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同期に魅せられたデートの日(2)
しおりを挟むホテルでのディナーも終えて、だんだんとそのときが近づくにつれて私の緊張は増していった。
私、このまま本当に外崎とセックスするんだ……。
そう思うとどうしても心と身体がガチガチになるのが止まらない。
だって、元カレと付き合っているとき、こんな豪奢な高級ホテル来たことなかった。
ホテルディナーもしたことなければ、『上に部屋をとってある』なんてドラマの中でしか聞いたことのないセリフを自分に言われるなんて思いもしなかった。
ちょっと待って。
今まで同期として側にいて気が付きもしなかったけれど、この人いわゆるスパダリってやつっぽくない?
噂のスパダリがこんな身近に存在していたなんて……。
私、本当に女としてのアンテナがまったく機能していなかったんだな。
「お前がいつもより口数少なくて変な感じだ」
エレベーターに乗っているとき、外崎がフッと笑いながら言う。
自分でも自覚しているが、そうさせている本人に言われると癪で仕方がない。
私は外崎の揶揄うような言葉に反応を見せず、そっぽを向いた。
「その調子でどんどん俺を意識していってくれ」
これ以上意識しろって?!
私の頭をどうにかしたいの? 外崎は!
恐ろしい奴! どんどんと私の頭の中を桃色に染め上げようとしていくよ!
そんな戦々恐々とした思いでホテルの部屋に入ると、そこはいわゆるスイートルームってやつで、さらに私の心は焦りに焦る。
外崎、どれだけ気合をいれてどれだけお金をつぎ込んだんだろう。考えるだけで尻込みしてしまう。
「と、外崎……別に私、ラブホとかでもよかったのに」
「俺がよくない。一度のチャンスにしがみつく俺にはここまでする意味がある」
「そ、そっか」
つい口をついて出そうになった。
あんたどれだけ私が好きなんだ! と。
まぁ、そんな自惚れたことは口にできない性分なのでただ黙り込み、しずしずと部屋の奥へと足を進める。外崎の視線が何となく痛かった。
コートを脱ぎクローゼットの中に仕舞い、とりあえずソファーに座った。さすがにベッドに直行する勇気はない。
外崎はというと、同じようにコートを置いた後に座る私の目の前までやってきて見下す。
「先にシャワー浴びてきてもいいか?」
「…………う、うん」
そうね、シャワーは必要よね。私もシャワーを浴びたい。
真冬とはいえ天気がいい中半日歩いたら少し汗も掻いてしまったし。
浴室に消えていく外崎の姿を見送った後、私は大きな溜息を吐いて項垂れた。
とりあえず一緒に入ろうって言われなくてよかったし、部屋に入った瞬間にそういう流れにならなくてよかった。
外崎の紳士的な態度にただただ安堵するばかりだ。
…………と、思っていたのも束の間。
シャワーを終え次は私がと思って立ち上がったときに、外崎からとんでもないものを渡された。
目の前に差し出された赤い袋とゴールドのリボンで可愛くラッピングされたそれを、私は訝し気に見つめる。
「なにこれ?」
「シャワー浴びたら、これに着替えてきてくれ」
衣装指定?!
外崎ってバスローブとかより、エロい下着とかで雰囲気を盛り上げながらシたいタイプ?
先日言っていた外崎が元彼女に罵られた性癖がこれくらいのなら、別にそこまで騒ぎ立てることのことじゃない。全然私の許容範囲だ。
実はずっと外崎の性癖が何なのかが気になっていた私は、拍子抜けをして中身を確認せずに『了解~』と軽い感じでシャワーを浴びに行ってしまった。
シャワー後、ラッピングされた袋を開けて驚きだ。
中にはエロい下着ではなく、エロいコスチュームが入っていたのだ。
白いシースルーのネグリジェに、白いガーターベルト、ストッキング。
ほうほう、外崎は見た目に寄らず純白清楚系がお好きなように見えると意外な趣味に驚きつつ袋に手を伸ばすと、次に出てきたモノに目を剥いた。
「…………いやいやいやいや…………これはきついって、外崎」
ネグリジェと同じように白いシースルーの生地で作られた下着。
腰の紐で結ぶタイプのものらしいが、おかしなことに不自然に穴が開いているのだ。お尻に部分に。
この穴の意味するところは?!
私の頭の中がパンツの穴に関しての大喜利大会が始まっている。
いや、待って。
もしかして外崎の性癖って、お尻? つまりはアナルなプレイか?
たしかにそこに抵抗を感じる女性からしてみれば変態に思えることもなくはないけれど、そこまでは……と思う。
肝心なのは私が外崎の要求にどこまでこたえられるかだけど、私ってアナルどうなんだろう。今まで使ったことないからなぁ。
外崎のモノをまだ見ていないから何とも言えないけれど、普通に考えて男性のモノをお尻の穴に入れるのは簡単ではないとは知っている。ある程度の開発が必要なんだって。
ん~……これは要相談だな。
とりあえずは保留にして、私は袋に入っていたものに着替えた。
外崎が私にこれを着てほしいのだと用意したものなのだから、それを無下にはできない。
恥ずかしいけれど。
滅茶苦茶恥ずかしいけれど。
鏡を見て自分でもこれはどうなの? と不安になる。
でもまぁ、このくらいならと腹をくくり、そういえばもうひとつまた違う袋が入っていたなと思い出した私は、それを取り出して中身を確認した。
そして、私は絶句する。
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