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   今日もクエストを終わらせて、酒屋に行って買ったジュースを片手に海辺にいた。あれから4日経った。

   彼にはまだ会えていない。


「もう、来ないのかしら」


   涙声になった自分の声に驚いて、まだ4日しか経っていないと言い聞かせる。


「胸が苦しい…」


   彼は今日も来なかった…。




   あれからまだ4日しか経っていない。

   それなのに私の主人は美しさに磨きが掛かっていた。寂しげに伏せられた睫毛がふるふると震え、何処と無く色香が漂う。潤んだ瞳から今にも涙が溢れそうで、宝石のようにキラキラと輝いている。


「はぁ」


   ため息すらも艶があって、思わず私も息を吐いた。


「ラゼーネ様」

「…」


   意識が遠いところにある主人が心配になってもう一度声を掛けた。


「ラゼーネ様、お茶を飲みませんか?」


   溢れた涙をゴシゴシと拭って顔を上げた主人の目は赤くなっていた。無理やり上げられた口角が痛ましい。


「お願いしても、いいかしら。美味しいお茶が飲みたいわ」

「はい、勿論で御座います。お茶菓子も焼いたので持ってきますね」

「うん、ありがとう。シャフラ」


   部屋を出て全速力でキッチンで準備を整え、ポットを倒さない程度に慌てて戻る。主人は先ほどの場所から微動だにせずにいた。

   お茶を注いだティーカップから湯気が上がる。焼いたクッキーとパウンドケーキを並べるとほんの少しだけ主人の顔が綻んだ。


「私もご一緒しても宜しいですか?」


   ラゼーネ様のご家族が居なくなってから食事を毎日共にするようになったが、自分からお茶を一緒に飲んでいいかなんて聞くのは初めてだった。


「ええ、いいわよ」

「では、失礼しますね」


   遠慮なく前の椅子に座ってカップにお茶を注ぐ。一口飲んで自分の心臓を落ち着かせる。


「ラゼーネ様。あまりお気を落とさずに。きっと男性の方も仕事があるでしょうし、毎日海で練習をしているわけではなかったのでしょう。確か以前会った日は金曜日ではありませんでしたか?」

「そう、かも」

「しっかりとした職についていらっしゃる方なら金曜日が休日なのかもしれません」


   うーんと唸り声を上げて首を傾げた主人を見つめる。どんよりとした雰囲気は弱まった。


「確かに言われてみれば、王国の騎士様の服を着ていた気がするわ。金曜日が彼の非番の日なのかも」

「ラゼーネ様も金曜日は仕事をしないで海に行ってみるのもいいかもしれませんね。食べやすい昼食ご用意致しますよ」

「ありがとう、シャフラ。気を遣わせてしまったわね」


   肩を竦めた主人に笑い掛ける。


「当たり前のことをしたまでです。私はラゼーネ様に忠誠を誓って、仕わせて頂いているのですから。大切な主人が困り、辛そうにしているのであれば言葉にせずとも助けに参りますよ」

「ありがとう、シャフラ。貴方は私に仕えていると言ってるけれど私は家族と同じぐらいに大切に思っているわ。だから本当にありがとう」

「光栄の極みです」


   いつものように愛らしく美しい笑顔になった主人に私も笑顔になる。あぁ、本当に主人の御心を奪った男が憎い。こんな美しい人の愛を独占できるのだから。

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