嫁になることは契約内容に含まれていません。

(20)

　驚いた私は、もしかして私の知識は間違っていたのだろうかと呆然とした。まさか、あのとき同じ孤児院にいた二つ年上の女の子に聞いた秘密の話に嘘を教えられた？　と焦り、隊長を仰ぎ見る。

「俺が最後までするのは、お前がもう少し慣れてからな」

　私が不審がっていたのが顔から分かったのだろう。説明のようで説明ともつかない話をされて、私がますます疑問を深めたところで、横からミルくんがフォローをしてくれた。

「隊長はね～、遅いんだって！」
「遅い？」

　何が遅いの？　とまた分からずに首を傾げる。
　すると隊長は頭をガシガシと掻きながら、少し気恥ずかしそうに言ってきた。

「俺は人よりイくのに時間がかかるんだよ。だから、処女のお前に初っ端から付き合わせるのは酷な話だから、もうちょっと慣れたらなって話だ」

　そうはっきりと言われてようやく理解できた私は、『分かりました』と返事して肩を竦めながら顔を真っ赤に染めた。とても恥ずかしいことを聞いたような気がする。
　でも、隊長は私のことを気遣ってくれたんだよね。そこは感謝しなきゃ。

「まぁ、でもこれからその二人がたーっぷり喘がせてくれるだろうからな。俺もそれなりに楽しませてもらうし」

　たーっぷりは必要ないんですけどね。本当、ほどほどでいいんです。ほどほどで。

「そうそう。隊長の代わりに俺がた～っぷりね」
「童貞くんが言うねぇ」

　茶化し合いながら場所を代わった隊長とミルくん。今度はミルくんの番というわけだ。
　ちなみにイグニスさんはいまだに私の指しゃぶりを継続中。そろそろ指の皮が剥けてきている頃のような気がする。

「ミル、気をつけろよ」
「うん」

　隊長の何かの忠告に、ミルくんは真剣な顔で頷く。
　恐る恐るといった感じで私の脚に触れてきたミルくんは、私の秘所を見てごくりと咽喉を鳴らした。

「血……出てる。痛くない？」
「痛く、ないよ」

　今はもう痛みはない。ジンジンとはするけれど、でも大丈夫。
　ミルくんは結構心配性で、私が転んで怪我しただけでも泣きそうなほどに心配してくれるのだ。
　多分それは、ミルくんが力の加減ができなくて物を壊してしまうからなんだと思う。自分の気持ちとは裏腹に壊れてしまった物たちを手の中で哀しそうに見つめ、そして泣きそうになりながら謝る。だから、何かを壊したくない、大切にしたいという気持ちが強すぎて身近な人が傷つくのも嫌がるんだ。

　そういうときは私は『次は気をつけようね』とか『壊れたものは直るよ』とは言っているけれど、それでも怯えている節は見受けられる。
　もしかしたら今も怯えているのかもしれない。