異世界に行って転生者を助ける仕事に就きました

ネトゲに意図せず転生した

初見の装い

　サヨのレーダーがあるのでかなりの距離をとりつつ後をついていく。
「確かにこの先に町があるみたい、でもかなり遠いよ？」
　サヨの探知外なのでそれなりに遠い位置にありそうだ、それとも森の中で丁度探知できない位置にいただけかもしれない、もっとも探知にかかる生き物を全て把握していてはたとえサヨといえどもキャパオーバーするので切り捨てしていた物が警戒対象になったという可能性がある。
「もしかして自分達が上陸したくらいからこっちに向かってきたんじゃ、それかさっきの大量発生したのを調査しにきたのかどっちかだね」
「でも転生者がいるのは気が付かなったっぽいし偶然じゃないかな？」
「確かにそうか」
　少しだけ警戒度を下げたようだが、このまま距離を維持してついていく。


　１時間ほど後をつけていると木の柵に囲われた集落らしき物が見えてきた。
「アレ、だよね？」
「そうだね、さっきの人達の反応もあの大きな建物からするよ」
「逃げる準備だけして行こう」
「……わかった」
　先日の事があったので仕方ない事ではあるが、ここまで他人に対して信用がない転生者は初めてだ、一応サヨと恵美にはすぐに離脱できるように準備をさせる。

　飾りの少ない銃をもった状態で人が警備をしている出入口に近づく。
「おや、あなた方が転生者ですね、ようこそ我々は歓迎しますよ」
　言葉遣いや態度は丁寧なもののその視線はがっつりと転生者の胸に向けられていた。
「ああ、初めてこの世界に来たみたいだからよくわからなくて、最初は隠れていましたけど他に頼る所がないのでここに来させていただきました」
　初めてこの世界に来た風を装って接触する、転生者がいた所との下手なつながりでもあれば最悪拘束される可能性があるからだ。
「それはそれは、ぜひこちらでお休みください、代表から話は来ているのでもし体力がありましたらココの一番大きな建物で代表が待っております、それが明日以降にしたいのであれば右側にある小屋をお使い下さい、４人では手狭でしょうが十分に休めると思いますよ」
「じゃ、じゃあ一旦小屋に行かせてもらうよ、余裕があったらあの大きな建物だね」
「はい、日没までに出なければ翌日以降という事にさせていただきますね」
「お気遣い感謝します」
「いえいえ、そちらも突然の事で大変でしょう」
　規模的にも余裕が無さそうではあるが自分達に対してとても丁寧で小屋も提供してくれた、そんな扱いを受けたのでとりあえずは急いで逃げ出す事は無いだろう、ただし説明している間もずっと転生者の胸から視線を外さなかった。


「とりあえずは大丈夫っぽいですかね？」
「そうだね」
　小屋を軽く調べてみたが監視しているような物は見つからなかった、ひとまずはココを拠点にしても大丈夫だろう、しばらくしていると集落の住人が人数分の食糧を持ってきてくれた、内容は質素な物で十分な食料はなさそうだ。
　ずっと気を張っていたせいもあり、少し休めるだけのつもりが気がつくと太陽が沈みきっていた、小屋に照明がついていたのもあり、すっかり油断してしまった。
「今日はもう休もう、サヨ侵入者用のトラップだけ設置してもう寝よう」
「はい」
「そういうのがあるのなら大丈夫かな」
　個人的にはそんなのが無くても大丈夫だとは思うが転生者を安心させるために設置する、もちろんダミーではなくしっかりと作動する物でそうなった時はサヨと恵美が動いてくれるだろう。