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第9話【避けられぬ結末】
しおりを挟むそれから次の日、昨日の特訓の疲れをとる為(明日のワーウルフ討伐に備えてという理由も兼ねて)1日休みにし、そして遂に4月5日がやって来た。
「遂に来たか……4月5日。」
早朝、ベットから立ち上がると俺はデスティニーレコードを開き、そこに記された文章を見る。
4月5日:ワーウルフ討伐にてケティが右足を負傷。
今日、デスティニーレコードの通りに行けばケティはワーウルフ討伐の途中で右足を負傷する。
――だが、俺はその未来を変える為に一昨日、ケティに防御能力を上げる特訓した。それに何よりも大きいのがその事をこうして事前に知っているという事だ。
極論言ってしまえば、今日ケティとセリエラに「今日は休もう」それで全てが解決する。――まぁそれは昨日の雰囲気を見るに無理そうだが……(昨日は休みにすると伝えた時、ケティが明日は頑張るぞとすごくやる気に満ちていた)
だから、今日俺がするべき事はまず絶対にワーウルフ関連の依頼を受けない。そして仮に受けてしまった時は全力でケティを守るという事だな……!(もちろん、自分自身やセリエラが怪我をしないようにしながら)
そうして俺は決意を固めるのだった。――――未来を変えるという事は簡単ではないのに。
♦♦♦♦♦
「お、2人とも今日も早いな。」
その後、朝食や依頼に向けての準備を済ませた後、前と同じ様に冒険者ギルドへ向かうと今日も今日とていつものギルド前でケティとセリエラが話をして俺の事を待っていた。
「おはようございます、ハヤトさん。」
「あ、おはよ~ハヤト!!」
俺に気付き、冷静にお辞儀をしてくるセリエラに対して嬉しそうにぴょんぴょんと飛び跳ねながらこちらへ走ってくるケティ。
まだこいつらとパーティーを組んでから数日しか経ってねぇが……これももうおなじみって感じだな。
それにケティのやつ、昨日も思ったがどんだけ依頼を受けるの楽しみにしてたんだよ。
「あぁ、おはよう。相変わらずテンション高いな」
「当たり前じゃんっ!だって一昨日も昨日も依頼を受けれてないんだよ?腕がなまっちゃうなぁ~!!それに、一昨日の特訓の成果がちゃんと出るかも気になるし!」
お前、そんなキャラだったか……?それにまだ一度しか依頼を受けた事が無い初心者だろ。なまる腕がどこにあるんだか。まぁ冒険者という職業に就いていてそれだけ向上心かあるのは良いことなんだろうが。
「ま、まぁ良い。じゃあとりあえず中に入って依頼を選ぼうぜ」
「うんっ!!」「行きましょうか。」
そうして中に入る俺たち。
今日もスライムを討伐した日と同じく早朝に集合していた為、ギルド内に冒険者の姿は無かった。
よし、これなら依頼も選び放題。ワーウルフに関する依頼を受けなければ大丈夫だろう。ほらな?未来はこうして変えられる。
心の中でそうひとまず安心していた時――
「おはようございます。――丁度良いところに来てくださいました。」
俺たちに気付いた受け付けのお姉さんがそう話しかけて来た。
丁度良いところ……?少し嫌な予感がする俺。
しかし、対してケティとセリエラはなんの疑いも持たずに挨拶を返し、お姉さんに近づいて行った。
「どうしたんですか?私たちならなんでも力になりますよっ!!」
首尾の良い声色で尋ねるケティ。
すると、お姉さんはこう言った。
「実は先程緊急で山菜を取りにヴェロッサ森に行っていた方から依頼が入りまして、あるモンスターの討伐なんですが、」
「あるモンスター?」
「はい、どうやらワーウルフが現れたらしく――」
「ちょっと待てっ!!!」
そこで俺は無理やりお姉さんの言葉を遮る形で割り込んだ。
「は、ハヤト……?どうしたの?」
「いや、ワーウルフはさすがに俺たちにはレベルが高いだろ。」
心臓の鼓動が早くなるのを感じながら俺はそう言う。
だって、こんなに上手くワーウルフの討伐を受ける流れに普通なるかよ……!?
「いや、今回現れたワーウルフは一匹――群れから離れた個体だそうなので皆様でも問題ありませんよ。――それに、今はその報告を受けて冒険者以外の人間の立ち入りを禁止しています。なのでこれを放置しておくと山菜を採取しそれで生計を立てている方々に支障が出てしまい、冒険者ギルドの信頼が無くなってしまう。」
「なので、出来るだけ早く討伐をしておきたいのです。ですから、お願い出来ませんでしょうか。報酬は通常よりも高く出しますので。」
「確かに、それは大変だね……よしっ!私たちが受けるよ!ね?ハヤトっ!!」
「1匹ならリスクも少ないでしょうし、これを断る理由は無さそうですね。」
「……くっ、」
ここまで言われて、断る事など俺には出来なかった。
……というより、ここで断ってしまえば冒険者失格な気がしたのだ。
冒険者というの元より町に住む人々をモンスターの脅威からその身を賭けて守り抜く職業。
だから、怪我のリスクがあるのはこの仕事に就いた時点で承認の上、それに今も困っている人がいるのだ、自分たちの事情だけで断るのは違うだろう。
「……分かった。」
こうして俺は渋々、ヴェロッサ森に現れたワーウルフの討伐を受ける事に同意したのだった。
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