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しおりを挟む「まぁ、とりあえず落ち着けよ。一から説明するからさ」
「ぜひ分かりやすくお願いします!」
そのときの私は必死な形相だったと思う。
あまりにも事態が唐突過ぎて酔いなんかいつの間にか吹っ飛んでしまったし、何が何やら理解不能すぎて藁にでも縋りたい気分だった。
だって、隊長たちの中で私が嫁になることが決定していたなんて、誰が信じる? 何かの冗談か、もしくは隊長たちも酔っているかどっちかって思うよね。
でも、話を聞くに冗談でも酔っ払いの戯言でもなかった。
隊長たちは本気で私を嫁にするつもりなのだと、嫌でも分かってしまったのだ。
「俺たちズェラ一族は、部隊を家族とする。それは知っているな?」
「はい」
隊長が口癖のように言う言葉。
『俺たちは家族だ』。
それは比喩とかではなくて、ズェラの人たちにとっては常識であり、家族に血のつながりを重視しない。部隊の絆は何よりも強固で、他者には不可侵領域なものだと説明してもらったことがある。
「もちろん、家族だからして子孫を残すために結婚もするし子供もつくる。家族に一人の女性を迎え入れ、そしてみんなの嫁とするんだ。子供が生まれればそれが誰の種であろうと全員が父親だし、みんなで育てる。それがズェラの嫁とり」
「それに私が選ばれた……?」
「その通り。カレンは呑み込みが早いなぁ」
よしよしと褒めながら隊長が頭を撫でてくれる。ミルくんもそれを真似して同じように頭を撫でているし、イグニスさんにいたってはちょっと羨ましそうにこちらを見ていた。どれだけ隊長が好きなのかは分からないけれど、これはまったく羨むことではないと思いますが、イグニスさん!
みんなの様子に呆然としていると、今度はミルくんが目をキラキラと輝かせながら食い気味に言ってくる。
「俺ね! ずっとカレンちゃんがお嫁さんになったらいいなぁって思っていたんだ! ってか絶対そうしたいって思ってた! だってさ、カレンちゃんは今まで来た女の人と違って、俺がどれだけ物を壊しても怒らなかったし、根気強く力加減も教えてくれたでしょ? 俺、ここに来てこんなに優しくしてもらったの初めてだったからさ。ずーっと一緒にいたかったんだぁ」
えへへ、と屈託のない無邪気な笑顔を向けてくるミルくんは、本当に純粋にそう思ってくれているのだろう。彼は嘘がつけない子だから、本心からそう言ってくれているに違いない。
それは分かるしその気持ちはありがたいんだけど、そこから嫁にするとか話が飛躍しすぎじゃないかなぁと思う。
きっと、これくらいやってくれる女性、王都にいっぱいいるよ。ミルくん、視野を広く持とう?
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