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第二八二話 シャルロッタ 一六歳 使役する者 〇二
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——ゴウウウッ! という火柱が戦場より離れた場所で巻き起こったことで、両軍は戦場以外でも何かが起きていることをようやく把握した。
「……どうやら別動隊を考えていたのは双方同じだったってことだね」
クリストフェルが頬を伝う汗を手の甲で拭いながら婚約者がいるであろう、遠くに見える炎に目をこらす……クラカト丘陵の中腹付近、彼はそこまで降りて味方を鼓舞し戦いを続けていた。
すでにどれだけの敵兵を倒したか覚えていない……出来るだけ相手を殺さずにひたすらに無力化していくが、もしかしたら逃げ出した相手が再び戻ってきている可能性もなくはない。
すでにその辺りにいる兵士では敵わないほど、彼の剣は鋭く速かったため殺さずに無力化できているが、味方にはそんな余裕がないため殺し殺され、という血腥い戦いがそこかしこで巻き起こっている。
「……何人殺した? いや無理に殺さなくていいものは殺していないはず……」
「は、反逆者めッ!」
「くっ?!」
背後からいきなり怒号と共に白刃が煌めくが、クリストフェルはまるで背後に目があるかのようにその一撃を躱すと、名剣蜻蛉を振るい一刀の元に切って捨てる。
肉を切り裂く感触と共に血を吹き出しながら第一王子派の兵士が絶望に満ちた表情で地面へと倒れるが、クリストフェルはその兵士の死体を見つめながら悔しさに表情を歪めた。
殺してしまった……今の一撃は躱せるはずだったのに、考え事をしていて一瞬だが反応が遅れてしまったのだ。
それゆえに反射的に振り抜いた剣は一撃で相手の胴を切り裂き、絶命に至らしめている……以前の彼であればここまでの剣技は持ち合わせておらず、怪我を負っていたに違いない。
「……すまない、地獄で待っていてくれ」
「うおおおおっ!」
感傷に浸る暇などなく、クリストフェルに向かって複数の兵士が剣を振り翳して襲いかかってくる……彼らは全てイングウェイ王国の民である。
幼い頃よりクリストフェルは王子として最高の教育をうけ、王族としての心構えを教えられている。
民を導き、民を護り、民を従える……イングウェイ王国の王族は連綿と建国以来慈愛と威厳を持ってこの国を治めてきたのだ。
内戦の危機は何度も起きている、だがその度に団結して国を纏めてきた彼らの末裔が今ひとつの玉座を巡って争っているなど先祖は予想していただろうか?
「……手加減できないぞ!」
「うぎゃああっ!」
神速といっても過言ではないほどの剣の冴え……クリストフェルが剣を振るうたびに第一王子派の兵士が倒れていく……疲労と困惑、そして強い罪悪感を抱えながら彼は一瞬で一〇人ほどの兵士を切り伏せて見せた。
人間とは思えない戦闘能力を見せつけられた第一王子派の兵士たちは慌てて後退していくが、それを見た味方の兵士から喝采が生まれるのとは正反対に、クリストフェルの心は少しずつ沈んでいくような気がした。
地面に倒れた兵士たちにも家族がおり、家庭があるだろう……未来があるのだ、それを彼が奪ってしまった気がしてどっしりと肩に重いものが乗ったような気分にさせられる。
「……すまない……」
『……本当は人を殺すのが楽しいのでは?』
「……っ!?」
地面に倒れた兵士たちの死体を見つめながらクリストフェルは呟くが、ふと背後から誰かに声をかけられたような気がして振り返るがそこには誰もいない。
幻聴か……とクリストフェルがホッとしたのも束の間、ピタリとブーツに何かが触れた気がして下を向くと、先ほど倒したはずの兵士の手が彼のブーツを掴んでいることに気がついた。
明らかなる異変にクリストフェルが思わず飛び退くと、兵士の死体がギギギ……とまるで作り物のように通常では考えられないような角度で持ち上がると、彼を見つめた命なき兵士の口元が笑うように歪む。
死霊術か? とクリストフェルが剣を構え直すと兵士の死体はケタケタと笑いながら彼に向かって話しかけてきた。
『……お、王子様はひどいなあ……』
「何を……」
『俺たちをこうやって殺して……血で濡れた手であの辺境の翡翠姫の肩を抱くんだぜ……』
「……!!」
その言葉にクリストフェルは思わず息を呑む……それが図星であったからだ。
今までずっと考えないようにしていた、自分の手がすでに自国民の血で汚れてしまっており、綺麗ではないということに。
だがこれまでの戦いで敵とはいえ少なくない数の自国民を殺してしまっている、仕方ないという気持ちもどこかにあったのだ。
だが、改めて自らが殺した兵士からその言葉を告げられたことで、良心の呵責というものが首をもたげて来るのを感じる。
そしてあの美しいシャルロッタの肩に血塗られた手で触れていいのか、という強い恐怖が心の中に湧き上がっていく……汚れる? ケガレル? 彼女を汚してしまう? あの美しい笑顔を僕が?
「ぼ、僕は……王位に……彼女のためにも……」
『……自分があの女を好きにしたいからって俺たちを犠牲にして』
『どうせあの女を抱く時も、独りよがりに……好き放題にするんだろう?』
『俺たちを殺した時のようになぁ……? 泣き叫ぶ辺境の翡翠姫に思うがまま腰を打ちつけて……』
「……ぼ、僕は……彼女を愛して……」
クリストフェルの心に重くのしかかる恐怖……美しい自らの婚約者の涙を想像してしまい、彼は強い恐怖を感じて震える。
違う、そうではない……自分とシャルロッタはお互いをちゃんと想いあっているとわかっている、初めて出会った時には少し一方的な気持ちだったかもしれないが、今ではそうではないと思っている。
お互いが大事なものだと理解しているからだ……だが、それの思いに自らの心が強く否定する、それは考えても見なかった、言われても気にしなかった言葉。
『ホントウニ? アノオンナノコトヲ、スベテリカイシテイルノ? ドウミテモカイブツジャナイ』
クリストフェルの心に強い猜疑心のようなものが生まれる……その言葉に彼は心臓が締め付けられるような苦しさを覚える。
違う、僕は彼女を理解したい、彼女のことをちゃんと愛したい、そして彼女に認められる存在に……王位を目指すと決めたのは全て彼女の。
だが、それにしても彼の求愛に答えようとしないシャルロッタをどうしたらいいのか、やはり自らの手で持って純潔を奪い、自らのものとするしか……。
そこまで考えたクリストフェルは急に何かがおかしいと、心の隅にあった冷静な自分が告げているような気がしてふと我に返る。
違う、僕は彼女のことをそんなふうに扱いたいわけじゃない、だからこの声は……!
そして、とっさに背後に向かって思い切り剣で切りつける……その一撃で背後にいたものが悲鳴をあげた。
「グキャアアッ! き、貴様……妾の顔を……」
「……お前は確か……」
クリストフェルの背後に明らかに人ではない何かが立っている……人形のように整った顔には彼が振るった剣の一撃により大きな傷が走っており、そこからはドス黒い血液が流れ出している。
美しい姿ではあるがどことなく作り物のような違和感を感じる存在、そしてその背には白亜の翼が広がっており、一見すると天使のような美しさを備えた女性が憎々しげな表情で彼を見つめていた。
その姿には見覚えがある……確か六情の悪魔フェリピニアーダ、だったか? 確かあの時シャルロッタに異変を起こした張本人。
そして先ほどまで自分に話しかけていたと思った兵士たちは物言わぬ骸のまま地面へと倒れたままだった……全てが幻覚だということだろうか?
「……落ちるかと思ったんじゃがの……」
「僕は覚悟をちゃんと決めているよ、人の命を奪うことも、血塗られた手なのも理解している」
「……ク……クハ! クハハッ!」
「……何がおかしい?」
「いやいや、これは失礼した勇者よ……見事なり」
フェリピニアーダはニヤリと歪んだ笑みを浮かべると、切り裂かれた顔を一度手のひらで撫でると、まるでそれまであった傷がなかったかのように修復されていった。
悪魔の存在はこのイングウェイ王国でも歴史上に出てくる怪物として知られており、王家には過去に大陸で起きた事件なども含め、一般の目には触れない書物がいくつか残されている。
王子という立場上、そういった書物に眼を通すこともあったため、クリストフェルは不完全ながらも悪魔についての知識を多少なりとも有している。
「確か、お前は第二階位だったな」
「そう、妾は淫猥なるノルザルツに仕える第二階位、六情の悪魔フェリピニアーダ……天使にも近い存在じゃよ」
人間とは違う別格の存在……決して人の身では対峙してはいけない圧倒的な恐怖を感じてクリストフェルの頬に汗が再び伝う。
だがそんな彼を見てニヤリと笑ったフェリピニアーダはふわりと翼で自らを覆うような仕草を見せると、片方の翼だけを広げた。
クリストフェルの心臓が跳ね上がる……そこに現れたのは紫色の美しい髪と瞳を持った少女、聖女だけが許可された大聖女のローブを身に纏ったソフィーヤ・ハルフォード公爵令嬢だったからだ。
「な……ソフィーヤ……!?」
「……クハ! 運命の再会じゃ……我は低俗な戦いなど興味がなくての、見たいのは全ての絶望なのじゃよ」
「クリストフェル様……」
ソフィーヤは愛するクリストフェルの顔を見ると、儚げな表情を浮かべたまま一歩一歩前に出る……だが彼女の手には不気味な武器が握られていることに気がつくと、彼は剣を持つ手に力を込める。
それは彼女の手に握られるには無骨すぎた、まるで人を殺すためだけにデザインされたような巨大な片刄の斧であり、ドス黒い瘴気のようなものを立ち昇らせている。
だが次の瞬間、巨大な斧をまるで小剣でも振り回すかのようにソフィーヤの鋭い一撃がクリストフェルを襲う。
キャアアアン! という音を立ててお互いの武器が衝突し火花を散らすが……クリストフェルを見ているソフィーヤの顔には張り付いたような笑顔が浮かんでいた。
「……あの女に取られるくらいなら……私のものにするために殿下を殺すッ!」
「……どうやら別動隊を考えていたのは双方同じだったってことだね」
クリストフェルが頬を伝う汗を手の甲で拭いながら婚約者がいるであろう、遠くに見える炎に目をこらす……クラカト丘陵の中腹付近、彼はそこまで降りて味方を鼓舞し戦いを続けていた。
すでにどれだけの敵兵を倒したか覚えていない……出来るだけ相手を殺さずにひたすらに無力化していくが、もしかしたら逃げ出した相手が再び戻ってきている可能性もなくはない。
すでにその辺りにいる兵士では敵わないほど、彼の剣は鋭く速かったため殺さずに無力化できているが、味方にはそんな余裕がないため殺し殺され、という血腥い戦いがそこかしこで巻き起こっている。
「……何人殺した? いや無理に殺さなくていいものは殺していないはず……」
「は、反逆者めッ!」
「くっ?!」
背後からいきなり怒号と共に白刃が煌めくが、クリストフェルはまるで背後に目があるかのようにその一撃を躱すと、名剣蜻蛉を振るい一刀の元に切って捨てる。
肉を切り裂く感触と共に血を吹き出しながら第一王子派の兵士が絶望に満ちた表情で地面へと倒れるが、クリストフェルはその兵士の死体を見つめながら悔しさに表情を歪めた。
殺してしまった……今の一撃は躱せるはずだったのに、考え事をしていて一瞬だが反応が遅れてしまったのだ。
それゆえに反射的に振り抜いた剣は一撃で相手の胴を切り裂き、絶命に至らしめている……以前の彼であればここまでの剣技は持ち合わせておらず、怪我を負っていたに違いない。
「……すまない、地獄で待っていてくれ」
「うおおおおっ!」
感傷に浸る暇などなく、クリストフェルに向かって複数の兵士が剣を振り翳して襲いかかってくる……彼らは全てイングウェイ王国の民である。
幼い頃よりクリストフェルは王子として最高の教育をうけ、王族としての心構えを教えられている。
民を導き、民を護り、民を従える……イングウェイ王国の王族は連綿と建国以来慈愛と威厳を持ってこの国を治めてきたのだ。
内戦の危機は何度も起きている、だがその度に団結して国を纏めてきた彼らの末裔が今ひとつの玉座を巡って争っているなど先祖は予想していただろうか?
「……手加減できないぞ!」
「うぎゃああっ!」
神速といっても過言ではないほどの剣の冴え……クリストフェルが剣を振るうたびに第一王子派の兵士が倒れていく……疲労と困惑、そして強い罪悪感を抱えながら彼は一瞬で一〇人ほどの兵士を切り伏せて見せた。
人間とは思えない戦闘能力を見せつけられた第一王子派の兵士たちは慌てて後退していくが、それを見た味方の兵士から喝采が生まれるのとは正反対に、クリストフェルの心は少しずつ沈んでいくような気がした。
地面に倒れた兵士たちにも家族がおり、家庭があるだろう……未来があるのだ、それを彼が奪ってしまった気がしてどっしりと肩に重いものが乗ったような気分にさせられる。
「……すまない……」
『……本当は人を殺すのが楽しいのでは?』
「……っ!?」
地面に倒れた兵士たちの死体を見つめながらクリストフェルは呟くが、ふと背後から誰かに声をかけられたような気がして振り返るがそこには誰もいない。
幻聴か……とクリストフェルがホッとしたのも束の間、ピタリとブーツに何かが触れた気がして下を向くと、先ほど倒したはずの兵士の手が彼のブーツを掴んでいることに気がついた。
明らかなる異変にクリストフェルが思わず飛び退くと、兵士の死体がギギギ……とまるで作り物のように通常では考えられないような角度で持ち上がると、彼を見つめた命なき兵士の口元が笑うように歪む。
死霊術か? とクリストフェルが剣を構え直すと兵士の死体はケタケタと笑いながら彼に向かって話しかけてきた。
『……お、王子様はひどいなあ……』
「何を……」
『俺たちをこうやって殺して……血で濡れた手であの辺境の翡翠姫の肩を抱くんだぜ……』
「……!!」
その言葉にクリストフェルは思わず息を呑む……それが図星であったからだ。
今までずっと考えないようにしていた、自分の手がすでに自国民の血で汚れてしまっており、綺麗ではないということに。
だがこれまでの戦いで敵とはいえ少なくない数の自国民を殺してしまっている、仕方ないという気持ちもどこかにあったのだ。
だが、改めて自らが殺した兵士からその言葉を告げられたことで、良心の呵責というものが首をもたげて来るのを感じる。
そしてあの美しいシャルロッタの肩に血塗られた手で触れていいのか、という強い恐怖が心の中に湧き上がっていく……汚れる? ケガレル? 彼女を汚してしまう? あの美しい笑顔を僕が?
「ぼ、僕は……王位に……彼女のためにも……」
『……自分があの女を好きにしたいからって俺たちを犠牲にして』
『どうせあの女を抱く時も、独りよがりに……好き放題にするんだろう?』
『俺たちを殺した時のようになぁ……? 泣き叫ぶ辺境の翡翠姫に思うがまま腰を打ちつけて……』
「……ぼ、僕は……彼女を愛して……」
クリストフェルの心に重くのしかかる恐怖……美しい自らの婚約者の涙を想像してしまい、彼は強い恐怖を感じて震える。
違う、そうではない……自分とシャルロッタはお互いをちゃんと想いあっているとわかっている、初めて出会った時には少し一方的な気持ちだったかもしれないが、今ではそうではないと思っている。
お互いが大事なものだと理解しているからだ……だが、それの思いに自らの心が強く否定する、それは考えても見なかった、言われても気にしなかった言葉。
『ホントウニ? アノオンナノコトヲ、スベテリカイシテイルノ? ドウミテモカイブツジャナイ』
クリストフェルの心に強い猜疑心のようなものが生まれる……その言葉に彼は心臓が締め付けられるような苦しさを覚える。
違う、僕は彼女を理解したい、彼女のことをちゃんと愛したい、そして彼女に認められる存在に……王位を目指すと決めたのは全て彼女の。
だが、それにしても彼の求愛に答えようとしないシャルロッタをどうしたらいいのか、やはり自らの手で持って純潔を奪い、自らのものとするしか……。
そこまで考えたクリストフェルは急に何かがおかしいと、心の隅にあった冷静な自分が告げているような気がしてふと我に返る。
違う、僕は彼女のことをそんなふうに扱いたいわけじゃない、だからこの声は……!
そして、とっさに背後に向かって思い切り剣で切りつける……その一撃で背後にいたものが悲鳴をあげた。
「グキャアアッ! き、貴様……妾の顔を……」
「……お前は確か……」
クリストフェルの背後に明らかに人ではない何かが立っている……人形のように整った顔には彼が振るった剣の一撃により大きな傷が走っており、そこからはドス黒い血液が流れ出している。
美しい姿ではあるがどことなく作り物のような違和感を感じる存在、そしてその背には白亜の翼が広がっており、一見すると天使のような美しさを備えた女性が憎々しげな表情で彼を見つめていた。
その姿には見覚えがある……確か六情の悪魔フェリピニアーダ、だったか? 確かあの時シャルロッタに異変を起こした張本人。
そして先ほどまで自分に話しかけていたと思った兵士たちは物言わぬ骸のまま地面へと倒れたままだった……全てが幻覚だということだろうか?
「……落ちるかと思ったんじゃがの……」
「僕は覚悟をちゃんと決めているよ、人の命を奪うことも、血塗られた手なのも理解している」
「……ク……クハ! クハハッ!」
「……何がおかしい?」
「いやいや、これは失礼した勇者よ……見事なり」
フェリピニアーダはニヤリと歪んだ笑みを浮かべると、切り裂かれた顔を一度手のひらで撫でると、まるでそれまであった傷がなかったかのように修復されていった。
悪魔の存在はこのイングウェイ王国でも歴史上に出てくる怪物として知られており、王家には過去に大陸で起きた事件なども含め、一般の目には触れない書物がいくつか残されている。
王子という立場上、そういった書物に眼を通すこともあったため、クリストフェルは不完全ながらも悪魔についての知識を多少なりとも有している。
「確か、お前は第二階位だったな」
「そう、妾は淫猥なるノルザルツに仕える第二階位、六情の悪魔フェリピニアーダ……天使にも近い存在じゃよ」
人間とは違う別格の存在……決して人の身では対峙してはいけない圧倒的な恐怖を感じてクリストフェルの頬に汗が再び伝う。
だがそんな彼を見てニヤリと笑ったフェリピニアーダはふわりと翼で自らを覆うような仕草を見せると、片方の翼だけを広げた。
クリストフェルの心臓が跳ね上がる……そこに現れたのは紫色の美しい髪と瞳を持った少女、聖女だけが許可された大聖女のローブを身に纏ったソフィーヤ・ハルフォード公爵令嬢だったからだ。
「な……ソフィーヤ……!?」
「……クハ! 運命の再会じゃ……我は低俗な戦いなど興味がなくての、見たいのは全ての絶望なのじゃよ」
「クリストフェル様……」
ソフィーヤは愛するクリストフェルの顔を見ると、儚げな表情を浮かべたまま一歩一歩前に出る……だが彼女の手には不気味な武器が握られていることに気がつくと、彼は剣を持つ手に力を込める。
それは彼女の手に握られるには無骨すぎた、まるで人を殺すためだけにデザインされたような巨大な片刄の斧であり、ドス黒い瘴気のようなものを立ち昇らせている。
だが次の瞬間、巨大な斧をまるで小剣でも振り回すかのようにソフィーヤの鋭い一撃がクリストフェルを襲う。
キャアアアン! という音を立ててお互いの武器が衝突し火花を散らすが……クリストフェルを見ているソフィーヤの顔には張り付いたような笑顔が浮かんでいた。
「……あの女に取られるくらいなら……私のものにするために殿下を殺すッ!」
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