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第一〇七話 シャルロッタ 一五歳 王都脱出 一七
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「……シャルロッタ・インテリペリ嬢、大人しくついてきていただけないでしょうか?」
「お断りしますわ、わたくしこれから領地へと戻らなければいけないの……其処をどいてくださるかしら?」
玄関から姿を現したわたくしを見て、邸宅を取り囲んでいた兵士達がざわつく中、隊長格らしい羽付の兜を被った兵士がわたくしへと問いかけてきた。
兵士達の反応はまちまちだ、緊張感に溢れたもの、わたくしを見て鼻の下を伸ばしているもの、驚いているもの、頬を赤らめているものなどなど。
あまりに堂々と正面から出てきたことで面食らった兵士もいたとは思うが、それでも彼らは職務を遂行するべく二人がわたくしへと近寄ってくるが、背後からガルム族のユルがのそりとその巨体を見せたことで、一斉に武器をこちらに向けて慌て始める。
「……我の主人に無粋な手出しは無用である、其処を退け有象無象よ」
「……ば、化け物……!」
「あれがガルム? 噂は本当だったのか……!」
わたくしよりも遥かに大きな巨体、赤く光る瞳に尻尾にまとわりつく炎……あまりに恐ろしい姿に兵士達は恐怖を覚えたのか冷や汗をかいて後ろへと下がっていく。
うん、これで外に出れるかな……わたくしがにこりと笑って頷くと、それを合図にエルネットさん達が馬車へと走っていく。
その姿も衝撃的だったのだろう、金級冒険者「赤竜の息吹」の武名は王都に住むものであれば知らないものはいない……その彼らがわたくしの護衛としてついている、という視覚的な効果は絶大だった。
「……ま、まずいぞあんな連中を相手にして勝てるわけがねえ……」
「悪魔を倒すような冒険者なんだろ……? 俺たちなんか太刀打ちできねえよ……」
ざわざわと囁き合う兵士たちを見て、隊長格の男性がぐぬぬ……と表情を歪める。
まあその辺りの兵士ではいくら数を集めてもエルネットさん達には敵わないだろうし、ユルも合わせると一個軍団でも持ってこない限り立ち向かえないかもしれない。
グルルと唸るユルを見る目は恐怖に彩られており、できるだけ離れた場所にいたいとばかりに包囲網の一角が歪な配置へと変化していっている。
わたくしは扇を取り出すと無防備にツカツカと隊長のそばへと歩み寄っていく……それを見てどうしたらいいのかわからなかったらしく、隊長は緊張した面持ちでわたくしをじっと見つめている。
「……わたくし領地へ戻ってもよろしいかしら?」
「……い、いや待っていただ……あついっ!」
わたくしは隊長へにっこりと花のような笑顔で微笑むと、そのまま用意が終わっている我が家の馬車へとさっさと歩き出す。
一度躊躇したもののわたくしを捕まえようと隊長が手を伸ばそうとした瞬間、わざと彼の視界に入るような形でユルがその大きな体を使って進路を塞ぐようについてくる……もちろん隊長の手を掠めるように尻尾の炎を軽く当てて、だ。
ユルに言わせると、焚き火に火をつけるくらいはできますよ、と言っていた炎だ……軽い火傷程度で済むだろうけどさ、全くそう言う悪戯だけはちゃんとやってのけるのよね。
「……悪い子ね? ダメよそう言うことしちゃ……」
「……シャルに触れようとしていましたからね、当然です」
やれやれ……だがその悪戯の効果は絶大だったようだ。
隊長はかろうじて保っていた勇気を根こそぎへし折られたらしく、悔しそうに苦々しい顔をしつつも手を押さえて座り込んでしまっているし、隊長が何も言い出さないのを見た兵士たちもまた動けなくなっている。
その姿を見て意欲が失われたのだろう、私たちが馬車へと向かう間彼らは遠巻きにして何もできないままになっており、このまますんなり逃がしてくれそうな状況が生まれた。
それを見てエルネットさんが馬車の扉を開けて、まるで忠実な執事のようにわたくしを迎え入れる。
「どうぞ、お足元にお気をつけください」
「ありがとうエルネットさん、あ……そうだ」
わたくしは馬車の中へと足を踏み入れる前に隊長さんや兵士たちに一言言っておかねばいけない、と思い出しそのまま彼らの方へと顔を向けると優しく微笑む。
絶世の美女として王国中に喧伝されたわたくしの美貌だ、その笑顔を見た兵士たちからほぅ……と感心したような、それでいて気の抜けるようなため息のような声が上がる。
ま、わかっちゃいたけどこのシャルロッタ・インテリペリとしての外見は本当に破壊力満点だよなあ……と内心色々な意味で感心してしまう。
「勤勉なる王国兵士の皆様、朝早くからお疲れ様……わたくしの出立に盛大なお見送りいただき感謝いたしますわ」
ぺこりと頭を下げるとわたくしはそのまま馬車の中へと入り、続いてマーサが……最後にユルが大きく吠えると姿を消し、エルネットさんが半ば苦笑に近い微笑みを浮かべると扉を閉める。
それを見たリリーナさんとエミリオさんが御者台に座るとすぐさま馬車を走らせる……馬車の窓から外を見ると、兵士たちはわたくし達がその場を離れるのをぼうっとしながら見ているだけとなっている。
「……いやいや、またこんな出立にはなるとは……」
「でもみんな手出しできてなかったね」
屋敷から少し距離を取れた時点で、エルネットさんとデヴィットさん、そしてマーサがほっと息を吐く。
御者台に続く窓を開けてリリーナさんが悪戯っぽく笑いながらわたくしへと話しかけてくるのを見て、わたくしも微笑むが……あそこで兵士たちが暴発していたら流石に危なかったかもな。
わたくしとユルではなく非戦闘員であるマーサが真っ先に狙われたに違いない……そのマーサも今更ながらに恐怖心がぶり返したのか、少し震えながらわたくしを見て力無く微笑む。
「……あ、あんな怖い思いをしたのは初めてですよ……」
「マーサもよく我慢できましたわ、お疲れ様」
「……シャルロッタ様早く領地へ戻りましょう……」
マーサの言葉にわたくしも黙って頷く……王都に残っていると碌なことになりそうにない。
学園にもすでに休学の届を出しているし、ターヤにも一度領地へと戻ることは伝えている……クリスも危険を感じているのか、お兄様と調整しておりインテリペリ辺境伯領へと休養の名目でやってくることが決まった。
ミハエルはひと足さきに領地に戻っていて領地内部の引き締めに奔走しているのだという……おそらくイングウェイ王国の国民の大半は内戦になるのではないか? という危機感を感じているようで新聞などもすでにその論調になりつつあったのだ。
それがこの邸宅の包囲で裏打ちされたようなものだものな……軽くため息をついて窓の外を見るが、走り抜けていくわたくし達の馬車を見る王都の民の顔は非常に暗い。
「……陸路だとかなりかかるのよね……途中で何もなければいいのだけど」
「シャルは無事に王都を抜けれたようだね……」
自室の窓から静まり返る王都の様子を見ながらクリストフェル・マルムスティーンはほっと息を吐く……彼の背後にはヴィクターとマリアンが控えており、彼らもあまり表情には見せていないが不安を感じている。
まさか第一王子派が直接的に派閥に味方する貴族や商人たちへの攻勢を始めるとは思っていなかったのだ……いや正確にはそのうち行われると予測していたものの、退避の準備は完璧ではなくすでに幾人かの第二王子派の貴族や商人などが囚われていると言う報告が上がってきている。
「アンダース殿下が直接命令したわけではないようです」
「そりゃそうだよ、兄様はこんな細かい作戦を立てたりしない……他の貴族家の入れ知恵だろうね」
「殿下、インテリペリ辺境伯家に身を寄せましょう……冒険者組合のアイリーン様から信頼できる冒険者を護衛につけると連絡していただいております」
そうか、と頷くと彼はソファに腰を下ろして不安そうな表情を浮かべているプリシラ・ドッケン伯爵令嬢へと視線を移す。
彼女の実家はドッケン伯爵家……第一王子派の中ではかなり兄と距離を置いている家ではあるが、それでも敵派閥であることには変わりはない。
有能な秘書官ではあるが、一緒に同行させるのはリスクがある。
「プリシラ」
「……はい、なんでしょうか?」
「君はどうする? 僕はシャルの実家に世話になろうと思っているのだけど……」
クリストフェルの言葉にプリシラは少しだけ目を見開いて驚いたような表情を一瞬だけ浮かべる……本人も選択肢を与えられるとは思っていなかったのだろう。
プリシラの目的はクリストフェルとシャルロッタの監視と内情報告、そして第二王子派に潜入しているスパイの管理ではあるが、第一王子派が性急にことを運んだ以上、それらの行動にはあまり意味を持たないものとなりつつある。
クリストフェルの視線を真っ向から受け止めたプリシラは、内心恐ろしく動揺する……彼の目はまるで「君の目的はわかっているけど、それでもどうするか?」と言いたげなくらい鋭いものだったからだ。
「わ、私は……その……」
「今の王都に君を残していくのは忍びない、ドッケン伯爵家の立場もあるだろう? もし嫌じゃなければついてきたまえ」
クリストフェルは先ほどまでの鋭い視線から一転して優しく慈愛に満ちた表情を浮かべて笑う。
ああ、お見通しということか……それでもついてこいというのはプリシラを同行させることで、父に第一王子派への言い訳をさせることも考えているということなのだな。
プリシラにとって王家は遠く離れた場所にいる縁遠いものであったが、クリストフェルという同年代の王子が見せる優しさにほんの少しだけ彼女の心が揺れ動く。
「……もし殿下がご迷惑でなければ、私も同行いたします……ぜひお側に置いてくださると嬉しいです」
「お断りしますわ、わたくしこれから領地へと戻らなければいけないの……其処をどいてくださるかしら?」
玄関から姿を現したわたくしを見て、邸宅を取り囲んでいた兵士達がざわつく中、隊長格らしい羽付の兜を被った兵士がわたくしへと問いかけてきた。
兵士達の反応はまちまちだ、緊張感に溢れたもの、わたくしを見て鼻の下を伸ばしているもの、驚いているもの、頬を赤らめているものなどなど。
あまりに堂々と正面から出てきたことで面食らった兵士もいたとは思うが、それでも彼らは職務を遂行するべく二人がわたくしへと近寄ってくるが、背後からガルム族のユルがのそりとその巨体を見せたことで、一斉に武器をこちらに向けて慌て始める。
「……我の主人に無粋な手出しは無用である、其処を退け有象無象よ」
「……ば、化け物……!」
「あれがガルム? 噂は本当だったのか……!」
わたくしよりも遥かに大きな巨体、赤く光る瞳に尻尾にまとわりつく炎……あまりに恐ろしい姿に兵士達は恐怖を覚えたのか冷や汗をかいて後ろへと下がっていく。
うん、これで外に出れるかな……わたくしがにこりと笑って頷くと、それを合図にエルネットさん達が馬車へと走っていく。
その姿も衝撃的だったのだろう、金級冒険者「赤竜の息吹」の武名は王都に住むものであれば知らないものはいない……その彼らがわたくしの護衛としてついている、という視覚的な効果は絶大だった。
「……ま、まずいぞあんな連中を相手にして勝てるわけがねえ……」
「悪魔を倒すような冒険者なんだろ……? 俺たちなんか太刀打ちできねえよ……」
ざわざわと囁き合う兵士たちを見て、隊長格の男性がぐぬぬ……と表情を歪める。
まあその辺りの兵士ではいくら数を集めてもエルネットさん達には敵わないだろうし、ユルも合わせると一個軍団でも持ってこない限り立ち向かえないかもしれない。
グルルと唸るユルを見る目は恐怖に彩られており、できるだけ離れた場所にいたいとばかりに包囲網の一角が歪な配置へと変化していっている。
わたくしは扇を取り出すと無防備にツカツカと隊長のそばへと歩み寄っていく……それを見てどうしたらいいのかわからなかったらしく、隊長は緊張した面持ちでわたくしをじっと見つめている。
「……わたくし領地へ戻ってもよろしいかしら?」
「……い、いや待っていただ……あついっ!」
わたくしは隊長へにっこりと花のような笑顔で微笑むと、そのまま用意が終わっている我が家の馬車へとさっさと歩き出す。
一度躊躇したもののわたくしを捕まえようと隊長が手を伸ばそうとした瞬間、わざと彼の視界に入るような形でユルがその大きな体を使って進路を塞ぐようについてくる……もちろん隊長の手を掠めるように尻尾の炎を軽く当てて、だ。
ユルに言わせると、焚き火に火をつけるくらいはできますよ、と言っていた炎だ……軽い火傷程度で済むだろうけどさ、全くそう言う悪戯だけはちゃんとやってのけるのよね。
「……悪い子ね? ダメよそう言うことしちゃ……」
「……シャルに触れようとしていましたからね、当然です」
やれやれ……だがその悪戯の効果は絶大だったようだ。
隊長はかろうじて保っていた勇気を根こそぎへし折られたらしく、悔しそうに苦々しい顔をしつつも手を押さえて座り込んでしまっているし、隊長が何も言い出さないのを見た兵士たちもまた動けなくなっている。
その姿を見て意欲が失われたのだろう、私たちが馬車へと向かう間彼らは遠巻きにして何もできないままになっており、このまますんなり逃がしてくれそうな状況が生まれた。
それを見てエルネットさんが馬車の扉を開けて、まるで忠実な執事のようにわたくしを迎え入れる。
「どうぞ、お足元にお気をつけください」
「ありがとうエルネットさん、あ……そうだ」
わたくしは馬車の中へと足を踏み入れる前に隊長さんや兵士たちに一言言っておかねばいけない、と思い出しそのまま彼らの方へと顔を向けると優しく微笑む。
絶世の美女として王国中に喧伝されたわたくしの美貌だ、その笑顔を見た兵士たちからほぅ……と感心したような、それでいて気の抜けるようなため息のような声が上がる。
ま、わかっちゃいたけどこのシャルロッタ・インテリペリとしての外見は本当に破壊力満点だよなあ……と内心色々な意味で感心してしまう。
「勤勉なる王国兵士の皆様、朝早くからお疲れ様……わたくしの出立に盛大なお見送りいただき感謝いたしますわ」
ぺこりと頭を下げるとわたくしはそのまま馬車の中へと入り、続いてマーサが……最後にユルが大きく吠えると姿を消し、エルネットさんが半ば苦笑に近い微笑みを浮かべると扉を閉める。
それを見たリリーナさんとエミリオさんが御者台に座るとすぐさま馬車を走らせる……馬車の窓から外を見ると、兵士たちはわたくし達がその場を離れるのをぼうっとしながら見ているだけとなっている。
「……いやいや、またこんな出立にはなるとは……」
「でもみんな手出しできてなかったね」
屋敷から少し距離を取れた時点で、エルネットさんとデヴィットさん、そしてマーサがほっと息を吐く。
御者台に続く窓を開けてリリーナさんが悪戯っぽく笑いながらわたくしへと話しかけてくるのを見て、わたくしも微笑むが……あそこで兵士たちが暴発していたら流石に危なかったかもな。
わたくしとユルではなく非戦闘員であるマーサが真っ先に狙われたに違いない……そのマーサも今更ながらに恐怖心がぶり返したのか、少し震えながらわたくしを見て力無く微笑む。
「……あ、あんな怖い思いをしたのは初めてですよ……」
「マーサもよく我慢できましたわ、お疲れ様」
「……シャルロッタ様早く領地へ戻りましょう……」
マーサの言葉にわたくしも黙って頷く……王都に残っていると碌なことになりそうにない。
学園にもすでに休学の届を出しているし、ターヤにも一度領地へと戻ることは伝えている……クリスも危険を感じているのか、お兄様と調整しておりインテリペリ辺境伯領へと休養の名目でやってくることが決まった。
ミハエルはひと足さきに領地に戻っていて領地内部の引き締めに奔走しているのだという……おそらくイングウェイ王国の国民の大半は内戦になるのではないか? という危機感を感じているようで新聞などもすでにその論調になりつつあったのだ。
それがこの邸宅の包囲で裏打ちされたようなものだものな……軽くため息をついて窓の外を見るが、走り抜けていくわたくし達の馬車を見る王都の民の顔は非常に暗い。
「……陸路だとかなりかかるのよね……途中で何もなければいいのだけど」
「シャルは無事に王都を抜けれたようだね……」
自室の窓から静まり返る王都の様子を見ながらクリストフェル・マルムスティーンはほっと息を吐く……彼の背後にはヴィクターとマリアンが控えており、彼らもあまり表情には見せていないが不安を感じている。
まさか第一王子派が直接的に派閥に味方する貴族や商人たちへの攻勢を始めるとは思っていなかったのだ……いや正確にはそのうち行われると予測していたものの、退避の準備は完璧ではなくすでに幾人かの第二王子派の貴族や商人などが囚われていると言う報告が上がってきている。
「アンダース殿下が直接命令したわけではないようです」
「そりゃそうだよ、兄様はこんな細かい作戦を立てたりしない……他の貴族家の入れ知恵だろうね」
「殿下、インテリペリ辺境伯家に身を寄せましょう……冒険者組合のアイリーン様から信頼できる冒険者を護衛につけると連絡していただいております」
そうか、と頷くと彼はソファに腰を下ろして不安そうな表情を浮かべているプリシラ・ドッケン伯爵令嬢へと視線を移す。
彼女の実家はドッケン伯爵家……第一王子派の中ではかなり兄と距離を置いている家ではあるが、それでも敵派閥であることには変わりはない。
有能な秘書官ではあるが、一緒に同行させるのはリスクがある。
「プリシラ」
「……はい、なんでしょうか?」
「君はどうする? 僕はシャルの実家に世話になろうと思っているのだけど……」
クリストフェルの言葉にプリシラは少しだけ目を見開いて驚いたような表情を一瞬だけ浮かべる……本人も選択肢を与えられるとは思っていなかったのだろう。
プリシラの目的はクリストフェルとシャルロッタの監視と内情報告、そして第二王子派に潜入しているスパイの管理ではあるが、第一王子派が性急にことを運んだ以上、それらの行動にはあまり意味を持たないものとなりつつある。
クリストフェルの視線を真っ向から受け止めたプリシラは、内心恐ろしく動揺する……彼の目はまるで「君の目的はわかっているけど、それでもどうするか?」と言いたげなくらい鋭いものだったからだ。
「わ、私は……その……」
「今の王都に君を残していくのは忍びない、ドッケン伯爵家の立場もあるだろう? もし嫌じゃなければついてきたまえ」
クリストフェルは先ほどまでの鋭い視線から一転して優しく慈愛に満ちた表情を浮かべて笑う。
ああ、お見通しということか……それでもついてこいというのはプリシラを同行させることで、父に第一王子派への言い訳をさせることも考えているということなのだな。
プリシラにとって王家は遠く離れた場所にいる縁遠いものであったが、クリストフェルという同年代の王子が見せる優しさにほんの少しだけ彼女の心が揺れ動く。
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