上 下
44 / 80

第44話【そんな訳ない】

しおりを挟む

 そしてそれからも数時間、俺たちはフレイラの隅から隅までを探し続けたがイザベルの姿を見つける事は出来なかった。

「――ケティ、セリエラ、マーニも見つけられなかったのか。」
「うん、色んなところに行ってみたんだけどね。」
「小生も出来る限りの事はしたのだがな、申し訳ないぞ。」

 辺りも薄暗くなって来た頃、再集合場所としていた俺の家の前に俺たちは集まると、それぞれが成果を言う。
 やはり俺、レイバーと同じく見つける事は出来なかった様だ。

 ク……レイバーに申し訳ないな。それに、本格的にイザベルが心配になってきたぞ。ウェイリスさんと言い、なんでこう強い人間が姿を消すんだ?

「すいません、レイバーさん。私もお役に立ちたかったのですが。」
「いやいや、謝らないでくれセリエラ。それに他のお前らも。申し訳ないなんて思わなくて良い、元々は俺とイザベルの問題だからな。」
 
それはそうかもしれないが……それでもレイバー、イザベルと共に依頼を受けた事のある1冒険者として。やっぱり申し訳ない気持ちでいっぱいだよ。

「……明日も、同じ様に探すのか?」
「あぁ、明日からは俺ひとりで探すからお前らは手伝う必要は無いからな。」

 うぅん、正直めちゃくちゃ手伝いたいが、レイバーは今日俺たちが冒険者としての仕事を蹴ってまで自分たちの事を手伝ってもらっているという状況自体が先輩冒険者として申し訳ない気持ちになるという事が十分理解出来る。

「……分かった。」

「――でも、せめて冒険者ギルドに捜索願いを出すのはどうだ?」

 だから、今は少しでもレイバーの為になれる様にできる事はこうやってアイディアを出すことくらいだな。

 しかし、その提案にたいしてレイバーは腕を組み、目を瞑ると頭を横に振った。

「ダメだ。ハヤトがそうやって提案をしてくれるのは本当に嬉しいし感謝だが、この件だけは俺が頑張らないといけない。そんな気がしてな。」
「……そうか。それなら俺たちはなにも言わないぜ。」

「あぁ。なにはともあれ、今日は俺たちの個人的な問題の為に時間を割いてくれてありがとう。本当に助かった。」
「こんなの、お安い御用だ。なぁみんな。」
「うんっ!」「はい。」「今日から小生たちは仲間だ。困った事があれば言うんだぞ。」
「あぁ。ありがとうな。じゃあ、おやすみ。」

 そうしてレイバーは一礼すると俺の家を後にする。
 こう見ると、いつもは適当で何を考えてるのかもよく分からないレイバーも、ちゃんとした冒険者だって事がよく分かるな。

 ♦♦♦♦♦

 それからレイバーが帰った後、少し雑談をしていたがする事が無くなり、みんな帰る流れになった。

 そしてひとりになった俺は今日の出来事を思い返しながら夜ご飯を食べ終え、寝る準備に入る。

「明日はイザベルが見つかると良いな。」

 ベットに入ろうかという時、気が付くとそんな言葉が無意識に口から漏れていた。

 というか、ただでさえこういう誰かが居なくなったとかは嫌だし悲しいのに、昔話なんて聞かされたらもう心配になるに決まってるだろ。

 デスティニーレコードにイザベルが見つかる日が記されればまだ安心なのにな。――――って、

「そういえばデスティニーレコード、昨日見るの忘れてたな。」

 そこで俺はベットに進む足を止めると、後ろを向いてテーブルの上に置いてあるデスティニーレコードを手に取り開く。

 昨日はマーニがいきなりサンボイルからフレイラへ来たり、サンボイルで起きた大規模な冒険者同士の殺し合いなど、正直頭の中の容量がいっぱいで見るのを忘れてたんだよな。

「どれどれ~――――って、!?」

 しかし、そこに記されていた新たな文章はこれだった。

 5月10日:イザベルをレイバーが殺害

 って、ちょ、ちょっと待ってくれ……
 流石にこれは違う……よな……?

 というか、どういう事だよ?なんで今日もあれだけ居なくなったイザベルを探していたレイバーが殺すんだ……?

 ――いや、でも待てよ……?それなら色々と点が線になるのか……?
 
 仮に、これは本当に仮にの話にはなるが「イザベルの事を故意的にレイバーが殺そうとしている」
 とすると、確かにこうやって丸々1日消えたイザベルを探すをする事で疑われないようにするのも出来るし、

 予定ではイザベルは明日殺される。それならあれだけ一緒に探さなくて良いと言う理由も分かる。

 そして自分ながら嫌になってくるのだが、これもデスティニーレコードの力なのか、一度そう思うとそうにしか思えないようになってくるのだ。

「クソ……こんな物が、こんな本さえ無ければこの様な考えを持つ必要も無かったのに……」

 知らない方がいい事もあるとよく言うが、きっとこんな事を言うんだろうな。
 
 だ、だが、今日聞いたレイバーとイザベルの昔話。
 あの話を話している時のレイバーは本当に優しい顔をしていた。

 大丈夫、明日こそは大丈夫……
 絶対に、イザベルは死なない……!!

 俺は自分に何度も何度もそう言い聞かせると無理やり眠りにつくのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

異世界複利! 【1000万PV突破感謝致します】 ~日利1%で始める追放生活~

蒼き流星ボトムズ
ファンタジー
クラス転移で異世界に飛ばされた遠市厘(といち りん)が入手したスキルは【複利(日利1%)】だった。 中世レベルの文明度しかない異世界ナーロッパ人からはこのスキルの価値が理解されず、また県内屈指の低偏差値校からの転移であることも幸いして級友にもスキルの正体がバレずに済んでしまう。 役立たずとして追放された厘は、この最強スキルを駆使して異世界無双を開始する。

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

勇者召喚に巻き込まれたモブキャラの俺。女神の手違いで勇者が貰うはずのチートスキルを貰っていた。気づいたらモブの俺が世界を救っちゃってました。

つくも
ファンタジー
主人公——臼井影人(うすいかげと)は勉強も運動もできない、影の薄いどこにでもいる普通の高校生である。 そんな彼は、裏庭の掃除をしていた時に、影人とは対照的で、勉強もスポーツもできる上に生徒会長もしている——日向勇人(ひなたはやと)の勇者召喚に巻き込まれてしまった。 勇人は異世界に旅立つより前に、女神からチートスキルを付与される。そして、異世界に召喚されるのであった。 始まりの国。エスティーゼ王国で目覚める二人。当然のように、勇者ではなくモブキャラでしかない影人は用無しという事で、王国を追い出された。 だが、ステータスを開いた時に影人は気づいてしまう。影人が勇者が貰うはずだったチートスキルを全て貰い受けている事に。 これは勇者が貰うはずだったチートスキルを手違いで貰い受けたモブキャラが、世界を救う英雄譚である。 ※他サイトでも公開

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

処理中です...