を飲み終えたのかレザリオが少しフラフラしながらこっちへ戻って来た。

「ただいまぁ~ってお前ら、さっきからワイの事をチラチラ見てたみたいやが、なんの話してたんや?」
「なんでもねぇよ」
「なんやねんそれ」

 こうして俺たちは、レザリオの過去を知ったのだった。

 ---

 それから俺たちはしばらくラペルでの事や依頼の事などで会話を楽しんでいると――受け付けのお姉さんが突然大声を出した。

「皆さん、帝都ティルトル剣術祭のトーナメント表が決まりましたので、クエストボードに記載します。」

「おお、やっと来たか」
「今回はぁ、どんな子たちと競うのかしらぁ?」
「マジでもう決まったのか?」
「そうみたいやで」

 確かにさっき、参加登録の受け付けを終了したとか何とか言ってたが、まさかこんなに早く決まるとはな。
 ――まぁ確かに、明後日が本番の日ならこのくらいの速度じゃないとダメなのかも知れないが。

 ――とにかく、決まったなら見に行く他無いだろう。

「よし!じゃあ見るか!」
「そうね」「だな!」「うん!」

 俺たちは席から立ち上がると、軽い人集りの出来ているクエストボードの前まで歩いて行く。
 そして、人をかき分けてトーナメント表の目の前まで移動した。

「って、やっぱり今回も参加人数は少なかったんだな」
「どれどれ――って、本当ね。」
「8人か?」
「だな」

 てっきり俺は何枚にも分けられているのかと思っていたが、やはり参加人数は少なく、俺、みさと、ちなつ、スザクを含んだ8人だった。(くるみの出場する魔法の部の方も8人だったぜ)

 そして、肝心なトーナメント表の内容なのだが――
 なんと!俺たち4人は運良く1回戦目では誰も当たっていなかった。
 ――これ、どんな確率だよ。

 上から、〇〇VSスザク、〇〇VSみさと、〇〇VSちなつ、〇〇VS俺。
 だから、仮に全員勝ち上がれば、2回戦目はスザクVSみさと、ちなつVS俺って事になる。
 今の説明、分かっただろうか?
 (魔法の部の方も、ミラボレアとくるみは離れていて、どちらも勝ち進めば決勝で当たる位置だ。)

「――このトーナメント表、中々すげぇな」
「おぉ!私ととうまが互いに勝ち進めば当たるのか……!」

 すると、そこで後ろから声が掛かる。
 スザクの声だ、きっと遅れてトーナメント表を見に来たのだろう。

「おーい、どうだ?」
「スザク!すげぇぞ!」

 だから俺は、そこでトーナメント表の内容をスザクに口頭で説明した。

「――どうだ?」
「確かに凄いな。ここまで初戦で当たらないのは中々無いぞ」
「でしょうね、私も初めて見たもの」


 それから、トーナメント表を見終わった俺たちは他の冒険者の邪魔になるからとクエストボードから離れ、冒険者ギルドの入り口前で集まった。

「よし、じゃあトーナメント表も見た事だし、今日明日はゆっくり過ごせ。お前らは別に出稼ぎに来た訳じゃ無いんだからな」
「あぁ、そうするぜ。良いよなお前ら?」
「えぇ、良く考えれば冒険者を初めてから全然休んで無かったものね」
「だな、私も良いぜ」「私も良いよ」

 よし、じゃあ決まりだな。
 っと、そこでレザリオが俺たちにこう聞いてきた。

「なぁ、そういえばお前ら、冒険者になる前は何してたんや?」
「えっ……!?」
「ちょ、ちょっととうま!」

 しまった!今日に転生前関係の事を聞かれたもんだからバリバリに動揺してしまったッ!

「ん?どうしたんや?」

 どうする……どうする俺。
 というか、なんで俺たちは転生した事を隠しているのだろう。
 いっそこの機会に言ってみても良いのかもしれない。

「実は俺……前の世界でヒキニートしてたんだ――――」
 ってんな事言えるかァァァァァァ!!

「そ、そんな事よりもよッ!なぁスザク!お前は今「お前らは出稼ぎに来た訳じゃ無いんだから」って言ったが、出稼ぎに来る奴らもいたりするのか?」
「お、おう。いるぜ……?」

 ふぅ……何とか転生バレは回避出来たのだろうか……?
 レザリオは自分の質問を濁されて頬を膨らませてご機嫌ななめな顔になっているが、まぁ良いだろう。

 しかし、そこで、俺が話題を変える為にした「出稼ぎに来る奴らもいるのか」と言う問いに対してミラボレアから懐かしい言葉が飛んで来た。

「いるわよぉ。有名な子で言ったら、ボロスウェル夫妻、とかねぇ。」
「あぁ、あの2人か。魔法を色んな人に教えて回ってるんだよな――確かお前らが来た大陸と出身は同じじゃ無かったか?」

 いや――同じも何も、どれだけ聞いた名前だと思ってるんだ。
 ボロスウェル一家。忘れてるやつの為に軽くおさらいしておくと、俺たちがラペルで泊まらせて貰っていた家。それがボロスウェルの家だ。

 だから今ミラボレアとスザクが言った夫妻ってのはウェーナの両親って訳だな。

「おぉ、有名なのかその2人は?」
「あぁ、まさか知ってるのか?」
「まぁな。実は俺たち、あっちラペルに居る時はボロスウェル一家に住ませてもらってたんだよ」
「おぉ!そうなのか。」
「お前らえらい変わりもんやな。」
「「お前にだけは言われたくねぇ!」」

 こうして、何だかんだ中央大陸での毎日が過ぎて行った。
 エスタリたちは元気にやっているのだろうか?
 さぁ、2日後は帝都ティルトル剣術祭だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

レイヴン・ヴィランは陰で生きたい~低レアキャラ達を仲間にしたはずなのに、絶望を回避してたらいつのまにか最強に育ってた、目立つな~

嵐山紙切
ファンタジー
死にたくない!そんな人なんか助けてない!僕なにもしてない!(した)  人間不信、被害妄想、疑心暗鬼のネガティヴ役満で、自分に向けられた憧れの眼差しすら軽蔑のそれであると勘違いしてしまう主人公は、ある日、ゲームの世界へと転生してしまう。  悪役貴族として。  このままではゲーム主人公や【聖女】によって処刑されてしまうと知った彼は、目立たず隅の方で生きようと決意。ゲームで低レアキャラだった子たちを仲間にすれば目立たず細々と暮らせると考えたが……。  持ち前の被害妄想で受けてもいない攻撃にまで過剰に対処しはじめ、明らかに余計な他人の罪をあぶりだして、死ぬはずだったキャラクターを救い、ストーリーをめちゃくちゃにする。  そんなことをしていたら、なぜか低レアキャラだったはずの仲間たちが最強に育ってしまって……。 「僕、何もしてないのに!」(いろいろした) 「目立つな!」(お前のせいだが)  今日も彼は被害妄想を爆発させながら、あらゆる人に勘違いをもたらす。 ※タイトル調整中です。「小説家になろう」「カクヨム」にも投稿しています。

貴族に転生してユニークスキル【迷宮】を獲得した俺は、次の人生こそ誰よりも幸せになることを目指す

名無し
ファンタジー
両親に愛されなかったことの不満を抱えながら交通事故で亡くなった主人公。気が付いたとき、彼は貴族の長男ルーフ・ベルシュタインとして転生しており、家族から愛されて育っていた。ルーフはこの幸せを手放したくなくて、前世で両親を憎んで自堕落な生き方をしてきたことを悔い改め、この異世界では後悔しないように高みを目指して生きようと誓うのだった。

無能を装って廃嫡された最強賢者は新生活を満喫したい!

えながゆうき
ファンタジー
 五歳のときに妖精と出会った少年は、彼女から自分の置かれている立場が危ういことを告げられた。  このままではお母様と同じように殺されてしまう。  自分の行く末に絶望した少年に、妖精は一つの策を授けた。それは少年が持っている「子爵家の嫡男」という立場を捨てること。  その日から、少年はひそかに妖精から魔法を教えてもらいながら無能者を演じ続けた。  それから十年後、予定通りに廃嫡された少年は自分の夢に向かって歩き出す。  膨大な魔力を内包する少年は、妖精に教えてもらった、古い時代の魔法を武器に冒険者として生計を立てることにした。  だがしかし、魔法の知識はあっても、一般常識については乏しい二人。やや常識外れな魔法を使いながらも、周囲の人たちの支えによって名を上げていく。  そして彼らは「かつてこの世界で起こった危機」について知ることになる。それが少年の夢につながっているとは知らずに……。

エロゲーの悪役に転生した俺、なぜか正ヒロインに溺愛されてしまった件。そのヒロインがヤンデレストーカー化したんだが⁉

菊池 快晴
ファンタジー
入学式当日、学園の表札を見た瞬間、前世の記憶を取り戻した藤堂充《とうどうみつる》。 自分が好きだったゲームの中に転生していたことに気づくが、それも自身は超がつくほどの悪役だった。 さらに主人公とヒロインが初めて出会うイベントも無自覚に壊してしまう。 その後、破滅を回避しようと奮闘するが、その結果、ヒロインから溺愛されてしまうことに。 更にはモブ、先生、妹、校長先生!? ヤンデレ正ヒロインストーカー、不良ヤンキーギャル、限界女子オタク、個性あるキャラクターが登場。 これは悪役としてゲーム世界に転生した俺が、前世の知識と経験を生かして破滅の運命を回避し、幸せな青春を送る為に奮闘する物語である。

孤児による孤児のための孤児院経営!!! 異世界に転生したけど能力がわかりませんでした

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はフィル 異世界に転生できたんだけど何も能力がないと思っていて7歳まで路上で暮らしてた なぜか両親の記憶がなくて何とか生きてきたけど、とうとう能力についてわかることになった 孤児として暮らしていたため孤児の苦しみがわかったので孤児院を作ることから始めます さあ、チートの時間だ

異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。

星の国のマジシャン
ファンタジー
 引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。  そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。  本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。  この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!

異世界をスキルブックと共に生きていく

大森 万丈
ファンタジー
神様に頼まれてユニークスキル「スキルブック」と「神の幸運」を持ち異世界に転移したのだが転移した先は海辺だった。見渡しても海と森しかない。「最初からサバイバルなんて難易度高すぎだろ・・今着てる服以外何も持ってないし絶対幸運働いてないよこれ、これからどうしよう・・・」これは地球で平凡に暮らしていた佐藤 健吾が死後神様の依頼により異世界に転生し神より授かったユニークスキル「スキルブック」を駆使し、仲間を増やしながら気ままに異世界で暮らしていく話です。神様に貰った幸運は相変わらず仕事をしません。のんびり書いていきます。読んで頂けると幸いです。

NTRエロゲの世界に転移した俺、ヒロインの好感度は限界突破。レベルアップ出来ない俺はスキルを取得して無双する。~お前らNTRを狙いすぎだろ~

ぐうのすけ
ファンタジー
高校生で18才の【黒野 速人】はクラス転移で異世界に召喚される。 城に召喚され、ステータス確認で他の者はレア固有スキルを持つ中、速人の固有スキルは呪い扱いされ城を追い出された。 速人は気づく。 この世界、俺がやっていたエロゲ、プリンセストラップダンジョン学園・NTRと同じ世界だ! この世界の攻略法を俺は知っている! そして自分のステータスを見て気づく。 そうか、俺の固有スキルは大器晩成型の強スキルだ! こうして速人は徐々に頭角を現し、ハーレムと大きな地位を築いていく。 一方速人を追放したクラスメートの勇者源氏朝陽はゲームの仕様を知らず、徐々に成長が止まり、落ちぶれていく。 そしてクラス1の美人【姫野 姫】にも逃げられ更に追い込まれる。 順調に強くなっていく中速人は気づく。 俺達が転移した事でゲームの歴史が変わっていく。 更にゲームオーバーを回避するためにヒロインを助けた事でヒロインの好感度が限界突破していく。 強くなり、ヒロインを救いつつ成り上がっていくお話。 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』 カクヨムとアルファポリス同時掲載。

処理中です...