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第二章[グーネウム帝国編]

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「ねぇ、テツヤ」
 さっきまであんなに楽しそうに話していたセリヤが、急に声のボリュームを下げてそう言ってきた。
 ん?なにかあったのか?
「どうした?」
 俺もセリヤと同じ様に声のボリュームを落としそう言う。

 するとセリヤは、
「森の方から何か聞こえない?」
 そう言って来た。
「森?」
 俺はセリヤの言う通り、歩いている砂利道の左側に隣接している森林に耳を立てる。

 すると、
「誰か~!助けてくれ~!」
 どこかで、人がそう悲鳴を上げているのが聞こえた。
「テツヤ、今の......!」
「あぁ」
 こんなに人気の少ない森の中だ、おそらくいきなり現れたモンスターに襲われているんだろう。
 これは急いだ方が良さそうだな。

「急ぐぞ。」
 俺はセリヤにそう言うと、
「えぇ」
 セリヤはそう言いながら背中に背負っていた剣に手を掛ける。
 こうして俺とセリヤは、森の中へと走って行った。

 
「いたぞ!」
 森に入ってから2分程経った頃、俺はセリヤにそう言う。
 モンスターに襲われそうになっている男性を見つけたからだ。
「グルルゥ......」
 一人の男性を囲んだ三匹のオオカミの様なモンスターは、そう唸りながらゆっくりと間合いを詰めて行っていた。
 あれは不味い......!少しでも遅れれば、あの人が襲われちまう!
 俺はすぐに杖をオオカミの方へ向けると、
「草木を――」
そう呪文を唱え始め、ファイアボールを放とうとする。
 
しかし、そこで俺はここでファイアボールを放てば、あの男性にも被害が及ぶことに気付いた。
 クッソ、俺の魔法で怪我をさせたら元も子もねぇ!
 だから俺は、ファイアボールの呪文を止めると、すぐさま呪文を変え、
「光を放て!シャイニングボール!!」

 杖を上に向け、閃光弾の役割を担うシャイニングボールを放った。
 それを見ていたセリヤは、俺が魔法を放った直後、
「目をつぶって下さいッ!!」
 男性にそう叫ぶ。
 
 すると、その声を聞いた男性は、一瞬戸惑いを見せたが、
「あ、あぁ!」
 すぐに俯き、手で目を覆った。
 するとその直後、シャイニングボールはモンスターの頭上の方へ飛んで行き、
 その瞬間、ピカっと強い光を放った。

「キャインッ!?」
 そしてシャイニングボールの閃光をもろに浴びた三匹のオオカミの様なモンスターはいきなりの強い光に驚き、そう声を上げながら森の奥へと走って行った。

「ふぅ……」
 遠くへと走って行く三匹のモンスターを見ながら、俺はそう息を吐く。
 とりあえず、追い払えたみたいだな。
「大丈夫か?」
 俺は地面に手を着くようにして固まっていた男性にそう声を掛ける。
「あ、あぁ」
 男性は、いきなりの出来事にキョトンとしながらもそう返してくれた。
 よし、怪我はしてないみたいだな。
 俺とセリヤはアイコンタクトを取ると、互いに胸をなで下ろした。

 その後、我に返った男性は、俺たちにお礼がしたいからと、森林のすぐ近くにある家に連れてこられた。
「いやぁ、さっきはすぐに礼を言えなくて本当に悪かったな。今、改めて礼を言わせてくれ。命を助けてくれて本当にありがとう。」
 ガハハと笑いながらそう言い、俺たちに頭を下げる男性。

「いや、そんな大層な事はしてないわよ。」
 対してセリヤは、腕を前に伸ばしてブンブン横に振りながらそう言った。
 コイツ、未だに感謝されるのに慣れてないんだな?頬っぺが赤くなってやがる。ふっ、可愛いヤツめ。

「いや、俺にとっちゃ、姉ちゃんは命の恩人だ。そっちの兄ちゃんも、ありがとうな。」
 今度は俺の方を見ながらそう言ってくる。
「あ、あぁ。全然大丈夫だ。」
 俺は、そう返した。

 すると、
「ん?どうした?顔色が悪いぞ?」
 男性は、俺の顔を見ながらそう言ってきた。
 バレちまったか。
「実はさっきから凄く腹が減っていてな......」
 そう、実は俺がここに来てから積極的に話していなかった理由は、腹が減っていてそれどころでは無かったからなのだ。
 俺は、ぐぅ~っと低い音で唸る腹を押さえながらそう言う。

 するとそれを聞いた男性は、
「あ、そうだったのか!ちょっと待っててくれ!すぐに用意するからな!」
 明るくそう言うと、すぐに椅子から立ち上がり、俺たちが座っている椅子の正面にあるキッチンへと移動した。
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