嫁になることは契約内容に含まれていません。

(15)

「悪いな、カレン。気の利かねぇ連中で」

　こうやって最後にフォローをしっかり入れてくれる隊長は、この『家族』の中ではさしずめお兄さん。イグニスさんが大好きになってしまう気持ちも分かるし、ミルくんも慕っている。隊長は隊長として、家族を守る大きな存在。
　私もこの一年、そんな彼に陰ながら支えられてきた。

「最後は俺な」

　隊長は、軽く一回キスをしてきた。
　たったそれだけで終わらせてしまったそのキスは、実に隊長らしいものだった。私に気を使って軽めに済ませてくれたのだろう。

　でも、もうみんなとキスしたってことになる。
　ミルくんの食われてしまいそうなキス。イグニスさんの嗜虐的なキス。隊長の優しいキス。一巡したから……もういいよね？

「あの……じゃあ、これで終わりでいいですか？」

　正直、もう身体も心もいっぱいいっぱいだ。
　三人が私の中で溢れるほどにたくさんになって、できることならまた明日一から話し合うということでお開きにしてほしい。

　そんな願いと淡い期待を込めて言ってみたけれど、残念ながら三人はそのつもりはさらさらなかった。
　極上の笑みを向けられて、私の頬が嫌な予感にヒクリと震える。

「初夜はまぐわってなんぼだろ？」

　しょ、初夜を迎える前に、結婚式しなきゃダメなんじゃないでしょうか？！

　そんな私の叫びは、隊長の口の中に消え去っていってしまった。