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(幕間) ある記録 〇一
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「彼の記憶ですか? そうですね……優しい人でしたよ」
私の目の前で少女を抱き抱えながらそう語る初老の女性の目は優しく、遠い記憶の中にある一人の人物を思い出しているのか、どこか悲しげな色を湛えていた。
かつてこの世界には魔王という脅威があり、人類は滅亡寸前まで追い詰められた時期があった。
世界を滅ぼそうという魔王の野望は一人の勇者が立ち上がったことで打ち砕かれたと言っても良い……それも遠い過去の出来事だ。
目の前で少女をあやしている女性はかつて勇者と共に辛く長い旅路の果てに、魔王を倒した勇者パーティの生き残りの一人である。
彼女の名前は※※※※※……現在ではエリート魔法使いを育てる魔法大学長として、数多くの優秀な魔法使いを育てた偉人の一人だ。
「あの人が英雄的な活躍をしたのは事実です、でも世間に伝えられている彼の姿は少し誇張されてますね……もっと本当の彼はずっと人間らしい人でしたよ」
勇者の物語……すでに長い歳月が経過した今でも語り継がれる彼の偉業は、すでに伝説となっており彼の行動、言葉、英雄的な活躍は美談として書物などにまとまっている。
発刊された書物によれば彼は正義感に溢れ、老若男女全てに慈悲深く、そして誰よりも勇気にあふれた人物として描かれている。
だが……私は本当の勇者の姿を知りたくてその時何が起きていたのかを直接その時の仲間に話を聞きにきたのだ、と話すと※※※※※は少し困ったような表情を浮かべて笑うのだった。
「いい人でした、優しくて少しおっちょこちょいで……それでも私たち旅の仲間はみんな彼のことが好きでした、そうですね……彼に愛情も感じていました」
※※※※※はほんの少しだけ表情を緩ませる……そういえば数年前に旅の仲間達と勇者に関するゴシップが書かれたことがある。
勇者はとんでもないクズ野郎で、旅の仲間達を弄ぶだらしない男だったというものだ……しかしその話は旅の仲間である※※※※※達がすぐに否定していた。
勇者は旅の間中絶対に彼女達へと手を出すことはなかった、もしそんなことをしていたのであれば私たちは決して最後まで旅をしなかっただろうという声明を出した。
それによりゴシップはすぐに消え去り、勇者の伝説がさらに輝きを増したのは皮肉だろうか? それ以来勇者伝説は神格化され、さらなる美談を生み出していくこととなる。
「……本当に好きでした、私はずっと彼に選んで欲しかった……でも彼はまっすぐ別の方向を見続けていたので……私から好きだって言えなかったんですよ、おかしいでしょ?」
※※※※※は膝の上で彼女を見上げる少女……彼女の孫娘にあたる存在だが、その子を優しく見つめて微笑むとそっと頭を撫でてから寂しそうに窓の外を見つめる。
復興した街並みは数十年前まで廃墟同然だったと言われても信じられないほど明るく、人々の声が響いている。
この功績を成し遂げた勇者はもういない、あの時魔王と共に死んでしまったのだから。
「仲間もみんなあの人のことが好きでした、今度は※※※※※に話を聞いてみてあげて、ずっと彼女も話したがっているから」
※※※※※の口から旅の仲間この国の大神官である※※※※※の名前が出たことで、私は近寄りがたい神々しさを持つ神の寵愛を一心に受ける女性の姿を思い浮かべる。
実はここに来る前に※※※※※に話を聞かせて欲しいと聖教へと嘆願は出してある……※※※※※の話を聞いたらすぐに向かうつもりだと伝えると、※※※※※は優しく微笑むと黙って頷いた。
旅の仲間全員に話を聞く……それは今回私がある本を書き上げようと思っているから、と伝えている……『勇者と旅の仲間』という平凡極まりないタイトルを選ぼうと考えているのは、それ以上を表す言葉を考え付かなかったからだ。
「……もう私には愛する主人もいるし、こうやって孫娘を抱いているというのに……それでも時折思い出してしまうのですよ、勇者と共に歩めたらどうなっていたか、と」
くすくす笑いながら孫娘の顔を見て微笑むその姿は、とてもではないが現状に満足をしていないなどという表情は微塵も感じられない。
ただ……遠い過去に一緒に旅をして、そして想いを寄せたその人のことをずっと忘れずに生きているのだということだけは私にもわかった。
そして勇者はすでにいない……魔王と共に死んだことで、その未来は儚くも打ち砕かれてしまったのだから。
だが※※※※※は私の顔を見て優しく微笑むと、気にしていないとばかりに首を横に振った。
「……もう昔の話よ、あの人はいない……でも今の私には家族もいて普通に歳をとったわ……今が不幸せなんて思っていないの、だから昔の話なのよ」
「……そうですか※※※※※はそんなことを……そうね、でももう話しても良い頃かしらね」
白い神官服……他の誰よりも美しく装飾された衣服を身に纏った※※※※※よりもほんの少しだけ若い女性が目の前で少し感慨深げに少し遠くを見つめる。
彼女の名前は※※※※※……聖教の最高位である大神官として、この国の信仰を一心に集める美しい女性である。
見た目は※※※※※と違い少し若く見えるが、それは彼女が自身が神の使徒であるという誓いをたて、独身のままいることに影響を受けているからだろうか?
年齢以上に美しい女性だと私は思う……子供の頃、彼女が神事に参加している様子を見たことがあるが女神そのものかと思うくらい美しいと私は感じた。
その頃からずっと彼女は美しいままだ……長い年月が経っていても、※※※※※は神々しいと感じる美しさを保っている。
「どこから話しましょうかね……私は勇者と同じ地方の出身なのよ、あまり言ってないけどね……」
椅子の背もたれに身を預けながら※※※※※は天井に目を向けてポツポツと口を開いていった。
勇者と出会った時、彼女は神の言葉を届けるための旅の途中に盗賊に囚われ、もう少しで命の危険があるところまで追い詰められていたという。
そこへ勇者が通りかかり、盗賊を退治したことで※※※※※は旅の仲間としては最初の一人となったとされている。
当時は治安が非常に悪く、街道沿いを歩いていても魔物に襲われるかそれとも盗賊などの無法者に襲われるかのどちらかだったため、※※※※※の行動は不用心にも程があるとさえ思えた。
「……失恋したのよ、年上のお兄さんに恋をしてフラれて、それで一生を神の元で過ごそうって決めて……失恋を忘れるために巡礼を行なっている最中だったの」
大神官は少し悪戯っぽい笑顔を浮かべて笑う……その自然な表情は、神事に携わっている時の神々しい姿からは大きくかけ離れた本当の彼女の表情なのだと私は思った。
神に仕える大神官の恋愛事情などは勇者の伝説には不要だったのだろう、一切そういう話は聞いたことがなかった。
だから私が驚いているのを見て、嬉しそうに笑うと※※※※※は椅子に座る私にそっとお茶を飲むように促してきた。
「こういう話ができなくなって……でもずっと私は本当の自分を押し隠してきたから……※※※※※はわかってたんでしょうね、貴女をよこしたのもわかる気がするわ」
お茶を飲む私を見つめてにっこりと笑うと、※※※※※は机の引き出しを開けると小さな手帳のようにも見える本を一冊取り出してパラパラとめくる。
本のあちこちは薄汚れ、所々に赤黒いシミが付着しているのがわかる……それを見つめる私に気がついた※※※※※はにっこりと笑うと『ずっとつけているの、記憶が風化しないようにって』と答えた。
そこに書かれているのは勇者と※※※※※達との旅の記憶なのだ、と気がつくと見せて欲しいと伝えたのだが、※※※※※は悪戯っぽい笑みを浮かべて『ダメよ』とだけ答えた。
「これは大事な記憶なの、死ぬまで人には見せないって決めてるの……死ぬ時には一緒に埋めてもらって私の気持ちを彼の元へと届けるのよ」
そう話す※※※※※の表情はまるで昔に戻ったかのように恍惚としたものへと変化する……彼女にとっては勇者は信仰の対象にも近しい存在なのだろう。
私が※※※※※の言葉を待っていると、彼女はそのまま古い記憶を一つ一つ思い出すように話し始める。
勇者が少し気恥ずかしそうに彼女に微笑んでくれた時のこと、一緒に旅をするようになって次第に勇者のことを意識し始めた時のこと、魔物を倒した時に一緒になって喜んだ時のことをまるで昨日起きた出来事のように話す※※※※※の姿は、少女に戻ったかのようだった。
「……一度ね、※※※※※達とは別に彼と共に祭りに参加したことがあるのよ……そこで私は彼に自分の想いを伝えたわ」
※※※※※の顔をまじまじと見つめてしまう……気を落ち着けてから気持ちを伝えた時の勇者はどうだったのか? と尋ねると彼女はにっこりと笑うと『今はそういうことを考える気にならない、って言われたわ』と少し残念そうな顔で微笑んだ。
だがそれからも彼女は昔の思い出を話し続ける……堰を切ったように話している彼女の姿を見て、私は少し意外な気分になった。
だがある程度話が落ち着いた段階で、私は彼女へと尋ねた……そうしなければこの女性は延々と面会時間ギリギリまで話し続けてしまうような気がしたからだ。
「私にとってどういう人だったかって? 当たり前だけど……私にとっては大事な人、でも気持ちを確認する前にいなくなってしまった過去の思い出……私は過去の思い出のためにずっと一人でいるのよ」
そう語る※※※※※の表情は嬉しそうだが、どこか悲しげな色がある……魔法使いである※※※※※と違い、はっきりと自分の意思を伝えた彼女にも応えなかった勇者。
そのことについてどう思うか? と尋ねると※※※※※は少し考えた後に、拒絶するように私に向かって話しかけてきた。
「それは私以外の……そうね王都にいる騎士団きっての名指揮官である※※※※※に話を聞いて、そこから貴女が判断してくれればいいわ、私はもう話しすぎた、これ以上話すことはないわ」
私の目の前で少女を抱き抱えながらそう語る初老の女性の目は優しく、遠い記憶の中にある一人の人物を思い出しているのか、どこか悲しげな色を湛えていた。
かつてこの世界には魔王という脅威があり、人類は滅亡寸前まで追い詰められた時期があった。
世界を滅ぼそうという魔王の野望は一人の勇者が立ち上がったことで打ち砕かれたと言っても良い……それも遠い過去の出来事だ。
目の前で少女をあやしている女性はかつて勇者と共に辛く長い旅路の果てに、魔王を倒した勇者パーティの生き残りの一人である。
彼女の名前は※※※※※……現在ではエリート魔法使いを育てる魔法大学長として、数多くの優秀な魔法使いを育てた偉人の一人だ。
「あの人が英雄的な活躍をしたのは事実です、でも世間に伝えられている彼の姿は少し誇張されてますね……もっと本当の彼はずっと人間らしい人でしたよ」
勇者の物語……すでに長い歳月が経過した今でも語り継がれる彼の偉業は、すでに伝説となっており彼の行動、言葉、英雄的な活躍は美談として書物などにまとまっている。
発刊された書物によれば彼は正義感に溢れ、老若男女全てに慈悲深く、そして誰よりも勇気にあふれた人物として描かれている。
だが……私は本当の勇者の姿を知りたくてその時何が起きていたのかを直接その時の仲間に話を聞きにきたのだ、と話すと※※※※※は少し困ったような表情を浮かべて笑うのだった。
「いい人でした、優しくて少しおっちょこちょいで……それでも私たち旅の仲間はみんな彼のことが好きでした、そうですね……彼に愛情も感じていました」
※※※※※はほんの少しだけ表情を緩ませる……そういえば数年前に旅の仲間達と勇者に関するゴシップが書かれたことがある。
勇者はとんでもないクズ野郎で、旅の仲間達を弄ぶだらしない男だったというものだ……しかしその話は旅の仲間である※※※※※達がすぐに否定していた。
勇者は旅の間中絶対に彼女達へと手を出すことはなかった、もしそんなことをしていたのであれば私たちは決して最後まで旅をしなかっただろうという声明を出した。
それによりゴシップはすぐに消え去り、勇者の伝説がさらに輝きを増したのは皮肉だろうか? それ以来勇者伝説は神格化され、さらなる美談を生み出していくこととなる。
「……本当に好きでした、私はずっと彼に選んで欲しかった……でも彼はまっすぐ別の方向を見続けていたので……私から好きだって言えなかったんですよ、おかしいでしょ?」
※※※※※は膝の上で彼女を見上げる少女……彼女の孫娘にあたる存在だが、その子を優しく見つめて微笑むとそっと頭を撫でてから寂しそうに窓の外を見つめる。
復興した街並みは数十年前まで廃墟同然だったと言われても信じられないほど明るく、人々の声が響いている。
この功績を成し遂げた勇者はもういない、あの時魔王と共に死んでしまったのだから。
「仲間もみんなあの人のことが好きでした、今度は※※※※※に話を聞いてみてあげて、ずっと彼女も話したがっているから」
※※※※※の口から旅の仲間この国の大神官である※※※※※の名前が出たことで、私は近寄りがたい神々しさを持つ神の寵愛を一心に受ける女性の姿を思い浮かべる。
実はここに来る前に※※※※※に話を聞かせて欲しいと聖教へと嘆願は出してある……※※※※※の話を聞いたらすぐに向かうつもりだと伝えると、※※※※※は優しく微笑むと黙って頷いた。
旅の仲間全員に話を聞く……それは今回私がある本を書き上げようと思っているから、と伝えている……『勇者と旅の仲間』という平凡極まりないタイトルを選ぼうと考えているのは、それ以上を表す言葉を考え付かなかったからだ。
「……もう私には愛する主人もいるし、こうやって孫娘を抱いているというのに……それでも時折思い出してしまうのですよ、勇者と共に歩めたらどうなっていたか、と」
くすくす笑いながら孫娘の顔を見て微笑むその姿は、とてもではないが現状に満足をしていないなどという表情は微塵も感じられない。
ただ……遠い過去に一緒に旅をして、そして想いを寄せたその人のことをずっと忘れずに生きているのだということだけは私にもわかった。
そして勇者はすでにいない……魔王と共に死んだことで、その未来は儚くも打ち砕かれてしまったのだから。
だが※※※※※は私の顔を見て優しく微笑むと、気にしていないとばかりに首を横に振った。
「……もう昔の話よ、あの人はいない……でも今の私には家族もいて普通に歳をとったわ……今が不幸せなんて思っていないの、だから昔の話なのよ」
「……そうですか※※※※※はそんなことを……そうね、でももう話しても良い頃かしらね」
白い神官服……他の誰よりも美しく装飾された衣服を身に纏った※※※※※よりもほんの少しだけ若い女性が目の前で少し感慨深げに少し遠くを見つめる。
彼女の名前は※※※※※……聖教の最高位である大神官として、この国の信仰を一心に集める美しい女性である。
見た目は※※※※※と違い少し若く見えるが、それは彼女が自身が神の使徒であるという誓いをたて、独身のままいることに影響を受けているからだろうか?
年齢以上に美しい女性だと私は思う……子供の頃、彼女が神事に参加している様子を見たことがあるが女神そのものかと思うくらい美しいと私は感じた。
その頃からずっと彼女は美しいままだ……長い年月が経っていても、※※※※※は神々しいと感じる美しさを保っている。
「どこから話しましょうかね……私は勇者と同じ地方の出身なのよ、あまり言ってないけどね……」
椅子の背もたれに身を預けながら※※※※※は天井に目を向けてポツポツと口を開いていった。
勇者と出会った時、彼女は神の言葉を届けるための旅の途中に盗賊に囚われ、もう少しで命の危険があるところまで追い詰められていたという。
そこへ勇者が通りかかり、盗賊を退治したことで※※※※※は旅の仲間としては最初の一人となったとされている。
当時は治安が非常に悪く、街道沿いを歩いていても魔物に襲われるかそれとも盗賊などの無法者に襲われるかのどちらかだったため、※※※※※の行動は不用心にも程があるとさえ思えた。
「……失恋したのよ、年上のお兄さんに恋をしてフラれて、それで一生を神の元で過ごそうって決めて……失恋を忘れるために巡礼を行なっている最中だったの」
大神官は少し悪戯っぽい笑顔を浮かべて笑う……その自然な表情は、神事に携わっている時の神々しい姿からは大きくかけ離れた本当の彼女の表情なのだと私は思った。
神に仕える大神官の恋愛事情などは勇者の伝説には不要だったのだろう、一切そういう話は聞いたことがなかった。
だから私が驚いているのを見て、嬉しそうに笑うと※※※※※は椅子に座る私にそっとお茶を飲むように促してきた。
「こういう話ができなくなって……でもずっと私は本当の自分を押し隠してきたから……※※※※※はわかってたんでしょうね、貴女をよこしたのもわかる気がするわ」
お茶を飲む私を見つめてにっこりと笑うと、※※※※※は机の引き出しを開けると小さな手帳のようにも見える本を一冊取り出してパラパラとめくる。
本のあちこちは薄汚れ、所々に赤黒いシミが付着しているのがわかる……それを見つめる私に気がついた※※※※※はにっこりと笑うと『ずっとつけているの、記憶が風化しないようにって』と答えた。
そこに書かれているのは勇者と※※※※※達との旅の記憶なのだ、と気がつくと見せて欲しいと伝えたのだが、※※※※※は悪戯っぽい笑みを浮かべて『ダメよ』とだけ答えた。
「これは大事な記憶なの、死ぬまで人には見せないって決めてるの……死ぬ時には一緒に埋めてもらって私の気持ちを彼の元へと届けるのよ」
そう話す※※※※※の表情はまるで昔に戻ったかのように恍惚としたものへと変化する……彼女にとっては勇者は信仰の対象にも近しい存在なのだろう。
私が※※※※※の言葉を待っていると、彼女はそのまま古い記憶を一つ一つ思い出すように話し始める。
勇者が少し気恥ずかしそうに彼女に微笑んでくれた時のこと、一緒に旅をするようになって次第に勇者のことを意識し始めた時のこと、魔物を倒した時に一緒になって喜んだ時のことをまるで昨日起きた出来事のように話す※※※※※の姿は、少女に戻ったかのようだった。
「……一度ね、※※※※※達とは別に彼と共に祭りに参加したことがあるのよ……そこで私は彼に自分の想いを伝えたわ」
※※※※※の顔をまじまじと見つめてしまう……気を落ち着けてから気持ちを伝えた時の勇者はどうだったのか? と尋ねると彼女はにっこりと笑うと『今はそういうことを考える気にならない、って言われたわ』と少し残念そうな顔で微笑んだ。
だがそれからも彼女は昔の思い出を話し続ける……堰を切ったように話している彼女の姿を見て、私は少し意外な気分になった。
だがある程度話が落ち着いた段階で、私は彼女へと尋ねた……そうしなければこの女性は延々と面会時間ギリギリまで話し続けてしまうような気がしたからだ。
「私にとってどういう人だったかって? 当たり前だけど……私にとっては大事な人、でも気持ちを確認する前にいなくなってしまった過去の思い出……私は過去の思い出のためにずっと一人でいるのよ」
そう語る※※※※※の表情は嬉しそうだが、どこか悲しげな色がある……魔法使いである※※※※※と違い、はっきりと自分の意思を伝えた彼女にも応えなかった勇者。
そのことについてどう思うか? と尋ねると※※※※※は少し考えた後に、拒絶するように私に向かって話しかけてきた。
「それは私以外の……そうね王都にいる騎士団きっての名指揮官である※※※※※に話を聞いて、そこから貴女が判断してくれればいいわ、私はもう話しすぎた、これ以上話すことはないわ」
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