252 / 430
第二一七話 シャルロッタ 一六歳 煉獄 〇七
しおりを挟む
「おお、それはレッドリバークロコダイルと言ってな、内臓がまた美味しいのだ」
「どりゃあああッ! 破滅の炎っ!」
ワニの胴体と一つ目の巨人の顔を合わせたようなグロテスクな怪物の尻尾を掴んで思い切り投げ飛ばすと、空中でバタバタと手足を動かすレッドリバークロコダイルとかいう怪物に向かってわたくしは破滅の炎を放つ。
着弾と同時に空中で炸裂した炎が怪物の体を木っ端微塵に吹き飛ばすが、それを見たシェルヴェンは感心したようにうねうねと触手を動かして拍手する。
間髪を容れずわたくしは迫ってきた次の怪物……牡鹿の頭にムカデのような胴体を持った奇怪な見た目の怪物が飛びかかってきたのを右拳に魔力を込めて殴りつける。
「とああああっ!」
「おお、そいつはスタッグビートと言ってな血液が強力な腐食性だ、食べられるところは少ないなあ」
ボゴン! という音共にスタッグビートの顔面を吹き飛ばすと、残ったムカデの胴体が地面へと叩きつけられるように落ち、そのままバタバタと痙攣しているのが見える。
拳を振り抜いた姿勢が隙だらけに見えるのだろう……死角から今度は尾鰭の生えた四本腕の巨大なゴリラのような怪物が、鋭い牙を剥き出しに飛びかかってくる。
だが……そのままわたくしは体を回転させるように自分と怪物の位置を変化させると、致命的な一撃を躱されて逆に体勢を崩した怪物の頭部に踵落としを叩き込む。
「てやあああっ!」
「おお、こいつはモグエイプ……脳みそをスープにして味わうと絶品なのだ……ってああ、もったいない……」
ボギャアアッ! という鈍い音を立ててモグエイプの頭が地面とわたくしの踵落としに挟まれて砕けると、中身を撒き散らしながら絶命していく。
痙攣するモグエイプを見ながらシェルヴェンは残念そうな顔で、周りを警戒しているわたくしと絶命したモグエイプの肉体を交互に見ている。
そんなわたくし達の頭上から凄まじい速度で巨大な黒い影が迫る……大きな口を開けてわたくし達を飲み込もうとしているのは、空飛ぶサメ?! 大きな口の中には二つの瞳があり、こちらを見てまるで笑っているかのような視線を浮かべている。
「……ふざけ……っ! 氷嵐の爆槍ッ!」
無詠唱でわたくしの足元から氷の嵐が吹き荒れる……全てを凍てつかせる魔力が巨大な口をあげているサメの全身を一瞬で凍らせると、わたくしはそのまま右拳をサメへと叩きつけた。
バシャアアン! という軽く何かが砕けるかのような音を立てて、凍てついた肉体が粉々に砕け散り、地面へと叩きつけられると同時に一瞬で粉のように崩れ去る。
ふうっ、とわたくしが息を吐くとシェルヴェンはパチパチと触手を打ち鳴らしてまるで拍手でもするかのように、笑顔でわたくしへと話しかけてきた。
「見事見事……最後のはイビルシャーク、空中を舞って獲物を狩るハンターでな……これのヒレはまた美味し……」
「ちょっと、そこの役立たず」
「何だね、シャルロッタ・インテリペリ?」
「アンタのゲテモノグルメ批評を聞きたくてここにいるわけじゃないんだし、少しは手伝ったらどうなの?」
憎々しげなわたくしの表情を見て、シェルヴェンはニヤリと笑ってまるでお手上げと言わんばかりに肩をすくめる……こいつ……何のためについてきてるのかわからない上に手伝いもしないじゃないか。
しかもわたくしが聞いてもまるで意味のないゲテモノなグルメ批評を垂れ流して余計な情報を増やすし、第一あんな訳のわからない怪物の味とか知りたくもないわ。
だがそんなわたくしの顔を見て、本当にムカつく顔で何度も頷きながら口元を歪ませる……笑っているのか微笑んでいるのか本当にわかんねーなこいつは!
「やなこった」
「……はぁ?!」
「お前の贖罪だろう? なぜ我が手伝わなければならんのだ」
さも当たり前と言わんばかりの顔でわたくしをめちゃくちゃバカにした目でみるシェルヴェン……え? これって贖罪のためにやっていることなの?
単に襲いかかってくるからぶん殴って倒しているだけなんだけど、こいつらはさらに罪でも重ねた怪物だったとかそういう話なのだろうか?
もしかしてこの調子で怪物をぶん殴って倒していけば現世に戻る可能性が少しでも上がるということか、わたくしはシェルヴェンにほんの少しだけ期待した目で聞いてみた。
「ちなみにさっきの連中倒してどのくらい罪が減るの?」
「そうだな……ひー、ふー……三時間くらい?」
「……期待したわたくしがバカでしたわ……」
三時間? 三時間って何だよ! バカにしてんのか!! 怒りのままに地面に転がってたモグエイプの肉体を蹴飛ばすと、それなりに重量のある肉体が空中へと吹き飛び、そのまま遠くへと消えていく。
ったく……どうにかしてこの煉獄を抜けないと、元の世界ではどうなっているのかわからないって状況なのに、怪物倒して三時間ッ! ふざけんなよ!
わたくしが飛んで行ったモグエイプの肉体の方向に向かって何度も地面を蹴っているのをみて、シェルヴェンは呆れたようなため息をつく。
「全く……気が短い魂だ、そんなことだから大罪を犯すのだろう」
「……あ゛あ゛?!」
「ナニモイッテナイヨ」
「こっちはイライラしてんのよ、こんな訳のわからないところに落とされて……あのクソ女神絶対にギッタギタにしてやる」
シェルヴェンはめちゃくちゃバカにしたような顔で、チラリと舌を見せるがまたその仕草がめちゃくちゃムカつく……ギリリと奥歯を噛み締めるが、そんなことしても何もならないのは明白でわたくしは一度大きく息を吐く。
だめだ落ち着け、どうもここ最近イライラすることが多すぎて冷静な自分がちゃんとコントロールできていない気がする……ユルにも怒りっぽいって言われちゃっているしな。
だが落ち着くために親指の爪を噛んでいるわたくしをみてシェルヴェンが同じようにため息をつくと、わたくしへと話しかけてくる。
「仕方ないな……ではお前に少しだけ答えてやろう」
「……何よ」
「もう一人いる門番の場所へと案内してやろう、そこは火口へと近づく道の一つだ」
シェルヴェンはわたくしをみてニヤリと微笑む……火口、つまりその場所へと身を踊らせることで罪が許される、だっけ? 今の所この煉獄を抜ける手立てとしてはそこにいくしかないんだよな。
本当に火口へと身を踊らせるかどうかは実際に見てみないとわからないが……まあ、多少色々燃えたところで三秒くらいなら助かるかもだし、肉体の損傷は修復できるはずだから問題ないだろう。
火口への道筋の一つということは、そこへいけば門番から火口へむかう情報が手に入るかもしれない……わたくしはシェルヴェンへと向き直ると、彼へとお願いをすることにした。
「……ならそこへ連れて行ってくださいまし、お願いしますわ」
「……撃てええッ!」
ビョーン・ソイルワーク男爵の号令とともに再び魔獣の群れへと矢が放たれる……空中で炎を纏った矢は魔獣に突き刺さった瞬間に大爆発を起こし、周囲に炎を撒き散らしていく。
その炎を見て魔獣の一部が動揺したのか、前進する速度が鈍ったことを見逃さず幻獣ガルム族のユルは、口内に赤い光……彼を象徴する炎の魔力を集中させて一気に放射してのけた。
炎魔法である火炎炸裂が群れの中へと突き刺さると、大爆発を起こし周囲にいた魔獣達を軽々と宙へと舞い上げる。
「す、すげえ……!」
「これなら勝てるぞ!」
メネタトン守備隊の士気が一気に上がると、接近戦を挑んでいた兵士達がそれまでいいように押し込まれていた場所から次第に盛り返していく。
その様子を見ながら、ソイルワーク男爵は手応えを感じたのか彼自身が剣を手に取り、メネタトン正門に迫ってくる魔獣達へと切り掛かった。
男爵は騎士としては大成出来なかったものの、その判断能力や指揮能力の高さを買われクレメント・インテリペリ辺境伯直々にメネタトンの支配をまかされている人物だ。
「押し返せっ! 我々のメネタトンに一匹たりとも魔獣を入れるな!」
「「「おおおっ!」」」
本来は祖父が支配を任されていた街だが、急病にて祖父が他界し幼少期にここで優しい祖父の思い出を持っていたビョーンは、この街の領主となることを迷いもせずに受け入れた。
彼自身もインテリペリ辺境伯家への忠誠心は持ってはいるが、内戦ともなれば思い出のこの街が戦火に包まれる可能性も高く、それを恐れて今まで中立を保ちたいという意思を示していた。
この大暴走は何かおかしい……それは魔法の知識にそれほど明るくない男爵ですらここまでの群れが動く様を見てはっきりと感じ取った。
意思を感じる……軍指揮官が命令しているかのような統一性のある動き、だがその動きは拙く歴戦の指揮官ではないものが命令を下しているかのような動きに見える。
「立てるか? 怪我をしたならラッシュ司祭の元へと迎え、申し訳ないが治療後戻ってくるのだ」
「は、はいっ!」
ソイルワーク男爵は怪我をして動けなくなっていた守備隊の一人へと声をかけると、剣を再び構えて襲いかかってくるゴブリンを一刀の元に切り捨てる。
ドス黒い血を吹き出しながら倒れるゴブリンの向こうから、巨大な犬歯を持つサーベルトゥースタイガーが姿を現し、恐ろしい鳴き声と共に男爵の喉元を食いちぎろうと飛びかかってくる。
だが、その攻撃をかろうじて躱した男爵は返す刀で手に持った剣を魔獣の体へと突き刺し、足で蹴って一気に距離を取る。
ギリギリだ、騎士としての評価がそれほど高くないとはいえ元々戦闘経験も積んでいる自分ではあるが、流石に疲労で汗が滝のように流れている。
「……だが、この街はやれん! 俺にとってメネタトンは家、そして帰るべき場所だ! 魔獣如きにやるには思い出が多すぎる……かかってこいっ!」
「どりゃあああッ! 破滅の炎っ!」
ワニの胴体と一つ目の巨人の顔を合わせたようなグロテスクな怪物の尻尾を掴んで思い切り投げ飛ばすと、空中でバタバタと手足を動かすレッドリバークロコダイルとかいう怪物に向かってわたくしは破滅の炎を放つ。
着弾と同時に空中で炸裂した炎が怪物の体を木っ端微塵に吹き飛ばすが、それを見たシェルヴェンは感心したようにうねうねと触手を動かして拍手する。
間髪を容れずわたくしは迫ってきた次の怪物……牡鹿の頭にムカデのような胴体を持った奇怪な見た目の怪物が飛びかかってきたのを右拳に魔力を込めて殴りつける。
「とああああっ!」
「おお、そいつはスタッグビートと言ってな血液が強力な腐食性だ、食べられるところは少ないなあ」
ボゴン! という音共にスタッグビートの顔面を吹き飛ばすと、残ったムカデの胴体が地面へと叩きつけられるように落ち、そのままバタバタと痙攣しているのが見える。
拳を振り抜いた姿勢が隙だらけに見えるのだろう……死角から今度は尾鰭の生えた四本腕の巨大なゴリラのような怪物が、鋭い牙を剥き出しに飛びかかってくる。
だが……そのままわたくしは体を回転させるように自分と怪物の位置を変化させると、致命的な一撃を躱されて逆に体勢を崩した怪物の頭部に踵落としを叩き込む。
「てやあああっ!」
「おお、こいつはモグエイプ……脳みそをスープにして味わうと絶品なのだ……ってああ、もったいない……」
ボギャアアッ! という鈍い音を立ててモグエイプの頭が地面とわたくしの踵落としに挟まれて砕けると、中身を撒き散らしながら絶命していく。
痙攣するモグエイプを見ながらシェルヴェンは残念そうな顔で、周りを警戒しているわたくしと絶命したモグエイプの肉体を交互に見ている。
そんなわたくし達の頭上から凄まじい速度で巨大な黒い影が迫る……大きな口を開けてわたくし達を飲み込もうとしているのは、空飛ぶサメ?! 大きな口の中には二つの瞳があり、こちらを見てまるで笑っているかのような視線を浮かべている。
「……ふざけ……っ! 氷嵐の爆槍ッ!」
無詠唱でわたくしの足元から氷の嵐が吹き荒れる……全てを凍てつかせる魔力が巨大な口をあげているサメの全身を一瞬で凍らせると、わたくしはそのまま右拳をサメへと叩きつけた。
バシャアアン! という軽く何かが砕けるかのような音を立てて、凍てついた肉体が粉々に砕け散り、地面へと叩きつけられると同時に一瞬で粉のように崩れ去る。
ふうっ、とわたくしが息を吐くとシェルヴェンはパチパチと触手を打ち鳴らしてまるで拍手でもするかのように、笑顔でわたくしへと話しかけてきた。
「見事見事……最後のはイビルシャーク、空中を舞って獲物を狩るハンターでな……これのヒレはまた美味し……」
「ちょっと、そこの役立たず」
「何だね、シャルロッタ・インテリペリ?」
「アンタのゲテモノグルメ批評を聞きたくてここにいるわけじゃないんだし、少しは手伝ったらどうなの?」
憎々しげなわたくしの表情を見て、シェルヴェンはニヤリと笑ってまるでお手上げと言わんばかりに肩をすくめる……こいつ……何のためについてきてるのかわからない上に手伝いもしないじゃないか。
しかもわたくしが聞いてもまるで意味のないゲテモノなグルメ批評を垂れ流して余計な情報を増やすし、第一あんな訳のわからない怪物の味とか知りたくもないわ。
だがそんなわたくしの顔を見て、本当にムカつく顔で何度も頷きながら口元を歪ませる……笑っているのか微笑んでいるのか本当にわかんねーなこいつは!
「やなこった」
「……はぁ?!」
「お前の贖罪だろう? なぜ我が手伝わなければならんのだ」
さも当たり前と言わんばかりの顔でわたくしをめちゃくちゃバカにした目でみるシェルヴェン……え? これって贖罪のためにやっていることなの?
単に襲いかかってくるからぶん殴って倒しているだけなんだけど、こいつらはさらに罪でも重ねた怪物だったとかそういう話なのだろうか?
もしかしてこの調子で怪物をぶん殴って倒していけば現世に戻る可能性が少しでも上がるということか、わたくしはシェルヴェンにほんの少しだけ期待した目で聞いてみた。
「ちなみにさっきの連中倒してどのくらい罪が減るの?」
「そうだな……ひー、ふー……三時間くらい?」
「……期待したわたくしがバカでしたわ……」
三時間? 三時間って何だよ! バカにしてんのか!! 怒りのままに地面に転がってたモグエイプの肉体を蹴飛ばすと、それなりに重量のある肉体が空中へと吹き飛び、そのまま遠くへと消えていく。
ったく……どうにかしてこの煉獄を抜けないと、元の世界ではどうなっているのかわからないって状況なのに、怪物倒して三時間ッ! ふざけんなよ!
わたくしが飛んで行ったモグエイプの肉体の方向に向かって何度も地面を蹴っているのをみて、シェルヴェンは呆れたようなため息をつく。
「全く……気が短い魂だ、そんなことだから大罪を犯すのだろう」
「……あ゛あ゛?!」
「ナニモイッテナイヨ」
「こっちはイライラしてんのよ、こんな訳のわからないところに落とされて……あのクソ女神絶対にギッタギタにしてやる」
シェルヴェンはめちゃくちゃバカにしたような顔で、チラリと舌を見せるがまたその仕草がめちゃくちゃムカつく……ギリリと奥歯を噛み締めるが、そんなことしても何もならないのは明白でわたくしは一度大きく息を吐く。
だめだ落ち着け、どうもここ最近イライラすることが多すぎて冷静な自分がちゃんとコントロールできていない気がする……ユルにも怒りっぽいって言われちゃっているしな。
だが落ち着くために親指の爪を噛んでいるわたくしをみてシェルヴェンが同じようにため息をつくと、わたくしへと話しかけてくる。
「仕方ないな……ではお前に少しだけ答えてやろう」
「……何よ」
「もう一人いる門番の場所へと案内してやろう、そこは火口へと近づく道の一つだ」
シェルヴェンはわたくしをみてニヤリと微笑む……火口、つまりその場所へと身を踊らせることで罪が許される、だっけ? 今の所この煉獄を抜ける手立てとしてはそこにいくしかないんだよな。
本当に火口へと身を踊らせるかどうかは実際に見てみないとわからないが……まあ、多少色々燃えたところで三秒くらいなら助かるかもだし、肉体の損傷は修復できるはずだから問題ないだろう。
火口への道筋の一つということは、そこへいけば門番から火口へむかう情報が手に入るかもしれない……わたくしはシェルヴェンへと向き直ると、彼へとお願いをすることにした。
「……ならそこへ連れて行ってくださいまし、お願いしますわ」
「……撃てええッ!」
ビョーン・ソイルワーク男爵の号令とともに再び魔獣の群れへと矢が放たれる……空中で炎を纏った矢は魔獣に突き刺さった瞬間に大爆発を起こし、周囲に炎を撒き散らしていく。
その炎を見て魔獣の一部が動揺したのか、前進する速度が鈍ったことを見逃さず幻獣ガルム族のユルは、口内に赤い光……彼を象徴する炎の魔力を集中させて一気に放射してのけた。
炎魔法である火炎炸裂が群れの中へと突き刺さると、大爆発を起こし周囲にいた魔獣達を軽々と宙へと舞い上げる。
「す、すげえ……!」
「これなら勝てるぞ!」
メネタトン守備隊の士気が一気に上がると、接近戦を挑んでいた兵士達がそれまでいいように押し込まれていた場所から次第に盛り返していく。
その様子を見ながら、ソイルワーク男爵は手応えを感じたのか彼自身が剣を手に取り、メネタトン正門に迫ってくる魔獣達へと切り掛かった。
男爵は騎士としては大成出来なかったものの、その判断能力や指揮能力の高さを買われクレメント・インテリペリ辺境伯直々にメネタトンの支配をまかされている人物だ。
「押し返せっ! 我々のメネタトンに一匹たりとも魔獣を入れるな!」
「「「おおおっ!」」」
本来は祖父が支配を任されていた街だが、急病にて祖父が他界し幼少期にここで優しい祖父の思い出を持っていたビョーンは、この街の領主となることを迷いもせずに受け入れた。
彼自身もインテリペリ辺境伯家への忠誠心は持ってはいるが、内戦ともなれば思い出のこの街が戦火に包まれる可能性も高く、それを恐れて今まで中立を保ちたいという意思を示していた。
この大暴走は何かおかしい……それは魔法の知識にそれほど明るくない男爵ですらここまでの群れが動く様を見てはっきりと感じ取った。
意思を感じる……軍指揮官が命令しているかのような統一性のある動き、だがその動きは拙く歴戦の指揮官ではないものが命令を下しているかのような動きに見える。
「立てるか? 怪我をしたならラッシュ司祭の元へと迎え、申し訳ないが治療後戻ってくるのだ」
「は、はいっ!」
ソイルワーク男爵は怪我をして動けなくなっていた守備隊の一人へと声をかけると、剣を再び構えて襲いかかってくるゴブリンを一刀の元に切り捨てる。
ドス黒い血を吹き出しながら倒れるゴブリンの向こうから、巨大な犬歯を持つサーベルトゥースタイガーが姿を現し、恐ろしい鳴き声と共に男爵の喉元を食いちぎろうと飛びかかってくる。
だが、その攻撃をかろうじて躱した男爵は返す刀で手に持った剣を魔獣の体へと突き刺し、足で蹴って一気に距離を取る。
ギリギリだ、騎士としての評価がそれほど高くないとはいえ元々戦闘経験も積んでいる自分ではあるが、流石に疲労で汗が滝のように流れている。
「……だが、この街はやれん! 俺にとってメネタトンは家、そして帰るべき場所だ! 魔獣如きにやるには思い出が多すぎる……かかってこいっ!」
2
お気に入りに追加
852
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる