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1章 稀代の商人
五十四、それぞれの想い(1)
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「…少し、一人にしてくれ」
「主…」
「ドイル、命令だ」
深く沈んだような顔をした主の顔を見て、私はすぐにその場を去った。
…やはり、私では主の救いにはなれない…
ガラハドさん、早く戻ってきてください。彼には、あなたが必要です…
「ビクッ…はい」
分かっているさ、あいつの言うこと…
それに、この人生は神が与えてくれたきっかけであり、俺自身が俺自身として生きられるような人生だった。
赤ん坊の時から、ガラハドはずっと俺の味方をしてくれたし、親としても、兄としても…そして、護衛としても、相棒としてもあいつが好きだったし、本当なら手放したくはない…だが…だからこそ…
「…俺のせいで死なせるなんて出来ねぇよ…
俺が生きられているのはあいつがずっと助けてくれるからだ。
あいつがずっと俺の隣で、間違えば正して、協力もずっとしてくれる…
あいつは俺の人生の中で、一生の恩を感じた恩人なんだ…
そんな恩人を、俺の手で殺すことになるんだぞ…
ああそうさ、怖いに決まってる…
俺なんかが大切な人を殺してしまうなんて、想像もしたくないんだよ…
だからこそ、あいつには幸せに…俺なんかの為に命を捨てず、 幸せに生きてほしいんだよ…」
「…ガラハドよ、なぜ戻ってきた?」
「…主に、任を解かれ、ました…」
「…ガラハドよ、友としてお前に問う。
お前が初めて我らの騎士となった時、お前は周りの反対を押し切って騎士になったな」
「…」
「その時、言った言葉はなんだったか。
「俺が俺の意思でその人生を生きることを誓った。
俺は自分の未来を誰にも委ねず、後悔しても良いから俺がしたいことをする」
…ガラハド!あの時の威勢はどうした!
お前の騎士としての、男としての意地はその程度で崩れるものなのか!」
俺は叫んだ。とにかく、あいつの心に響かせるように叫び続けた。
「昔のお前も、最近までのお前も全盛期のように、とても幸せな顔をしていた!
何故か?お前が自分で選んだ道だからだ!
お前がその道を正しいと信じて、その日常が幸せと感じていたからだ!
だったらお前のすることは1つしかないだろうが!
ユーグからすれば…あいつの親は、俺じゃなくお前だ!
俺が王としてあいつに接することはできても、生まれた時から信じて生きてきたお前の方が親として、相棒としてあいつを支えられるんだ!
分かったら…とっととユーグの元へ走れ!
あいつは…あいつは、お前と過ごしている日常の中では幸せな笑顔が溢れていた…お前しか居ないんだ…あいつを、生者として生かせるのは…
お前だって、初めて会った時に分かっただろ…
あいつは、生まれた時から既に周りが信じられず、まるで死人のような顔つきだった…
それを変えたのは、お前だけなんだ…今、助けられるのはお前だけなんだよ…」
「…分かってるさ…だが、あいつは俺の手を必要としていない!」
「違う!本当に必要だからこそお前を死なせたくないからこそ、お前を離すことを選んだんだ!
お前もあいつも、なぜそんなに生き方が下手なんだ…」
「…男とはそういうものではないでしょうか」
その声が聞こえた方を、咄嗟に2人は見上げた。
「主…」
「ドイル、命令だ」
深く沈んだような顔をした主の顔を見て、私はすぐにその場を去った。
…やはり、私では主の救いにはなれない…
ガラハドさん、早く戻ってきてください。彼には、あなたが必要です…
「ビクッ…はい」
分かっているさ、あいつの言うこと…
それに、この人生は神が与えてくれたきっかけであり、俺自身が俺自身として生きられるような人生だった。
赤ん坊の時から、ガラハドはずっと俺の味方をしてくれたし、親としても、兄としても…そして、護衛としても、相棒としてもあいつが好きだったし、本当なら手放したくはない…だが…だからこそ…
「…俺のせいで死なせるなんて出来ねぇよ…
俺が生きられているのはあいつがずっと助けてくれるからだ。
あいつがずっと俺の隣で、間違えば正して、協力もずっとしてくれる…
あいつは俺の人生の中で、一生の恩を感じた恩人なんだ…
そんな恩人を、俺の手で殺すことになるんだぞ…
ああそうさ、怖いに決まってる…
俺なんかが大切な人を殺してしまうなんて、想像もしたくないんだよ…
だからこそ、あいつには幸せに…俺なんかの為に命を捨てず、 幸せに生きてほしいんだよ…」
「…ガラハドよ、なぜ戻ってきた?」
「…主に、任を解かれ、ました…」
「…ガラハドよ、友としてお前に問う。
お前が初めて我らの騎士となった時、お前は周りの反対を押し切って騎士になったな」
「…」
「その時、言った言葉はなんだったか。
「俺が俺の意思でその人生を生きることを誓った。
俺は自分の未来を誰にも委ねず、後悔しても良いから俺がしたいことをする」
…ガラハド!あの時の威勢はどうした!
お前の騎士としての、男としての意地はその程度で崩れるものなのか!」
俺は叫んだ。とにかく、あいつの心に響かせるように叫び続けた。
「昔のお前も、最近までのお前も全盛期のように、とても幸せな顔をしていた!
何故か?お前が自分で選んだ道だからだ!
お前がその道を正しいと信じて、その日常が幸せと感じていたからだ!
だったらお前のすることは1つしかないだろうが!
ユーグからすれば…あいつの親は、俺じゃなくお前だ!
俺が王としてあいつに接することはできても、生まれた時から信じて生きてきたお前の方が親として、相棒としてあいつを支えられるんだ!
分かったら…とっととユーグの元へ走れ!
あいつは…あいつは、お前と過ごしている日常の中では幸せな笑顔が溢れていた…お前しか居ないんだ…あいつを、生者として生かせるのは…
お前だって、初めて会った時に分かっただろ…
あいつは、生まれた時から既に周りが信じられず、まるで死人のような顔つきだった…
それを変えたのは、お前だけなんだ…今、助けられるのはお前だけなんだよ…」
「…分かってるさ…だが、あいつは俺の手を必要としていない!」
「違う!本当に必要だからこそお前を死なせたくないからこそ、お前を離すことを選んだんだ!
お前もあいつも、なぜそんなに生き方が下手なんだ…」
「…男とはそういうものではないでしょうか」
その声が聞こえた方を、咄嗟に2人は見上げた。
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