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第二章[グーネウム帝国編]

決戦の日

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「お!やっと来たか。」
「おう、お前ら早いな」
 冒険者ギルドの方へ歩く俺たちを見つけたラークが、腰に手を当ててそう言う。

 あれからメアリーに明日冒険者ギルドの方へ避難してもらうことを伝えた後、何かが起きるということも無く、翌日、朝から俺、セリヤ、メアリーの3人で家を出た。それで冒険者ギルドに近づいたところで、今の会話に繋がるって訳だ。

「すごいな、ノーマルゾーンの人たち全員が集まってるのか?」
 俺はラークの後ろを見ながらそう言う。そこには、大量の街人が集まっていた。
「あぁ、まだ数人来ていない人もいるが、そろそろ来る頃だろう。」
 対してラークはそう言いながら振り返り、ちゃんと来ているのかを再度確認していた。

「やっぱすげぇよ、お前たち。」
「ん?そうか?まぁ、昨日約束したからな。」
 ラークは俺のセリフに振り返ると、少し照れくさそうにそう言う。
 いや、まぁちゃんとノーマルゾーンの人たち全員をここに集めるってのももちろんすごいんだが――
「いや、それだけじゃなくてよ――」

 俺はノーマルゾーンの人たちの更に奥、冒険者ギルドの入り口辺りで集まっている冒険者を見ながらこう言った。
「お前ら、逃げなかったんだな。」
 正直半分くらいは逃げたり参加しなかったりになると思っていた。だって俺たちが立ち向かおうとしているのはリッチゾーンという名の国だからだ。
 怖気付いて当然だと思うからな。

 しかし、こいつらは違った。
 だって冒険者ギルドの前に集まっている冒険者たちの表情からは微塵も恐怖という感情を感じなかったから。
 みんながみんな、国を変えてやる。その一心でこの戦いに臨んでいるという気持ちが十分に感じられた。

 しかし、俺のそのセリフに対してラークは、いや、俺たちは凄くねぇよと言わんばかりの表情で腰に手を当てると、
「こいつらが、そして俺が逃げなかったのはお前らのおかげなんだよ。」
 そう言った。

 ……こいつ、漆黒龍ブラックドラゴンの時もそんなこと言ってたっけ。
「確かにこうやって気持ちをひとつに出来たのは、俺たちのおかげでもあるのかもしれないな。」
「だろ?だから俺たちは――」
「でもな、」
 そこで俺はラークのセリフを遮るようにそう言う。

 きっとこいつは、「だろ?だから俺たちは凄くもなんともない」なんて言おうとしていたんだろう。
 違う……それは違うんだよ……!
 俺はラークの顔を見ると、
「でもな、お前らは気持ちがひとつになった後、逃げたりすることは無かった。逃げることだって出来たはずなのに。」

「やってやる!と、口で言うのは簡単だ。そこらの子供だって出来る。だが、こうやって行動に移せているのは、俺の力なんかじゃない、お前ら自身の力なんじゃないか?」
 そう言った。
 すると、それを聞いたラークは、
「……ッ!……確かにそうかもしれないな、」
 納得したようにそう言い、

「じゃあ、俺たちの力とお前らの力を合わせれば、何も怖いものなんてないな!」
 笑顔でこっちへ手を伸ばしてくる。
「おう!そういうことだ!」
 俺も力強くそう返すと、ラークの伸ばしてきた手を握った。


 するとそこで、
「え、えっと~、友情を分かちあってるところ申し訳ないのだけれど、」
 セリヤがそう話しかけてきた。
「ん?なんだ?」
 それ対して、ラークが先にそう反応する。

 するとセリヤは、辺りをキョロキョロしながら、
「さっきから思っていたのだけれど、昨日いなかったあいつ、今日もいなくないかしら?」
 そう言う。
 確かにそれは俺も気になっていることだった。
 昨日も欠席で実行日の今日も欠席……まさかあいつ、逃げたのか?

 するとラークは、
「あぁ、あいつな、昨日帰って来てから俺が作戦実行日が明日という事を伝えたら、凄くびっくりしてまたすぐにどこかへ行っちまったんだよ、まぁ今日の朝には帰ってくるとは言ってたが……」
 腕を組みながらそう言う。

 あいつ本当にどうしちまったんだよ……兵力を集めてくれるって言ってたじゃねぇか……
 するとそこで、
「――お!来たぞ。」
 ラークがグーネウム帝国の入り口の方から歩いてくるを見ながらそう言う。

 そこには、がたいのいい冒険者が先頭を歩いていて、たくさんの冒険者たちを連れているという光景があった。
 そして、その中のひとりが俺とセリヤを見つけると、をしながら、
「テツヤ!セリヤ!久しぶりだな!」
 そう言った。
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