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第六六話 シャルロッタ 一五歳 肉欲の悪魔 〇六
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「混沌魔法……罪なる愛欲ッ!」
「混沌魔法?! 魔王と同じアレか!」
オルインピアーダの放った言葉「混沌魔法」とは、混沌の眷属が使う特殊な魔法でその神が象徴しているものに関連した効果を発揮する……前世では魔王が放ってきて散々わたくしを悩ませた厄介な魔法でもある。
しかもオルインピアーダが使用した「罪なる愛欲」という魔法は、わたくしには完全に初見……彼女を中心とした空間が暗く蠢く泥濘へと包まれていくのを見てわたくしは防御結界に込める魔力をほんの少しだけ強化する。
「クハハッ! 第三階位へと進化した私であればこの魔法も行使可能ッ! この魔法は空間へと閉じ込めた敵を打ち滅ぼす結界……我が領域に飲み込まれて無限の快楽の中で悶え喜び……イキ狂って死になさいッ!」
「悪趣味ねえ……だからアンタたちは普通にしているとモテないのよ? お分かり?」
「その生意気な顔を快楽で崩壊させてやるわああッ!」
この空間全てが泥濘へと覆い尽くされると、その中から不規則に蠢く腕や足、顔や口、眼球やだらしなく垂れ下がった内臓など、狂気とも思える空間へと変貌し、その全てが自らの器官を自己破壊と再生を繰り返していく。
喘ぎ声なのか悲鳴なのか、それとも罵声なのか無数に存在している口からは、絶え間なくつんざくような声が響き渡り、折れた腕が、足が、掻きむしられて崩れた顔が、溶け出した眼球がわたくしへと殺到する。
普通の人間ならこの光景を見て発狂するだろうなあ……混沌の本質を表すような空間の中でわたくしの防御結界へと凄まじい衝撃が何度もぶつかってくる。
「クハハハッ! この空間で捉えられたものは無限の快楽と凄まじい絶頂の果てに悶え苦しみ死ぬ……お前もイキ狂って死ねっ!」
「ったく……品がないって言ってんのよ!」
わたくしが不滅を振るいながら迫り来る泥濘を切り払っていくが、展開している防御結界にさらに凄まじい回数と速度の不可視の攻撃が加わっている。
そうか、この魔法……本来結界内に敵を引きずり込んだ時点で勝ち確、絶対的な必殺技になり得る魔法なのだとその時点で気がついた。
防御結界がなければわたくしでも動けなくなる……かな? それでも普通の人間がこの結界内に閉じ込められた場合、精神や肉体だけでなく魂自体が汚染されるかもしれない。
「……普通の魔法使いや戦士であればこの魔法の結界へと取り込んだ時点で精神に変調をきたす……だがさすがシャルロッタ・インテリペリ! あなた最高ですわ!」
オルインピアーダの言葉でその予想が裏打ちされる……だがこの程度の威力、魔力、そして攻撃力ではわたくしの能力に及ぶことはない。
はっきりいえばまだ足りない……この魔法ではわたくしの防御結界を破壊することなど出来ようはずがない。
だからこそ、わたくしはこの混沌魔法罪なる愛欲を消滅させる対抗できる魔法を叩き込み、完全にオルインピアーダという汚れを消し去ることを決意する。
「……仕方ないわねえ、この結界をぶち壊すくらいのすっごいのぶちかましちゃうか」
わたくしが剣を眼前に立てると軽く目を閉じて魔法の準備へと移る。
普通の魔法ではおそらく結界を破壊するまでには至らないだろう……それであればわたくしの持てる最大級の威力を持つ魔法を叩きつければ良い。
答えは一つ……神滅魔法をぶちかましてオルインピアーダごと吹き飛ばして仕舞えばいいのだ。
オルインピアーダは反撃してこないわたくしを見て口の端から涎を垂れ流して叫ぶ……彼女に備わった象徴たる器官が感情を表すかのように波打ち震え、そして怒張するかのように一回り大きく長く拡大する。
「もう……イッてしまいそうですッ! 最後はお前の胎に核を叩き込んでやるわ、絶頂を味合わせてやるううッ!」
「天空より来たれ、善を放ち悪を滅す、魂へと命ずる大海……」
わたくしの周囲に急激に魔力が集中していく、それは濁流のようにわたくしを中心として渦巻き、迫り来る泥濘を押し流し始める。
だが悪魔はその異変に気がついていない、というか一人で荒い息を吐き体を震わせて痙攣している……何してんだアレ。
涎を拭くこともせずにオルインピアーダはわたくしへと手をかざし、その動きに合わせて泥濘から数百数千の触手にすら見える無数の腕がわたくしへと全方位から伸びていく。
「辺境の翡翠姫ッ! これでお前も終わりだ!」
「神界の濁流に溺れて、恐怖を払拭せよ……貴女の敗因はわたくしをナメすぎたことよ?」
「何を……ッ! この状態から何をしようというのだ!」
「魔法ってのはこういうのをいうのよ! 神滅魔法……聖なる七海ッ!」
わたくしの詠唱完了とともに、足元から凄まじい量の濁流が渦を巻いて出現し、それは質量を持つ荒れ狂う大海蛇となって空間を押し返していく。
あと数ミリで触手が届くところだったオルインピアーダは、一瞬で空間ごと破壊されていく今の状況が理解できない……歪んだ笑顔を浮かべたまま硬直した彼女は、牙を剥き出しに口を開けて襲いくる無数の大海蛇に顔や胴体、そして両腕両脚を食いちぎられて引き裂かれていく。
痛みを感じてようやく自分の死が目前に迫っていることを認識したのだろう、引き裂かれた肉体が必死に再生を繰り返し、半分砕けた顎を動かして悲鳴をあげる。
「ああああっ!? こ、これは……あゔぁああああああっ!」
「天界の大渦潮……それを現世に呼び出し全てを破壊する神滅魔法聖なる七海……貴女に待っているのは残酷な死よ」
「ア、辺境の翡翠姫エエエエエッ!」
「じゃあねオルインピアーダ、貴女ちょっとだけホネがあったわよ?」
その言葉が終わらないうちにオルインピアーダの体は完全に粉砕され、荒れ狂う大海蛇は結界を破壊し、空間に亀裂を作って全てを奈落へと轟音と共に押し流していく。
魔法の効果がなくなり、それまで渦を巻いていた大量の水が次第に消え去っていく……。
空間に静寂と、暗闇が戻ってくる……わたくしは大きく息を吐くと、強い疲労感と眩暈を感じて地面に膝をつく、前世では魔法使いと一緒に魔力を共有して使った魔法だ。
一人で使うにはいまだに負担が大きいのだろう……強い倦怠感とボヤける視界の中、何とか立ちあがろうとするが、思うように前に出ない足がもつれて倒れそうになるが何とか堪えてその場から歩き始める。
「……ッと、まだ負担が……でもここから脱出しないと、寝こけたら見つかっちゃう……」
——ズドオオン! という凄まじい爆音と共に学園全体を震わせるような巨大な揺れがホールに響いた。
次の瞬間、それまで別の場所へと魔力を吸収されていたプリムローズがいきなり全ての力を失い、地面へと倒れ伏したのを見てクリストフェルは慌てて彼女の元へと走り出す。
いきなりの終結にホール内には一瞬静寂が訪れるが、すぐに混乱した学生たちはそれぞれ泣き出すもの、虚脱した状態になるもの、そしてお互いの息があることを喜ぶもの……それぞれの反応を見せ始める。
ユルはその光景を見て敬愛する主人が元凶である悪魔を滅ぼしたのだ、と理解してほっと息を吐くと、ゆっくりとクリストフェルとプリムローズの姿を背にホールからそっと姿を消した。
「プリム! プリム……! 目を開けろ!」
「う……う……」
「よ、よかった生きている……」
苦しそうに呻くプリムローズだが、クリストフェルの呼びかけに気がつき、ゆっくりと目を開ける……そしてその目に微笑むクリストフェルを見て、目からボロボロと大粒の涙を溢し始めた。
表情が泣き顔からそして何かを思い出したかのように恐怖に歪み嗚咽を漏らしながら、彼女は顔を両手で覆うと贖罪の言葉を口にし始めた……細い肩が震え、消えてしまいたいと言わんばかりに身を縮ませて必死に口をひらく。
顔色は真っ青で今にも死んでしまいそうな、もはや消えてしまいそうなくらいの表情を浮かべるプリムローズ。
「……わ、私は……殿下に皆さんに何と言うことを……ごめんなさい……ごめんなさい……」
「……大丈夫君は誰も殺していない、だから今は家に帰って休もう」
「だ、だめです……私は汚れてしまった……私は多くの人を傷つけてしまった……これは死んでお詫びをするしか……私はもはや……許してください……」
ガタガタと震えて泣き続けるプリムローズはクリストフェルに必死に首を垂れて贖罪の言葉を並べていく。
記憶がきちんと残っているのだろう、そしてあの攻撃的で狂気に満ちたプリムローズの行動や言動、それらは何者かに操られていたが、その時の光景は全て彼女は覚えている。
だがクリストフェルは優しく微笑むと、プリムローズの肩にそっと手を載せると優しく語りかけた。
「……今は気持ちを落ち着ける時だ、君は確かに許されない過ちを犯したかもしれない、でも僕にとっては妹のような存在、プリムだよ。後日ゆっくりと話そう……マリアン! ヴィクター!」
「はっ!」
「は、はいっ!」
「学生たちの保護と誘導を、おそらく学園の外に軍隊や冒険者組合の連中が来ているはずだ、説明も頼む。僕はホワイトスネイク侯爵令嬢を家へと送る」
クリストフェルはプリムローズを抱き抱えると、その場から立ち上がってホールを後にしていく……学生の前にプリムローズを残すのはまずい、と言う判断だが当の学生たちは目の前で起きた出来事と、突然の終わりに混乱が隠しきれなくなっている。
これを統率して引き渡すのか……と内心でため息をついたヴィクターとマリアンはお互い顔を見合わせて苦笑いを浮かべると、まだ状況を把握しきれていない学生たちに向かって叫んだ。
「家に帰れるぞ! 私たちはクリストフェル殿下の護衛を務めているものだ! 私たちの指示に従って学園から脱出する! 指示に従ってくれ!」
「混沌魔法?! 魔王と同じアレか!」
オルインピアーダの放った言葉「混沌魔法」とは、混沌の眷属が使う特殊な魔法でその神が象徴しているものに関連した効果を発揮する……前世では魔王が放ってきて散々わたくしを悩ませた厄介な魔法でもある。
しかもオルインピアーダが使用した「罪なる愛欲」という魔法は、わたくしには完全に初見……彼女を中心とした空間が暗く蠢く泥濘へと包まれていくのを見てわたくしは防御結界に込める魔力をほんの少しだけ強化する。
「クハハッ! 第三階位へと進化した私であればこの魔法も行使可能ッ! この魔法は空間へと閉じ込めた敵を打ち滅ぼす結界……我が領域に飲み込まれて無限の快楽の中で悶え喜び……イキ狂って死になさいッ!」
「悪趣味ねえ……だからアンタたちは普通にしているとモテないのよ? お分かり?」
「その生意気な顔を快楽で崩壊させてやるわああッ!」
この空間全てが泥濘へと覆い尽くされると、その中から不規則に蠢く腕や足、顔や口、眼球やだらしなく垂れ下がった内臓など、狂気とも思える空間へと変貌し、その全てが自らの器官を自己破壊と再生を繰り返していく。
喘ぎ声なのか悲鳴なのか、それとも罵声なのか無数に存在している口からは、絶え間なくつんざくような声が響き渡り、折れた腕が、足が、掻きむしられて崩れた顔が、溶け出した眼球がわたくしへと殺到する。
普通の人間ならこの光景を見て発狂するだろうなあ……混沌の本質を表すような空間の中でわたくしの防御結界へと凄まじい衝撃が何度もぶつかってくる。
「クハハハッ! この空間で捉えられたものは無限の快楽と凄まじい絶頂の果てに悶え苦しみ死ぬ……お前もイキ狂って死ねっ!」
「ったく……品がないって言ってんのよ!」
わたくしが不滅を振るいながら迫り来る泥濘を切り払っていくが、展開している防御結界にさらに凄まじい回数と速度の不可視の攻撃が加わっている。
そうか、この魔法……本来結界内に敵を引きずり込んだ時点で勝ち確、絶対的な必殺技になり得る魔法なのだとその時点で気がついた。
防御結界がなければわたくしでも動けなくなる……かな? それでも普通の人間がこの結界内に閉じ込められた場合、精神や肉体だけでなく魂自体が汚染されるかもしれない。
「……普通の魔法使いや戦士であればこの魔法の結界へと取り込んだ時点で精神に変調をきたす……だがさすがシャルロッタ・インテリペリ! あなた最高ですわ!」
オルインピアーダの言葉でその予想が裏打ちされる……だがこの程度の威力、魔力、そして攻撃力ではわたくしの能力に及ぶことはない。
はっきりいえばまだ足りない……この魔法ではわたくしの防御結界を破壊することなど出来ようはずがない。
だからこそ、わたくしはこの混沌魔法罪なる愛欲を消滅させる対抗できる魔法を叩き込み、完全にオルインピアーダという汚れを消し去ることを決意する。
「……仕方ないわねえ、この結界をぶち壊すくらいのすっごいのぶちかましちゃうか」
わたくしが剣を眼前に立てると軽く目を閉じて魔法の準備へと移る。
普通の魔法ではおそらく結界を破壊するまでには至らないだろう……それであればわたくしの持てる最大級の威力を持つ魔法を叩きつければ良い。
答えは一つ……神滅魔法をぶちかましてオルインピアーダごと吹き飛ばして仕舞えばいいのだ。
オルインピアーダは反撃してこないわたくしを見て口の端から涎を垂れ流して叫ぶ……彼女に備わった象徴たる器官が感情を表すかのように波打ち震え、そして怒張するかのように一回り大きく長く拡大する。
「もう……イッてしまいそうですッ! 最後はお前の胎に核を叩き込んでやるわ、絶頂を味合わせてやるううッ!」
「天空より来たれ、善を放ち悪を滅す、魂へと命ずる大海……」
わたくしの周囲に急激に魔力が集中していく、それは濁流のようにわたくしを中心として渦巻き、迫り来る泥濘を押し流し始める。
だが悪魔はその異変に気がついていない、というか一人で荒い息を吐き体を震わせて痙攣している……何してんだアレ。
涎を拭くこともせずにオルインピアーダはわたくしへと手をかざし、その動きに合わせて泥濘から数百数千の触手にすら見える無数の腕がわたくしへと全方位から伸びていく。
「辺境の翡翠姫ッ! これでお前も終わりだ!」
「神界の濁流に溺れて、恐怖を払拭せよ……貴女の敗因はわたくしをナメすぎたことよ?」
「何を……ッ! この状態から何をしようというのだ!」
「魔法ってのはこういうのをいうのよ! 神滅魔法……聖なる七海ッ!」
わたくしの詠唱完了とともに、足元から凄まじい量の濁流が渦を巻いて出現し、それは質量を持つ荒れ狂う大海蛇となって空間を押し返していく。
あと数ミリで触手が届くところだったオルインピアーダは、一瞬で空間ごと破壊されていく今の状況が理解できない……歪んだ笑顔を浮かべたまま硬直した彼女は、牙を剥き出しに口を開けて襲いくる無数の大海蛇に顔や胴体、そして両腕両脚を食いちぎられて引き裂かれていく。
痛みを感じてようやく自分の死が目前に迫っていることを認識したのだろう、引き裂かれた肉体が必死に再生を繰り返し、半分砕けた顎を動かして悲鳴をあげる。
「ああああっ!? こ、これは……あゔぁああああああっ!」
「天界の大渦潮……それを現世に呼び出し全てを破壊する神滅魔法聖なる七海……貴女に待っているのは残酷な死よ」
「ア、辺境の翡翠姫エエエエエッ!」
「じゃあねオルインピアーダ、貴女ちょっとだけホネがあったわよ?」
その言葉が終わらないうちにオルインピアーダの体は完全に粉砕され、荒れ狂う大海蛇は結界を破壊し、空間に亀裂を作って全てを奈落へと轟音と共に押し流していく。
魔法の効果がなくなり、それまで渦を巻いていた大量の水が次第に消え去っていく……。
空間に静寂と、暗闇が戻ってくる……わたくしは大きく息を吐くと、強い疲労感と眩暈を感じて地面に膝をつく、前世では魔法使いと一緒に魔力を共有して使った魔法だ。
一人で使うにはいまだに負担が大きいのだろう……強い倦怠感とボヤける視界の中、何とか立ちあがろうとするが、思うように前に出ない足がもつれて倒れそうになるが何とか堪えてその場から歩き始める。
「……ッと、まだ負担が……でもここから脱出しないと、寝こけたら見つかっちゃう……」
——ズドオオン! という凄まじい爆音と共に学園全体を震わせるような巨大な揺れがホールに響いた。
次の瞬間、それまで別の場所へと魔力を吸収されていたプリムローズがいきなり全ての力を失い、地面へと倒れ伏したのを見てクリストフェルは慌てて彼女の元へと走り出す。
いきなりの終結にホール内には一瞬静寂が訪れるが、すぐに混乱した学生たちはそれぞれ泣き出すもの、虚脱した状態になるもの、そしてお互いの息があることを喜ぶもの……それぞれの反応を見せ始める。
ユルはその光景を見て敬愛する主人が元凶である悪魔を滅ぼしたのだ、と理解してほっと息を吐くと、ゆっくりとクリストフェルとプリムローズの姿を背にホールからそっと姿を消した。
「プリム! プリム……! 目を開けろ!」
「う……う……」
「よ、よかった生きている……」
苦しそうに呻くプリムローズだが、クリストフェルの呼びかけに気がつき、ゆっくりと目を開ける……そしてその目に微笑むクリストフェルを見て、目からボロボロと大粒の涙を溢し始めた。
表情が泣き顔からそして何かを思い出したかのように恐怖に歪み嗚咽を漏らしながら、彼女は顔を両手で覆うと贖罪の言葉を口にし始めた……細い肩が震え、消えてしまいたいと言わんばかりに身を縮ませて必死に口をひらく。
顔色は真っ青で今にも死んでしまいそうな、もはや消えてしまいそうなくらいの表情を浮かべるプリムローズ。
「……わ、私は……殿下に皆さんに何と言うことを……ごめんなさい……ごめんなさい……」
「……大丈夫君は誰も殺していない、だから今は家に帰って休もう」
「だ、だめです……私は汚れてしまった……私は多くの人を傷つけてしまった……これは死んでお詫びをするしか……私はもはや……許してください……」
ガタガタと震えて泣き続けるプリムローズはクリストフェルに必死に首を垂れて贖罪の言葉を並べていく。
記憶がきちんと残っているのだろう、そしてあの攻撃的で狂気に満ちたプリムローズの行動や言動、それらは何者かに操られていたが、その時の光景は全て彼女は覚えている。
だがクリストフェルは優しく微笑むと、プリムローズの肩にそっと手を載せると優しく語りかけた。
「……今は気持ちを落ち着ける時だ、君は確かに許されない過ちを犯したかもしれない、でも僕にとっては妹のような存在、プリムだよ。後日ゆっくりと話そう……マリアン! ヴィクター!」
「はっ!」
「は、はいっ!」
「学生たちの保護と誘導を、おそらく学園の外に軍隊や冒険者組合の連中が来ているはずだ、説明も頼む。僕はホワイトスネイク侯爵令嬢を家へと送る」
クリストフェルはプリムローズを抱き抱えると、その場から立ち上がってホールを後にしていく……学生の前にプリムローズを残すのはまずい、と言う判断だが当の学生たちは目の前で起きた出来事と、突然の終わりに混乱が隠しきれなくなっている。
これを統率して引き渡すのか……と内心でため息をついたヴィクターとマリアンはお互い顔を見合わせて苦笑いを浮かべると、まだ状況を把握しきれていない学生たちに向かって叫んだ。
「家に帰れるぞ! 私たちはクリストフェル殿下の護衛を務めているものだ! 私たちの指示に従って学園から脱出する! 指示に従ってくれ!」
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