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第92話 魔国へ⑦

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 私はオダ将軍の呼びかけに応えて、飛空船をゆっくりと城の前庭に着陸させて、オダ将軍達が現れるのを待った。

 勿論結界は張ったままだよ?

 オダ将軍が、側近らしき人とSPっぽい人を連れて前庭に現れると、私はカトリーヌさんと一緒にシルバの背に乗った状態で、スパロー号から降りた。

 普通に天駆スキルを使って、ゆったりと地面の無い場所を歩くシルバの姿に、アーヅチのお城の人達もびっくりしてたよ。
 流石にシルバに乗ったまま会話をするのは、失礼だよね? って思ったから、オダ将軍の前に到着すると、シルバの背中から降りた。

「随分、好戦的な登場の仕方であるな。外交と申しておったが、戦をしに来たり奴隷を求めてきたわけでは無いのか?」
「はい。私はガイアス大陸にある、スパリゾート共和国の女王『アスカ=スパリゾート』と言います。この大陸に魔法陣魔法のルーツがあると思い、話を聞きに伺いました。同行者は、ギルノア王国のフリオニール国王と、護衛の2名。それと神狼王《フェンリル》のシルバです」

「なんとフェンリルと申すか。実在したのだな。こちらのわらわの後ろに控えておるのは、魔導学園長のトヨトミと、国軍司令官のトクガワじゃ」

 紹介されたトヨトミさんとトクガワさんは、軽く頭を下げた。
 トヨトミさんは男性で背はあまり高く無くちょっとサル顔で愛嬌のあるかたで、服装は和服っぽい感じで随分きらびやかな服装で、トクガワさんは女性で、凛とした佇まいと言うのがしっくりくる、和風顔なのだけど姫騎士っぽい雰囲気を持った人だった。服装は真っ白な軍服で金色のモールで飾られて、ギルノア王国の近衛の正装に似ている。

 文化は全体的に日本と異世界文化が、時代背景とかもめちゃくちゃで、絡み合ってる感じな国だ。
「オダ将軍。この国の代表者は将軍で間違いないのですか?」
「何故違うと思う?」

「私の中の常識では、将軍と言う役職自体が国の王から与えられる物であって、国家元首が名乗る役職名ではないと思ったからです」
「ほう、ヤーバン大陸共通語の複雑な言葉の意味合いを、よく理解しておるな。ガイアス大陸ではこの大陸の言葉は伝わっておるのか?」

「いえ、理解して話せるのはほぼ私だけだと思います。私の同行者達には、魔法陣を書き記して理解できるように、させています」
「何と申した? 魔方陣を書き記してだと? 言語理解など高度な術は第三階位に当たる魔法陣だぞ。神言を理解せねば書き記したり出来ぬはずだ」

「神言と言うか、漢字は私には生まれながらに知識がありましたから、殆ど解ります」

 バラとかレモンとかいきなり書けと言われても無理だと思うけど……
 とちょっと関係無い事を考えちゃった。

「まー良い話を戻そう。アスカ女王の言う通り、この国には皇族と言う立場の者が存在する。ただし政治の実権は持っておらず、為政者である我らを任命する事が主な仕事であるな」

 へー、なんか現代日本っぽいシステムだね。
 あれ? 現代じゃ無くても日本てずっとそうなんだっけ?
 よくわかんないな……
 もう少し政治経済まじめに勉強しとけばよかったな。
 大学で……

 でも話に聞いてた内容だと、将軍職はずっとオダ家が世襲してるみたいだし、色々違う所は在りそうかな?

「征夷大将軍と名乗られてましたけど、それは何処か特定の敵対勢力があるのでしょうか?」
「なんと? この官職自体もわらわは代々受け継がれてきたものでそう名乗っておるに過ぎず、使われている神言の意味も解っていなかったのだが、アスカ女王は意味が解っておるのか?」

「はい。征夷と言うのは、蝦夷えぞと呼ばれる地域を征伐する為に作られた官職名だと思います、大将軍はそのまま、多くの軍を纏め上げる軍の頂点の称号ですね」
「ほう。中々の見識のようじゃ。一つ聞いてよいか?」

「なんでしょうか? ガイアス大陸では男女問わずそのどちらかと言えば可愛らしいような、フリフリな衣装を身につけるのか? どちらかと言えば女王であるアスカが一番地味な恰好だが?」

 微妙に、ダメージのある質問だな……

「姿かたちは個人の自由で、どちらかと言えば彼らの格好は少数派です……」
「そうであるか。少し安心した」

「この国では、召喚の儀式と称して異世界の人間を呼び出す秘術を使われていると伺いましたが。呼び出された方達とお会いする事は可能でしょうか?」
「代々の稀人まれびとは、全てトヨトミ家の管轄する魔術学園で、魔法陣解析の研究職に就いておるので、学園へ行けば会える」

「それでは、その学園にご案内をしていただけますか?」
「了承した。学園長。アスカ女王ご一行を、学園へご案内してさしあげろ。今日は晩餐会を執り行うので、夕刻にはご一同で戻って来ていただきたい」

「かしこまりましたわ将軍。他にも色々お話を聞きたい事もございますし」
「楽しみにしておこう」

「猿。アスカ様ご一行を学園に案内して差し上げろ」
「御意に、ヒー様」

ヒーと呼ぶでないと申しておろうが」
「ではそれがしも猿とお呼びにならぬようお頼み申しますぞ」

「無理だ!」

 意外に楽しそうな国だね! って思いながら、トヨトミ学園長の案内で、魔術学園と呼ばれる場所へ向かった。

 そう言えばダテさんは私達を案内して、都を危険な状況にさせた疑いで捕縛されちゃってたらしいから、オダ将軍に頼んで解放して貰ったよ。
晩餐会には顔を出すそうだ。

 ちょっとだけ「ゴメンね」って思ったよ。
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