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第二四五話 シャルロッタ 一六歳 大感染の悪魔 〇五
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——光輝く粒子が目の前で次第に人の姿を取り始めたことで、クリストフェルは驚きのあまり目を見開く。
「な……い、今僕は悪魔と戦っていたはず……」
彼は周りを見渡すが、視界に映る全てのものに色がなく、まるで今から斬りかかろうとしていたクーランすら目の前で時が止まったかのように動かない。
マリアンの心配そうな表情も、ヴィクターが自分に向かって叫ぶような顔も……咆哮を上げているはずのユルですら、そのままの姿で静止している。
呆然としているクリストフェルの顔を覗き込むように、人の姿を取る光の粒子がなぜだか歪んだ笑みを浮かべているような気がした。
「ようこそクリストフェル・マルムスティーン……」
「ぼ、僕の名前をどうして知って……ここはどこだ?」
「ああ、安心していいよ、君が現実に戻るときには一秒も経過していることはない」
光の粒子はそれまで聞いたことがないような甘美で優しく……全てを包み込むような暖かさのある声で話しかけてくる……こいつは一体?
クリストフェルがどうしていいのか分からずに、その粒子を見つめているとまるで重さなどを感じさせない粒子は、次第に小さな少女の姿へと変化していった。
光輝く少女は輪郭こそ光輝いているが、その顔にあたる部分には白く穴を開けたかのような目のような部分と大きく見開いた口が見えており、一瞬その姿は怪物のようにすら感じた。
「……お前は一体……悪意は感じないし、温かい気分にすら感じる……」
「君たちの認識では女神ということになっているよ、だから君も私のことは女神と呼ぶと良い」
「女神様……? あなたが……?!」
イングウェイ王国の国教で信仰されている女神の姿は書物などでも描写が存在せず、女神像として建造されている像はあくまでもイメージなのだ、と司祭が話していたことがあった。
人によっては女神の姿を想像するだけで不敬だと考えるものも多く、過去には女神像の排斥運動すら起きた国もあるという。
この世界において女神は対なる二つの世界を創造したことが偉業として讃えられ、人だけでなく様々な生命を生み出し、そして慈愛を持ってこの世界を守ることを使命としているとされている。
クリストフェルは敬虔な女神の信徒でもあり、にわかには信じられない気持ちもあったものの強い光の力を感じ、自然と粒子へと跪いた。
「……あなたが女神だというのであれば、僕は信徒として敬意を示します……でもなぜここへ?」
「クリストフェルよ、あなたの信仰心に感謝します……あの娘もこのくらい従順ならいいのですけどねえ……」
「あの娘?」
「いえいえこちらの話です、せっかく対となる世界から呼び寄せたのに、あの娘は平気で私を殴り飛ばすし酷い扱いなのですよ」
クリストフェルはその娘、と呼ばれている人物が何となくだがわかるような気がした……彼の心を捉えて離さない愛する少女、そして遥か高みに立ち人知れず人類の敵と戦い続けてきた一人の女性。
だが明言はされていないし、クリストフェルの前では年相応の反応を見せる彼女と、自分たちの崇める女神を殴り飛ばすようなイメージがどうしても重ならず、勘違いだろうと一人で納得して軽く首を振る。
女神はクスッと軽く笑いを漏らすと、クリストフェルの美しい金色の髪をそっと撫でるとそれまで以上に優しい声で語りかける。
「クリストフェル、今ここにいるということは貴方は勇者として最初の一歩を踏み出したということです」
「勇者として……?」
「そう、勇者とは私の代弁者にして混沌を駆逐する戦士のことなのです……そして勇者としての歩みを求めるものの前に私は姿を現します」
イングウェイ王国では初代アンスラックス子爵であるスコット・アンスラックスが勇者として知られているが、彼は人生の最後をどこで終えたのかよくわかっていない。
だが彼自身の残した功績は多く、カヴァリーノ流と呼ばれる剣術の始祖でもあり、イングウェイ王国最強の剣士であり、王国の拡大期に活躍したこともよく知られている。
女神は考え込むクリストフェルへとにっこりと微笑む……光の粒子の中にある白い点や線にしか見えない顔であっても、その顔に浮かぶ笑みには優しさがこもっており、クリストフェルの心を満たしていく。
「女神様……僕は強くなれるのでしょうか?」
「……見たところ貴方の能力はスコットによく似ています、努力を怠らずそして偉業を達成することができれば……貴方の存在はもう一つ高みに上ることでしょう」
女神の言葉はそれまでずっとどうすれば良いのか悩んでいた自分にとって、一筋の希望の糸のように感じられ、クリストフェルは心が躍るような気持ちを感じた。
スコット・アンスラックスに似ている……それは初代勇者と同じ存在へと自らを高めることができるということなのだ。
この王国では勇者を目指したものが数多くあれど、その全てが悲惨な最後を迎えている……自らの力を過信して身を滅ぼしたもの、器として認められながらも病で早くに亡くなったもの。
戦争に巻き込まれた人を守るために散華したものすら存在する……その全てがまるで存在をしてはいけないかのように、悲劇的な人生を送っているのだ。
「……女神様……僕には愛する人がいます」
「はいはい、わかっていますよ」
「あの子の隣に立ちたい、でも彼女はずっと高みにいて……どうしたら追いつけるのかわかりませんでした」
クリストフェルにとってシャルロッタ・インテリペリという少女に愛され、隣に立って王国の未来を作るという夢を追いかけることは人生を全て賭けたいと思える強い欲求だった。
銀色の髪に美しい翡翠の瞳を持った彼女……じっと彼を見つめるその瞳はどこか遠くを見つめているような、それでいて彼自身の内面をずっと見透かしているようなそんな気持ちにさせられる。
彼だって男性だ……彼女を抱きしめたい、彼女の全てを手に入れたい、彼女の口からいって欲しい言葉があることをずっと押し殺してきている。
最初に彼が呼び出したときにほんの少し迷惑そうだった彼女が、最近自然に笑うようになった……それがクリストフェルにとって最高に幸せな気持ちを感じさせるのだ。
「でも……僕は彼女と共にずっと一緒にいたい、だから勇者の器なんて言われてもどうしても最後の自信が持てませんでした……」
クリストフェルの独白を興味深そうに聞いている女神はあくまでも微笑みを絶やさない。
だが彼にとって女神の前で自分の気持ちを隠すことなど考えようもない……クリストフェル・マルムスティーンはシャルロッタ・インテリペリを心の底から愛している。
彼女に自分を認めさせるには、自らも強くあらねばならない……内戦になると聞かされて、一度は決断したものの彼はずっと悩んでいた。
自らのせいで多くの人を、国民を、もしかしたら兄をも殺さねばならないことに、ずっとずっと……心の痛みを抱えていた、運が良いという言葉で軽口を叩くことで重圧を少しでも逃がしたいと思っていた。
シャルロッタの瞳を見るときに、彼女から「それは本心なのか?」と尋ねられている気がしていた。
彼女自身は何も口に出さず、黙って自らがやれることをやろうという姿勢だけをみせていた。
だが、はっきりとわかった……愛するものを守るために彼は勇者として全てを乗り越える……そしてその強い気持ちが彼自身の勇者としての魂を奮い立たせることにつながり、彼ははっきりと前を見て言葉を紡ぎ出した。
「女神様……もう一度会うときには僕はもっと強くなる、そして必ずシャルロッタの心を掴んで見せる……だから僕は……新たな勇者として立ち上がることをあなたに誓います」
「はー、随分愛されちゃってまあ……でも愛されないで終わった魂には良いことなのかもね」
目の前からクリストフェルの姿が消え、次第に色を取り戻していく世界を見つつ女神である彼女は、少し呆れたような表情で対の世界、レーヴェンティオラとマルヴァースをじっと見つめる。
クリストフェル・マルムスティーンは勇者である……それは女神自身が神託を求める司祭へと伝えた予言の一つだ。
マルヴァースでは長年勇者がいなかった、いやいなかったように仕向けられていただけだ……本来はもっと多くの勇者が歴史に名を残したに違いない。
だが……レーヴェンティオラのように偶然と必然が絡み合い魔王を滅ぼすものが現れた世界と違い、マルヴァースは混沌神の手先による必然が勇者という最後の戦闘兵器を成長させる土壌を奪い取っていた。
クリストフェルに呪いをかけた悪魔もそうだ、あれはずっと前から何度も行われてきた策略……あのまま行けばクリストフェルはもっと若くして命を落としていただろう。
「おもしれーと思って、死んだ彼を持ってきたのは正解でしたねえ……」
レーヴェンティオラに転生させた魂がまさかあの苦難を乗り越えて魔王を倒し、そして世界を救うなど誰が考えようか? 混沌神ですらあの偶然の連続には対抗できなかった。
勇者ラインという最弱の存在から最強にまで駆け上がったあの魂……そうそうあの世界ではそういったランダム性に富んだ遊戯のことをガチャとか言われているけども、そのガチャで凄まじい才能を掘り当てたことは女神にとっても運が良かった出来事だった。
その存在をマルヴァースへと投下してみたらもしかして……と思いついたことがきっかけだったが、それも結果を生み出しつつある。
「……本当に神格にふさわしい偉業ですよ、可愛いシャルロッタ……」
くすくす笑いながら虚無の空間の中をくるくると舞い踊る光の粒子は、先ほどまで目の前にいたクリストフェルの強い瞳にも満足している。
アンスラックスはすでに新しい魂へとふりかえ、また新たな偉業を達成するために対の世界へと戻すことを決めている……最後にクリストフェルに合わせても面白いかもな、と思いながら口元を歪めた女神は、もう一度マルヴァースを観察するためにじっと視線を集中させ始める。
「……さ、クリストフェル君の成長を楽しみに待ちますかね……ダメだったら、あの娘がなんとかするでしょう」
「な……い、今僕は悪魔と戦っていたはず……」
彼は周りを見渡すが、視界に映る全てのものに色がなく、まるで今から斬りかかろうとしていたクーランすら目の前で時が止まったかのように動かない。
マリアンの心配そうな表情も、ヴィクターが自分に向かって叫ぶような顔も……咆哮を上げているはずのユルですら、そのままの姿で静止している。
呆然としているクリストフェルの顔を覗き込むように、人の姿を取る光の粒子がなぜだか歪んだ笑みを浮かべているような気がした。
「ようこそクリストフェル・マルムスティーン……」
「ぼ、僕の名前をどうして知って……ここはどこだ?」
「ああ、安心していいよ、君が現実に戻るときには一秒も経過していることはない」
光の粒子はそれまで聞いたことがないような甘美で優しく……全てを包み込むような暖かさのある声で話しかけてくる……こいつは一体?
クリストフェルがどうしていいのか分からずに、その粒子を見つめているとまるで重さなどを感じさせない粒子は、次第に小さな少女の姿へと変化していった。
光輝く少女は輪郭こそ光輝いているが、その顔にあたる部分には白く穴を開けたかのような目のような部分と大きく見開いた口が見えており、一瞬その姿は怪物のようにすら感じた。
「……お前は一体……悪意は感じないし、温かい気分にすら感じる……」
「君たちの認識では女神ということになっているよ、だから君も私のことは女神と呼ぶと良い」
「女神様……? あなたが……?!」
イングウェイ王国の国教で信仰されている女神の姿は書物などでも描写が存在せず、女神像として建造されている像はあくまでもイメージなのだ、と司祭が話していたことがあった。
人によっては女神の姿を想像するだけで不敬だと考えるものも多く、過去には女神像の排斥運動すら起きた国もあるという。
この世界において女神は対なる二つの世界を創造したことが偉業として讃えられ、人だけでなく様々な生命を生み出し、そして慈愛を持ってこの世界を守ることを使命としているとされている。
クリストフェルは敬虔な女神の信徒でもあり、にわかには信じられない気持ちもあったものの強い光の力を感じ、自然と粒子へと跪いた。
「……あなたが女神だというのであれば、僕は信徒として敬意を示します……でもなぜここへ?」
「クリストフェルよ、あなたの信仰心に感謝します……あの娘もこのくらい従順ならいいのですけどねえ……」
「あの娘?」
「いえいえこちらの話です、せっかく対となる世界から呼び寄せたのに、あの娘は平気で私を殴り飛ばすし酷い扱いなのですよ」
クリストフェルはその娘、と呼ばれている人物が何となくだがわかるような気がした……彼の心を捉えて離さない愛する少女、そして遥か高みに立ち人知れず人類の敵と戦い続けてきた一人の女性。
だが明言はされていないし、クリストフェルの前では年相応の反応を見せる彼女と、自分たちの崇める女神を殴り飛ばすようなイメージがどうしても重ならず、勘違いだろうと一人で納得して軽く首を振る。
女神はクスッと軽く笑いを漏らすと、クリストフェルの美しい金色の髪をそっと撫でるとそれまで以上に優しい声で語りかける。
「クリストフェル、今ここにいるということは貴方は勇者として最初の一歩を踏み出したということです」
「勇者として……?」
「そう、勇者とは私の代弁者にして混沌を駆逐する戦士のことなのです……そして勇者としての歩みを求めるものの前に私は姿を現します」
イングウェイ王国では初代アンスラックス子爵であるスコット・アンスラックスが勇者として知られているが、彼は人生の最後をどこで終えたのかよくわかっていない。
だが彼自身の残した功績は多く、カヴァリーノ流と呼ばれる剣術の始祖でもあり、イングウェイ王国最強の剣士であり、王国の拡大期に活躍したこともよく知られている。
女神は考え込むクリストフェルへとにっこりと微笑む……光の粒子の中にある白い点や線にしか見えない顔であっても、その顔に浮かぶ笑みには優しさがこもっており、クリストフェルの心を満たしていく。
「女神様……僕は強くなれるのでしょうか?」
「……見たところ貴方の能力はスコットによく似ています、努力を怠らずそして偉業を達成することができれば……貴方の存在はもう一つ高みに上ることでしょう」
女神の言葉はそれまでずっとどうすれば良いのか悩んでいた自分にとって、一筋の希望の糸のように感じられ、クリストフェルは心が躍るような気持ちを感じた。
スコット・アンスラックスに似ている……それは初代勇者と同じ存在へと自らを高めることができるということなのだ。
この王国では勇者を目指したものが数多くあれど、その全てが悲惨な最後を迎えている……自らの力を過信して身を滅ぼしたもの、器として認められながらも病で早くに亡くなったもの。
戦争に巻き込まれた人を守るために散華したものすら存在する……その全てがまるで存在をしてはいけないかのように、悲劇的な人生を送っているのだ。
「……女神様……僕には愛する人がいます」
「はいはい、わかっていますよ」
「あの子の隣に立ちたい、でも彼女はずっと高みにいて……どうしたら追いつけるのかわかりませんでした」
クリストフェルにとってシャルロッタ・インテリペリという少女に愛され、隣に立って王国の未来を作るという夢を追いかけることは人生を全て賭けたいと思える強い欲求だった。
銀色の髪に美しい翡翠の瞳を持った彼女……じっと彼を見つめるその瞳はどこか遠くを見つめているような、それでいて彼自身の内面をずっと見透かしているようなそんな気持ちにさせられる。
彼だって男性だ……彼女を抱きしめたい、彼女の全てを手に入れたい、彼女の口からいって欲しい言葉があることをずっと押し殺してきている。
最初に彼が呼び出したときにほんの少し迷惑そうだった彼女が、最近自然に笑うようになった……それがクリストフェルにとって最高に幸せな気持ちを感じさせるのだ。
「でも……僕は彼女と共にずっと一緒にいたい、だから勇者の器なんて言われてもどうしても最後の自信が持てませんでした……」
クリストフェルの独白を興味深そうに聞いている女神はあくまでも微笑みを絶やさない。
だが彼にとって女神の前で自分の気持ちを隠すことなど考えようもない……クリストフェル・マルムスティーンはシャルロッタ・インテリペリを心の底から愛している。
彼女に自分を認めさせるには、自らも強くあらねばならない……内戦になると聞かされて、一度は決断したものの彼はずっと悩んでいた。
自らのせいで多くの人を、国民を、もしかしたら兄をも殺さねばならないことに、ずっとずっと……心の痛みを抱えていた、運が良いという言葉で軽口を叩くことで重圧を少しでも逃がしたいと思っていた。
シャルロッタの瞳を見るときに、彼女から「それは本心なのか?」と尋ねられている気がしていた。
彼女自身は何も口に出さず、黙って自らがやれることをやろうという姿勢だけをみせていた。
だが、はっきりとわかった……愛するものを守るために彼は勇者として全てを乗り越える……そしてその強い気持ちが彼自身の勇者としての魂を奮い立たせることにつながり、彼ははっきりと前を見て言葉を紡ぎ出した。
「女神様……もう一度会うときには僕はもっと強くなる、そして必ずシャルロッタの心を掴んで見せる……だから僕は……新たな勇者として立ち上がることをあなたに誓います」
「はー、随分愛されちゃってまあ……でも愛されないで終わった魂には良いことなのかもね」
目の前からクリストフェルの姿が消え、次第に色を取り戻していく世界を見つつ女神である彼女は、少し呆れたような表情で対の世界、レーヴェンティオラとマルヴァースをじっと見つめる。
クリストフェル・マルムスティーンは勇者である……それは女神自身が神託を求める司祭へと伝えた予言の一つだ。
マルヴァースでは長年勇者がいなかった、いやいなかったように仕向けられていただけだ……本来はもっと多くの勇者が歴史に名を残したに違いない。
だが……レーヴェンティオラのように偶然と必然が絡み合い魔王を滅ぼすものが現れた世界と違い、マルヴァースは混沌神の手先による必然が勇者という最後の戦闘兵器を成長させる土壌を奪い取っていた。
クリストフェルに呪いをかけた悪魔もそうだ、あれはずっと前から何度も行われてきた策略……あのまま行けばクリストフェルはもっと若くして命を落としていただろう。
「おもしれーと思って、死んだ彼を持ってきたのは正解でしたねえ……」
レーヴェンティオラに転生させた魂がまさかあの苦難を乗り越えて魔王を倒し、そして世界を救うなど誰が考えようか? 混沌神ですらあの偶然の連続には対抗できなかった。
勇者ラインという最弱の存在から最強にまで駆け上がったあの魂……そうそうあの世界ではそういったランダム性に富んだ遊戯のことをガチャとか言われているけども、そのガチャで凄まじい才能を掘り当てたことは女神にとっても運が良かった出来事だった。
その存在をマルヴァースへと投下してみたらもしかして……と思いついたことがきっかけだったが、それも結果を生み出しつつある。
「……本当に神格にふさわしい偉業ですよ、可愛いシャルロッタ……」
くすくす笑いながら虚無の空間の中をくるくると舞い踊る光の粒子は、先ほどまで目の前にいたクリストフェルの強い瞳にも満足している。
アンスラックスはすでに新しい魂へとふりかえ、また新たな偉業を達成するために対の世界へと戻すことを決めている……最後にクリストフェルに合わせても面白いかもな、と思いながら口元を歪めた女神は、もう一度マルヴァースを観察するためにじっと視線を集中させ始める。
「……さ、クリストフェル君の成長を楽しみに待ちますかね……ダメだったら、あの娘がなんとかするでしょう」
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