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第二章[グーネウム帝国編]

次行く場所は?

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 ミリゴから出発してから相当な時間が経った。
 出発した時はまだ朝で、太陽も上り始めているという感じだったのだが、気付けばもう太陽は下り始めていた。

 これは野宿パターンだなこりゃ......
 俺はいくら歩いても全く景色の変わらない草原と、その横にある森林を見ながらそう思う。
 まぁ、それは良いとして......

「疲れたぁぁ!!」
 俺は片手に持っている杖をぶんぶん振り回しながらそう叫んだ。
 すると、
「ちょ!いきなり叫ばないでよ!びっくりしたじゃない!」
 俺の横を歩いていたセリヤがこっちを見ながらそう叫び返してきた。
 
 いや、びっくりさせたのは悪かったけどさ。
 もうかれこれ3時間くらい無言で前へ前へ進んでるんだぜ?叫びたくもなるだろ。
 っていうかそもそも、ずっと真っ直ぐ歩いてるが果たしてセリヤは新しい場所への道を分かってんのか?

「なぁセリヤ、ずっと真っ直ぐ歩いてるが新しい場所への道とか分かってんのか?」
 俺はため息混じりにそう聞く。
「まぁ大体は分かるわ。」
 ほう?ただがむしゃらに前へ進んでるって訳では無いのか。
「ちなみに何処なんだ?新しい場所ってのは?いい加減、教えてくれても良いだろ。」

 俺はそう続けてセリヤに質問をする。
 そう、なんと俺はセリヤが目指しているという場所が未だに何処なのか分かっていなかった。
 どう思うよ?コイツミリゴを出発する時、俺が「ちなみに何処に行くんだ?」って聞いても、無視して教えてくんなかったんだぜ?

 すると、俺のセリフを聞いたセリヤは、何やら考え込むようにしてから、
「着いてから言いたかったのだけど......本当に知りたい?」
 そう確認を取ってきた。
 なんだ?コイツ。やけにもったいぶるじゃねぇか。まさかハーレム天国にでも連れて行ってくれるのか?

「とりあえず教えてくれよ、前情報が何も無い所に行くのは少し抵抗があるからよ。」
 それに、セリヤは知っていて俺だけ知らないのはなんか不公平な感じがして嫌だからな。
 するとセリヤは、
「分かったわ、教えてあげる。聞いて驚かないでよ?」
 更にそうワンクッション挟んでから、

「......ふっ、なんと私たちが行くのはグーネウム帝国よ!!」
 そう言った。――って、

 え?
 ぐーねうむ?なんだそりゃ?
「どこだよそれ。」
 俺は思ったままの事を口に出してそう言う。
 いや、だってこの世界に転生してきてから一度もグーネウム帝国なんて単語、聞いた事ねぇんだもん。

 すると、俺がそのグーネウム帝国とやらを知らない事を知ったセリヤは、
「え!?グーネウム帝国を知らないの?テツヤって本当にこの世界で育った?」
 俺をやばい目で見ながらそう言ってきた。
 悪いな、セリヤは冗談半分で言ったんだろうが、俺は本当にこの世界で育って無いんだよ。
 そんなグーネウムとか帝国とかじゃなくて、日本の会社で揉まれながら育ったからな。

 まぁ、だからといって「異世界転生したから何も知らないんだよ」なんて言っても絶対信じないだろうから言わないけどよ。
「悪いな、俺本当に何も知らないんだよ。」
 俺はそう、自分の無知さを誤魔化す。

 するとセリヤは、
「ま、まぁ良いわ、教えてあげる。」
 俺があまりに無知なせいでガッカリした様子だったが、説明を始めてくれた。
「グーネウム帝国っていうのは、ミリゴから比較的近くて、かつ凄く大きい街なのよ!」

 ふむふむ、それで?
 俺は続きの言葉を待つが、一向に聞こえてこない。
 ま、まさかこれで説明終わりかよ!?もうそれ説明じゃねぇって!?

「ふ、ふぅ~ん?」
 俺はここで「お前それ説明じゃねぇって!?下手くそかよ!?」と、死ぬほどツッコミを入れたかったが、こんなにドヤ顔で話してきたセリヤにそれをするのは流石に可哀想だと思い、いかにも「あなたの説明のおかげで知識が増えました!」みたいな感じに反応した。

 まぁだがこれだけの情報で行くのは流石に心細いな......
 だから俺は、
「ほ、他になにか無いのか?」
 さりげなくそう聞く。
「他ってなによ?」
「なんかあるだろ、例えばそこに居るモンスターとか、特徴的な建物とか。」

 すると俺のセリフを聞いたセリヤは質問に対して、腕を組んで考え始めた。
 え?そんなに難しい質問したか?
 俺がセリヤの回答を待っていると、
「そうねぇ......私も行った事が無いからよく分からないわ!」
 ニコッと笑いながらそう言った。
 
 こ、コイツ吹っ切れやがった!
「そ、そうなのか。」
 俺はハハハと苦笑いをすると、セリヤからは見えない様に、小さくため息を吐いた。
 こんなのでいけるのか?もう既に心配になって来たんだが。
 まぁこういうのも俺たちらしいっちゃ、俺たちらしいけどよ。

 するとそこで、
「ねぇ、テツヤ。」
 さっきまであんなに楽しそうに話していたセリヤが、急に声のボリュームを落としてそう言ってきた。
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