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第50話【罪悪感】
しおりを挟む「簡単だ。明日何者かに殺されかける寸前に小生がハヤトを時間逆行させれば良い。」
「……ッ!!」
マーニのセリフに俺は衝撃を受け、何も言う事が出来なかった。
い、いや……確かにマーニの言っている事自体は理にかなっている。でも、普通そんな事思い付くか……?俺にとっちゃ良いかもしれないが……
「た、確かにいい案だというのは分かる。だが、マーニからしてそれは良いことになるのか?だって俺が殺される瞬間に時間逆行させるイコール、その場所にお前も居合わせる事になるんだぞ……?」
「あぁ。そんなの分かっている。それに、今小生はその時そこにケティやセリエラも居てもらおうと思っていたのだが?」
「な、なんでだよ……!?そんな危険な場所にわざわざ――」
俺はそうマーニの案に流石に反対する。が、対してマーニは淡々と、
「危険な場所?小生がケティやセリエラの立場ならば、後からそれを知る方がよっぽど嫌だがな。同じパーティーの仲間なのだろ?デスティニーレコードの存在自体は言わない方が良いかもしれんが、こういう時に協力してもらう方が良いだろう。」
「人数がいれば、もしかするとハヤトのその『死』という未来を変えることが出来るかもしれんしな。」
「……ッ、!!……未来は、そう簡単には変わらない。俺はそれを知ってるんだ。」
「……ッ、やけに説得力のあるセリフだな。まぁ良いが、それでもケティやセリエラには明日一緒に居てもらおう。それは良いだろ?」
「あぁ、確かに、俺もあいつらの立場になってみれば頼りにされない方が嫌だしな。」
「決まりだな。」
こうしてこの日は終わった。
――そして翌日の5月12日。
俺はいつも通りの時間に冒険者ギルドへ行くと、依頼を受ける気満々のケティとセリエラを「今日は家の横にある空き地でマーニに実力を見てもらう」というていで何とか2人を説得した。
「――ねぇ、それにしてもさぁ?なんでいきなり今日マーニちゃんに実力を見てもらうことになったの?」
なんとか納得してもらい、家に行くまでの行き道にケティからそう質問される。
「じ、実はな、昨日依頼が終わった後にマーニと会ったんだが、今の俺たちの実力がどんなものか確認したいって言ってきたんだよ。」
「いきなり?そんな事言うかな~?だってまずマーニちゃん自体実力が――」
「ケティ、それは言わないお約束だ。」
「おほん、まぁとにかく。つい最近イザベルの事もあったんだし、マーニなりに心配してくれているんじゃないのか?」
ちなみに、あれから2日が経ったがレイバーは多分今日もギルドには行かないだろうな。というか、当分戦いに顔を出すことは無いだろう。
昨日マーニの泊まっている宿を後にしたあと、レイバーの家にもチラッと顔を出したのだが、以前のレイバーの姿はどこに行ってしまったのだというレベルで落ちぶれており、事ある毎に「俺がイザベルを」そう言っていたからな。
そんな姿を見て、余計に自分がどれだけ重大なミスを犯してしまったのか、そしてどれだけ無力なのかという事を痛感した。
だからこそ、当然今日死ぬ訳にはいかないのだ。
「う~ん、……イザベルちゃんの事を出されたらもう断れないじゃん。そうだね。私たちはもっと強くなって、悲しい事が起こらないように頑張らないと。」
「……そうですね。」
すると、俺はそこでセリエラがいつもより元気が無い事に気が付いた。
そういえばセリエラ、昨日も元気無かったよな。
「大丈夫か?セリエラ。少し体調悪いか?」
「……ッ、いえ、大丈夫です。ですが、レイバーさんの事を思うと……すごく心苦しくなってしまって、」
「……ッ!!……そう、だよな、」
そのセリフを聞くと同時に自分の心臓がギュッと締め付けられた様な感覚に陥る。
あの時、俺がミスを犯さなければ……
もう何度もそう思い(しかたない)そうして何度も自分を励まし忘れようとしてきたはずなのに、また考えてしまう。
「でもなセリエラ。だからって止まることなんて出来ない。あいつらの想いも含めて俺たちが頑張るんだ。」
そして、それなのにそんな無責任なセリフを吐いてしまう自分が更に嫌になる。
「そう、ですね。ありがとうございます。ハヤトさん。」
「あぁっ!!」
俺はいつもの様に親指を立てながら笑う。
だが、心の中では(俺なんかに言うセリフじゃねぇよ、セリエラ)ずっとそう呟き続けていた。
♦♦♦♦♦
「お、来たかお前ら」
「おはよ~マーニちゃん。」
「おはようございます。」
それから家に着き、中に入るとまるで住人の様な出で立ちのマーニが俺たちを中に招き入れた。
おいおい……この家は俺のだぞ……
「よしっ!じゃあ早速マーニちゃんっ!私たちの実力を見てよ!!」
すると、そこですぐにケティはそう言い始めた。
「す、少し早くないか……?」
「早い?だってさ、早く見てもらって早く終われば、依頼も受けれるかもじゃん?」
「ま、まぁそうかもしれんが……」
俺はあからさまにそう乗り気では無いという雰囲気を醸し出す。
そう、実は昨日マーニと話し合っていた時「俺に降りかかる『死』がどの様な物かが分からないから、なにかが起きてもすぐ反応出来る様に家の中に居るようにしよう。」という結論に至っていたのだ。
要するに、今ここでもう移動するのは危険な可能性がある。という事である。
(どうする……?)
俺はそう頭を働かせるが――その時、先程から無口だったセリエラが口を開いた。
「待って下さい皆さん。私たちの元へ今大人数の人間が迫って来ています。」
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