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いざ理想郷へ

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「ネカフェ、どこ?」

 携帯は安心アクセス制限がかかっているので調べものはできない、なので前世の記憶を辿って行ったことのないネカフェを探して繁華街をさまよう。



「ねぇねぇ、お姉ちゃんこの後時間ある?」

 ふらふらしすぎたせいで男性に気軽に話しかけられてしまった、前世のままだったら上手く対応できなかっただろうが今世でギルドでの活動や荒くれ者などの対応してきたため特に動じることはない、万が一武力で来ようものなら瞬殺できる確信がある。

「無いよ」

 話しかけてきた男性を無視して歩き続ける、そもそもこの手の相手は無視するに限る。

「まぁまぁいいじゃん」

 そのまま他にターゲットを移してくれれば良かったものの男性は諦めが悪いようでユウキの腕を掴んできた、この世界でなければこのまま吹き飛ばしたりしているのだが、そんな事をしてしまえば目立つことこの上ない。

「なんですか?」

 とりあえず不機嫌なまま質問してみる。

「いいじゃんちょっとだけだってさぁ」

 腕を掴む手が強くなる、無理やり引っ張ろうとしているがユウキとの力の差があるせいで引きずられている状態になっている、かなりダサい状態になっているが意地になっているようで全力で引っ張ってくる。

「いい加減に……」

 さすがに叫ばれると目立って仕方ないので即座に蹴りを入れる、すると男性はそのまま気絶して倒れてしまった。

「あらら」

 怯ませる程度のつもりで蹴りを入れたのだがこの世界では勝手が違うようでもっと加減をしなければならないようだ、しかし悪いのは向こうの方なので男性のことは忘れて自分は関係ないと歩きだす。



「あったぁ」

 途中で寄り道しながらもようやくネカフェにたどり着いた、疲れていた気分が少し回復し、階段を駆け上がり入店する、ネカフェの利用は前世を含めても初めてなので少し緊張してしまう。

「すいません、初めての利用なんですけど……」

「では登録になりますけど何か身分を証明できる書類はお持ちですか」

「身分証……、ちょっと待ってくださいね」

 しまったそもそもこの世界の住人ではないので身分証を証明する物など持っている訳が無いのである、困ったフリをして前世の自分の財布を確認する。

「あった……」

 すると表記が女性になっている保険証が入っていた、おそらく神様がやってくれたのだろう。

「これで大丈夫ですか?

「……はい大丈夫ですよ」

 顔立ちはこの世界ではアジア系で保険証の戸籍も日本国籍になっているが名前がユウキ・アーノイドになっているので店員の人が不思議そうに眺めてしまったようだ。

「それでは会員登録しますので、こちらの端末でお願いします」

「どうも」

 店員がパソコンを操作した後に受付横にあるパソコンで操作をお願いされる、住所は前世のものを使えばいいだろう、連絡先も前世の携帯を持っているのでコレで大丈夫なハズ、その他の情報も前世基準で大丈夫だろう、もし調べられてもその頃にはこの世界にいないだろう。

「終わりました」

「はい、ありがとうございます」

 店員から料金についてや店の利用方法を一通り聞いてから中に入っていく。

「いざ、理想郷へ」

 ユウキの中の誰かが嬉しさのあまり表にまで言葉を出してくる。

「まずはドリンクバー」

 おそらく複数が続きや新規の物を望んでいるのでかなり頭を使ってしまう事になるだろう、そのために水分と糖分は多めに接種しておく必要がある。

「行くぞぉ……」

 大きな声は出せないが気合を入れて本棚に向かう、明らかに今までのどの場面よりも気合が入っている。
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