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39話

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「来たわよ、坊ちゃん」
「坊ちゃんはやめろ、精霊王」
「はいはい、クルー。勇者候補全員はまだ戦力がなくて無理だけど、1人だけ強い子がいたから、その子を連れてきたわ」
「はじめまして、国王様。臨時とはいえ、最果ての楽園、勇者候補代表としてご挨拶申し上げます」
「よい、楽にせよ」
「既に楽にしてます」

私は作り笑顔を保ちながら、こちらが優位だ、と示すよう応えた。

「…食えぬ娘よ。して、精霊王まで使って何用だ?」
「何用、というのは寧ろそちらの方ではないでしょうか?突然、別世界の住人を了承なく勝手に呼び出した挙句、人は居ない。戦ったことのないまだ学生が、魔物に襲われ、捕まれば喰われ、そして、恐怖に怯える…
責任を果たせとは言いませんが…義務を果たすのは、国王であろうと同じものかと」
「ほう?…何が望みだ」
「望み、とは恐れ多い。ですが、どうしてもというのであれば…国王陛下より、誠意を見せて頂きたいものです」

そういった瞬間、謁見室にいた騎士らが一斉にこちらに剣を向けた。
 しかしその瞬間、彼らは身体がピクリとも動かず、そして、首元には攻撃魔法が寸前で止まっていた。

「別に、敵対しても私は一向に構いません。ですが、お互い戦争なぞと無駄な殺生は好まぬはず。国王、立場を考えろ」

その言葉を聞いた瞬間、その場は彼女の威圧で、一気に空気が重くなった。それを瞬時に察知した人間らは全員顔が蒼白になり、国王は、その言葉に怯え、彼女に頭を下げた。

「…す、すまなかった…」
「パチンッ…よろしい。では、誠意を、お待ちしております故、準備ができ次第、最果てに言伝を」

彼女が指を鳴らすと、威圧はすぐに解除され、そして、騎士らの拘束も解除された。
そして、彼女はその結界内では使えないはずの転移魔法を使い、姿を消した。

「さ、災厄だ…あれは勇者なぞでは…」
「勇者の力ではあるわよ。人形態となったとはいえ、私を一瞬でも拘束するなんて、凄まじい力ね…」
「何が起きたかすら分からなかった…だが、1つわかることは…敵対すれば、この国は滅んでしまう」
「…騎士らを拘束したのは、恐らく空間魔法ね。多分、この城の結界を見て空間干渉の応用を思いついたのだと思うけれど…
効果は…そうね、多分停止、かしら。いや、それだったら意識もないはず…となると、固定?対象以外を固定する、といった感じかしら。
そして、あの攻撃魔法…殺気がなかった所を見ると、威力を最小限まで落としていたと思うけれど、無詠唱かつ多重、そして並列行使…そんなことができるのは、頭がイカれているか、頭脳がよっぽど優れているか…
ともかく、化け物なのは間違いないわね。
魔法よりの勇者…いや、英雄の…魔境の賢者かしら?」
「魔法だけであってほしいものだ…せめて、少しでも対抗できる力がなくては…」

それにしては、違和感を感じたけれど…あの違和感はなんだったのかしら…魔法使いがあそこまでの威圧を出せる?そんなこと、信じられるはずがないわ…少し、警戒しておく必要がありそうね。
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