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第44話 Sランク達の動向
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(ジュウベエ)
「ジュウベエ様、指名依頼が届いております」
「めんどくせぇな。断っておいてくれ」
「ジュウベエ様。金額くらい見てからにした方が良いですよ?」
「金は十分あるし、別に構わん」
「そうですか、受注だけで金貨1000枚、依頼完了でプラス金貨4000枚の依頼だったんですが残念です。それに…… レオネア様と会える機会だったかもしれませんよ?」
「何だと? レオネアと会えるなら考えても良いがどんな依頼だ」
今、俺に指名依頼の事を話しているのは、アケボノ国の東都ギルドで、俺専人の受付嬢をしている『アサミ』だ。
先日通商連合国で、古代遺跡が探索され、その時に出土した魔導具の【魔導通話機】がSランク冒険者には強制的に持たされた。
その魔導具を使っての連絡だった。
「先日の帝国の王国への侵攻は聞かれてますよね?」
「ああ。勿論だ帝国が10万の兵を出して8万が死んだと言う話だろ? 俺は戦争に関わる気はないぞ?」
「いえ、依頼はヒュドラの討伐です。依頼主は帝国。先日の侵攻の際8万の兵を殺したのが、そのヒュドラだったそうです。帝国が4人のSランク冒険者に対してヒュドラの討伐を指名依頼で出したのです」
「って事は、レオネアだけでなくメーガンやシュタットガルドの爺さんにも話は言ってるのか?」
「その筈です」
「手を組む事はしない。それでいいなら受けてやろう」
「ありがとうございます。今から手付の金貨1000枚をギルド口座に入金しますから、1週間以内に現地の『慰霊の壁』と呼ばれる場所へ向かって下さい。帝国のマクレガー大佐と言う人物から情報を貰って、今では王国領になった現地で活動する事になります」
「解った。他の連中の受注状況は解かるか?」
「シュタットガルド様は既にお受けになられたと伺っております」
「あの爺さんは、いつも酔ってるから、あてには出来ん。すぐ地形を変えてしまいやがるしな」
「他の二名はまだ確認が取れておりません」
◇◆◇◆
(シュタットガルド)
「わしに、軍の尻拭いを持ってきおったのか?」
「いえ翁。今回の軍の壊滅はヒュドラだと判明しまして、相手が王国軍であれば翁の手を煩わすような事はございませんが、200年前に確認されて以来初めて人前に姿を現したヒュドラの討伐は、冒険者ギルドの管轄だと言われまして。そうであればここは翁に出て頂くしか無いと……」
「適当な事をぬかしおって。他の三人にも声を掛けたんだろう? ボルビック。カレンから聞いておるぞ?」
「念には念をでございます。他の三名は他国からの遠征になりますので、到着に一週間以上は掛かります。翁であればヒュドラに出会えさえすれば、三名が到着する前に依頼を終わらせて頂けるのでは? と思っております」
「戯言を申すな。ヒュドラを見たと言うマクレガーの奴は既に慰霊の壁に行っておるのか? 小僧どもにヒュドラの素材は渡せぬな。出ようでは無いか」
「翁。もう一つご相談が」
「年寄りに余り話を振るな。ボルビック」
「聞き流していただいても構いません。王国のカール村の古代遺跡に、Sランクダンジョン攻略パーティの、『ドラゴンブレス』が向かったと言う情報も入っております。これを攻略すれば奴もSランクに上がって来るでしょう。顔だけでも見ておかれたらいかがでしょうか?」
「ふむ。古代遺跡とヒュドラか。わしの感じゃがこの二つの発生が距離も近すぎるし、無関係とも思えぬな。マクレガーの話の内容によっては、行ってみるかもしれぬ」
「翁。差し出がましいですが、今回の件一筋縄ではいかないようにも思えます。他の三名をうまく使って見るのも翁にしか出来ぬ事と思いますが?」
「状況によっては考えてみよう」
◇◆◇◆
(レオネア)
「どうなさいますか? レオネア様」
「ヒュドラには興味が湧くなぁ。しもべにする事が出来ればSランクダンジョンであろうと、単独攻略は可能になるかもね!」
「それでは受けると言う事でよろしいですか?」
「ジュウベエは出てくるのかな? あいつしつこいんだよね。結婚しろって」
「お嫌いなんですか?」
「なんて言うかさ。僕ってクールじゃん? ジュウベエは一々台詞が暑苦しくて生理的に無理な感じ?」
「ヒドッ…… ではお断りを?」
「いや、僕はちょっと他に興味が湧く事があってね」
「何でしょうか?」
「まだ確認できてないから今は言えないんだけどね」
「では、受けて頂けるので?」
「カール村の側の古代遺跡。あそこをベッケンに続いて私が解放すれば、もう一生贅沢しても使いきれないくらいのお金になりそうだから、そっちをメインで動いても文句言わないんだったらいいかな?」
「えーと…… レオネア様。一応情報として王国の『ドラゴンブレス』が密命を受けて、調査に入ってるそうですよ? 貴族でもあり今回の作戦地域の領主代行らしいですから、余計な揉め事は控えたほうが」
「ん-…… どうなのかな? そのドラゴンブレスって本当に実力はあるの?」
「解りませんが。Sランクダンジョン『絶望の谷』は彼らのクランによって攻略されたのは事実です」
「クランか…… 大人数なんて僕には無理だな」
「ジュウベエは別として、メーガンには久しぶりに会いたいから、取り敢えず行くよ」
「解りました、参加で返事しておきます。即時で依頼料が振り込まれますので1週間以内に、帝国のマクレガー大佐に接触してください、慰霊壁の帝国側に居る筈です」
◇◆◇◆
(メーガン)
ヒュドラ討伐の指名依頼か、あり得ませんね。
前代のヒュドラの討伐からまだたったの200年。
復活には後800年は必要な筈です。
エルフである私は前代のヒュドラの討伐に参加しました。
それどころか私がこの手で止めを刺しました。
エルフ以外では既にその事実を知っている人族は、存在しないんですけどね。
同種のエンシェントドラゴンは、一度死ねば復活に1000年の時が必要な事は、精霊界では一般常識にも等しい情報です。
一体だれがどういう理由で、そんな虚偽の情報を流したのでしょうか?
依頼人が帝国だと言う事は、一国を騙せるほどの情報の提供元からと言う事ですが、今は私が動くべきタイミングでは無さそうですね。
それに、今回の帝国の言い分には全く、共感の余地がありません。
王国も似たり寄ったりですが、エルフを含めた亜人族の奴隷を正当化する法を掲げる国に、私が協力する理由は全く存在しません。
勝手に、古代遺跡の発掘を狙って王国に攻め入った帝国が、何者かの逆鱗に触れて壊滅。
どこに正当性があると言うのでしょうか?
私が、最低限恩義を感じて指名依頼を受ける事があるとすれば、奴隷制度の完全撤廃を行った、この聖教国の教皇猊下のご依頼であれば、話は伺うかもしれませんが……
それにまだ年若い者ばかり成れど、現在のSランク冒険者達は、私が冒険者になってからの300年間で最強のメンバーだと言えます。
彼らが破れるような事があれば、話だけは伺って見ましょう。
そんな事を考えていると、私の魔導通話機に着信があった。
『はい。メーガンです』
『わしじゃ。シュタットガルドじゃ』
『あら坊や、久しぶりね』
『おい、姉御。エルフ基準で歳を判断するな。60を迎えたわしに坊やは無かろう』
『あなたが私の年齢を追い越せるわけじゃ無いから、いつまでたっても坊やは坊やのままだわ』
『まったく…… 姉御と話すと調子が狂うわい』
『要件は何なの? 帝国や王国に私が向かう事はありませんけどね』
『そう言うとは思っていたが、一応姉御が聞いた事があるかどうかの確認だけだ』
『何をですか?』
『黄金のヒュドラの事をじゃ』
『黄金のヒュドラですか? いえ、初めて聞きますね。もしかして今回の相手がその黄金のヒュドラ何ですか?』
『そうじゃ。現場を見たと言う帝国の幹部軍人が5mサイズの黄金のヒュドラが、氷、炎、雷の三属性攻撃であっという間に8万の将兵を殺して、そのまま消えたと言っておる』
『私の知っているヒュドラは、体長こそ10mを超えるサイズですが、使える属性は火、風、水の三属性でした。それに身体は赤黒い肌で、どう見間違っても黄金色には見えませんね』
『わしは、既に現地に入り痕跡を調べておるのじゃが、全く手掛かりが掴めん。少しこの近所にある古代遺跡を調査しようと思ってな。もしわしに何かあった場合の事を、姉御に連絡して置こうと思ったんじゃ』
『あら、坊やの癖に随分行動が慎重になったのね。あなたが行方知れずになれば、骨くらいは拾いに行ってあげるわ』
『頼んだぞい』
何が起こってるのでしょう?
今では無くても、私も行かなければならないかしら?
「ジュウベエ様、指名依頼が届いております」
「めんどくせぇな。断っておいてくれ」
「ジュウベエ様。金額くらい見てからにした方が良いですよ?」
「金は十分あるし、別に構わん」
「そうですか、受注だけで金貨1000枚、依頼完了でプラス金貨4000枚の依頼だったんですが残念です。それに…… レオネア様と会える機会だったかもしれませんよ?」
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今、俺に指名依頼の事を話しているのは、アケボノ国の東都ギルドで、俺専人の受付嬢をしている『アサミ』だ。
先日通商連合国で、古代遺跡が探索され、その時に出土した魔導具の【魔導通話機】がSランク冒険者には強制的に持たされた。
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「って事は、レオネアだけでなくメーガンやシュタットガルドの爺さんにも話は言ってるのか?」
「その筈です」
「手を組む事はしない。それでいいなら受けてやろう」
「ありがとうございます。今から手付の金貨1000枚をギルド口座に入金しますから、1週間以内に現地の『慰霊の壁』と呼ばれる場所へ向かって下さい。帝国のマクレガー大佐と言う人物から情報を貰って、今では王国領になった現地で活動する事になります」
「解った。他の連中の受注状況は解かるか?」
「シュタットガルド様は既にお受けになられたと伺っております」
「あの爺さんは、いつも酔ってるから、あてには出来ん。すぐ地形を変えてしまいやがるしな」
「他の二名はまだ確認が取れておりません」
◇◆◇◆
(シュタットガルド)
「わしに、軍の尻拭いを持ってきおったのか?」
「いえ翁。今回の軍の壊滅はヒュドラだと判明しまして、相手が王国軍であれば翁の手を煩わすような事はございませんが、200年前に確認されて以来初めて人前に姿を現したヒュドラの討伐は、冒険者ギルドの管轄だと言われまして。そうであればここは翁に出て頂くしか無いと……」
「適当な事をぬかしおって。他の三人にも声を掛けたんだろう? ボルビック。カレンから聞いておるぞ?」
「念には念をでございます。他の三名は他国からの遠征になりますので、到着に一週間以上は掛かります。翁であればヒュドラに出会えさえすれば、三名が到着する前に依頼を終わらせて頂けるのでは? と思っております」
「戯言を申すな。ヒュドラを見たと言うマクレガーの奴は既に慰霊の壁に行っておるのか? 小僧どもにヒュドラの素材は渡せぬな。出ようでは無いか」
「翁。もう一つご相談が」
「年寄りに余り話を振るな。ボルビック」
「聞き流していただいても構いません。王国のカール村の古代遺跡に、Sランクダンジョン攻略パーティの、『ドラゴンブレス』が向かったと言う情報も入っております。これを攻略すれば奴もSランクに上がって来るでしょう。顔だけでも見ておかれたらいかがでしょうか?」
「ふむ。古代遺跡とヒュドラか。わしの感じゃがこの二つの発生が距離も近すぎるし、無関係とも思えぬな。マクレガーの話の内容によっては、行ってみるかもしれぬ」
「翁。差し出がましいですが、今回の件一筋縄ではいかないようにも思えます。他の三名をうまく使って見るのも翁にしか出来ぬ事と思いますが?」
「状況によっては考えてみよう」
◇◆◇◆
(レオネア)
「どうなさいますか? レオネア様」
「ヒュドラには興味が湧くなぁ。しもべにする事が出来ればSランクダンジョンであろうと、単独攻略は可能になるかもね!」
「それでは受けると言う事でよろしいですか?」
「ジュウベエは出てくるのかな? あいつしつこいんだよね。結婚しろって」
「お嫌いなんですか?」
「なんて言うかさ。僕ってクールじゃん? ジュウベエは一々台詞が暑苦しくて生理的に無理な感じ?」
「ヒドッ…… ではお断りを?」
「いや、僕はちょっと他に興味が湧く事があってね」
「何でしょうか?」
「まだ確認できてないから今は言えないんだけどね」
「では、受けて頂けるので?」
「カール村の側の古代遺跡。あそこをベッケンに続いて私が解放すれば、もう一生贅沢しても使いきれないくらいのお金になりそうだから、そっちをメインで動いても文句言わないんだったらいいかな?」
「えーと…… レオネア様。一応情報として王国の『ドラゴンブレス』が密命を受けて、調査に入ってるそうですよ? 貴族でもあり今回の作戦地域の領主代行らしいですから、余計な揉め事は控えたほうが」
「ん-…… どうなのかな? そのドラゴンブレスって本当に実力はあるの?」
「解りませんが。Sランクダンジョン『絶望の谷』は彼らのクランによって攻略されたのは事実です」
「クランか…… 大人数なんて僕には無理だな」
「ジュウベエは別として、メーガンには久しぶりに会いたいから、取り敢えず行くよ」
「解りました、参加で返事しておきます。即時で依頼料が振り込まれますので1週間以内に、帝国のマクレガー大佐に接触してください、慰霊壁の帝国側に居る筈です」
◇◆◇◆
(メーガン)
ヒュドラ討伐の指名依頼か、あり得ませんね。
前代のヒュドラの討伐からまだたったの200年。
復活には後800年は必要な筈です。
エルフである私は前代のヒュドラの討伐に参加しました。
それどころか私がこの手で止めを刺しました。
エルフ以外では既にその事実を知っている人族は、存在しないんですけどね。
同種のエンシェントドラゴンは、一度死ねば復活に1000年の時が必要な事は、精霊界では一般常識にも等しい情報です。
一体だれがどういう理由で、そんな虚偽の情報を流したのでしょうか?
依頼人が帝国だと言う事は、一国を騙せるほどの情報の提供元からと言う事ですが、今は私が動くべきタイミングでは無さそうですね。
それに、今回の帝国の言い分には全く、共感の余地がありません。
王国も似たり寄ったりですが、エルフを含めた亜人族の奴隷を正当化する法を掲げる国に、私が協力する理由は全く存在しません。
勝手に、古代遺跡の発掘を狙って王国に攻め入った帝国が、何者かの逆鱗に触れて壊滅。
どこに正当性があると言うのでしょうか?
私が、最低限恩義を感じて指名依頼を受ける事があるとすれば、奴隷制度の完全撤廃を行った、この聖教国の教皇猊下のご依頼であれば、話は伺うかもしれませんが……
それにまだ年若い者ばかり成れど、現在のSランク冒険者達は、私が冒険者になってからの300年間で最強のメンバーだと言えます。
彼らが破れるような事があれば、話だけは伺って見ましょう。
そんな事を考えていると、私の魔導通話機に着信があった。
『はい。メーガンです』
『わしじゃ。シュタットガルドじゃ』
『あら坊や、久しぶりね』
『おい、姉御。エルフ基準で歳を判断するな。60を迎えたわしに坊やは無かろう』
『あなたが私の年齢を追い越せるわけじゃ無いから、いつまでたっても坊やは坊やのままだわ』
『まったく…… 姉御と話すと調子が狂うわい』
『要件は何なの? 帝国や王国に私が向かう事はありませんけどね』
『そう言うとは思っていたが、一応姉御が聞いた事があるかどうかの確認だけだ』
『何をですか?』
『黄金のヒュドラの事をじゃ』
『黄金のヒュドラですか? いえ、初めて聞きますね。もしかして今回の相手がその黄金のヒュドラ何ですか?』
『そうじゃ。現場を見たと言う帝国の幹部軍人が5mサイズの黄金のヒュドラが、氷、炎、雷の三属性攻撃であっという間に8万の将兵を殺して、そのまま消えたと言っておる』
『私の知っているヒュドラは、体長こそ10mを超えるサイズですが、使える属性は火、風、水の三属性でした。それに身体は赤黒い肌で、どう見間違っても黄金色には見えませんね』
『わしは、既に現地に入り痕跡を調べておるのじゃが、全く手掛かりが掴めん。少しこの近所にある古代遺跡を調査しようと思ってな。もしわしに何かあった場合の事を、姉御に連絡して置こうと思ったんじゃ』
『あら、坊やの癖に随分行動が慎重になったのね。あなたが行方知れずになれば、骨くらいは拾いに行ってあげるわ』
『頼んだぞい』
何が起こってるのでしょう?
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