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第49話【翌日の相談】
しおりを挟む翌日の5月11日。
いつも通りケティ、セリエラと共に依頼を終えると、その後すぐにマーニの泊まっている宿へ向かった。
マーニの泊まっている宿の部屋番号を予め聞いていた俺は扉をノックすると中からおそらく今まで寝ていたのであろう寝癖の付いたマーニが出てくる。
「なんだ?――って、ハヤトか。」
「あぁ、いきなりすまんな。実は言いたい事があって。」
出てきた時は少し不機嫌そうな表情をしていたマーニも、俺の「言いたい事がある」というセリフを聞くとすぐに真剣な表情になり「入ってくれ」そう中へ招いてくれた。
――と、中へ入ったのは良いが、
「……お、おい、流石に汚すぎないか……?」
「しょ、しょうがないだろ!!サンボイルから急いで色々な荷物を持ってきたんだ!!まだ片付けられていないんだって!!」
「まぁ良いが、」
てっきりマーニ、サンボイルの家も綺麗だったから結構綺麗好きなのかと思っていたが――意外だな。
「で?話したい事ってのはなんだ?」
「あぁ」
そう、話したい内容は昨日寝る前に見たデスティニーレコードに新たに記された、5月12日:死。という文章の事だった。
しかし、正直この事を自分以外の人間に話すかどうかは寸前まで迷っていた。
なぜなら、これがデスティニーレコード絡みの事だからだ。
もう知っているとは思うが、ケティにもセリエラにもデスティニーレコードに記された文章は見えない。
だから、この事は正直他の人に言っても信じられないだろう。
――だが、人を過去へ飛ばす特殊能力を持ち、俺の親戚だと言うマーニなら、1番力になってくれるかも知れない。
だから、最初に話す相手はマーニに決めたという訳だな。
「実はな、ずっと隠していたんだが、俺はデスティニーレコードという名前の本を持っているんだ。」
「デスティニーレコード?」
聞いた事の無い言葉を聞いたのであろうマーニは腕を組むと首を傾げる。
「あぁ。簡単に言えば未来に起きる出来事が記される本だ。」
さぁ……マーニはどんな反応をするんだ……?やっぱり「何言ってるんだ」と一蹴されるか、それとも――
しかし、なんとマーニの反応は驚く程に薄い物だった。
「なるほど。要するにそのデスティニーレコードに、中々まずい未来が記されたって訳だな?」
「あぁ。――――って、え……?」
「ん?どうした?違うのか?」
「い、いや、その通りだが、そんなに簡単に信じる物か?普通。」
すると、対してマーニは「う~ん、」少しそう考えてから、
「まぁ、ケティやセリエラ辺りなら流石に信じないとは思うが、小生には人を過去に飛ばすという特殊能力があるしな、それがありながら他人のそういう物を信じないのはイコールで小生の特殊能力をも否定している気になってしまうんだ。」
「なるほど……とにかく、信じてくれるなら話は早い。」
「うむ、で?そのデスティニーレコードとやらは今あるのか?」
「えっ?ま、まぁ一応持って来てはいるが……」
そうして俺は予め持ってきていたデスティニーレコードをバックから取り出す。
すると、すぐにマーニはそれを取るとページを開いた。
って、まぁ、それをしても俺以外には見えないししょうがないだろうが――
「本当だな。『5月12日:死』そう書いてある。」
「って、えぇっ!?!?ちょ、ちょっと待て、読めるのか……?」
「?あぁ。というか、ハヤトは小生をバカにしているだろ。いくら身長が低くたって文字は読めるぞ。」
「いや、そういう事じゃなくてな……ケティにもセリエラにも、デスティニーレコードに記された文章は読めなかったんだよ。だから今までこの事を誰にも言わなかったって訳でもあるんだが。」
なんでマーニは読めるんだ……?本当にさっきから頭の中がぐちゃぐちゃだぞ。
「まぁ、それに関しては小生もなんで読めるかは分からんが、とりあえずは良いだろう。どの道読めないよりは良いだろ?」
「……まぁな。」
「――で、だ。この『死』ってのは誰を指しているんだ?」
「多分、名前が書かれていないんだし、やっぱりこの本の持ち主である俺なんじゃないか?」
「まぁ、そうなるか。」
「で、要するにこれからどうすれば良いかを小生に相談しに来た。という訳だな。」
「あぁ」
すると、マーニは腕を組むと再び考え始める。
「……なぁマーニ、やっぱり時間逆行を使った方が良いよな……?それなら今すぐにでもお前の力で――」
「いや、それはダメだ。」
……え?なんでだ?
「なんでだよ……?まさかこのまま俺に死ねと言う気じゃないだろうな?」
「違うに決まっているだろう。考えてみろハヤト。今過去へ戻ればお前は自分を誰が殺すのかが分からない状態のままなんだぞ?それだときっと一度過去へ戻ったところで同じ道を辿る事になるな。」
「それに、そこで黒幕が分かるかもしれない。」
「……?要するに、マーニは何を言わんとしてるんだよ?」
俺はそう尋ねる。するとマーニは指をピンと立てるとこう言った。
「簡単だ。明日何者かに殺されかける寸前に小生がハヤトを時間逆行させれば良い。」
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