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第86話 ハードルってハードル高いよね?

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 俺は日本陸連の明石さんの要望で、7月の世界陸上に向けて10種競技に挑戦する事になった。
「10種競技とか、何の競技があるのかも良く解って無いぜ」

 取り敢えず、明石さんから貰ったルールブックとにらめっこしながら、競技を把握する事にした。

 核弾頭の警戒に関しては、ほぼ7つの大罪系ダンジョンに持ち込まれるに間違いないと予想し、『Hope Land』内でメンバーに待機して貰いつつ、情報がもたらされるのを待つ事にした。

 そして10種競技だがまず種目と得点の計算方法は、

競技種目
代入する項目
数式 

100m
記録T(秒単位)
25.4347×(18-T)1.81 

走幅跳
記録d(cm単位)
0.14354×(d-220)1.4 

砲丸投
記録D(m単位)
51.39×(D-1.5)1.05 

走高跳
記録d(cm単位)
0.8465×(d-75)1.42 

400m
記録T(秒単位)
1.53775×(82-T)1.81 

110mH
記録T(秒単位)
5.74352×(28.5-T)1.92 

円盤投
記録D(m単位)
12.91×(D-4)1.1 

棒高跳
記録d(cm単位)
0.2797×(d-100)1.35 

やり投
記録D(m単位)
10.14×(D-7)1.08 

1500m
記録T(秒単位)
0.03768×(480-T)1.85

 こんな感じだけど、めちゃ複雑っぽいよね。
 でも要は、全部の種目で1位取っちゃえば、金メダルで間違い無いから得点の計算はあまり考えなくていいかな?

 2日間に分けて開催されるんだけど、初日の5種目は全て現時点での世界記録保持者なわけだし、問題無いけど、2日目の競技は1500m走以外の4種目は、未経験競技なんだよね。

 瀬古先生に協力して貰ってレクチャーをして貰わないとね。

 早速、翌日の放課後は陸上部に出向き、先輩方に挨拶をして世界陸上の10種競技に挑戦する事になった事を発表して、協力をお願いしたぜ!

 先輩たちも、「流石だよなぁ、世界陸上とか俺達もいつかは参加してみたいな」って羨望の眼差しを送って貰えたよ。

 女子選手達は陸上部に所属してる人達って、みんな足首とかが引き締まってるしさ、今の競技ウェアってなんかお腹周りとか露出してるタイプのが多いし、ドキドキしちゃうぜ。

「あれ? 松尾君っていつもGBN12の可愛い娘達が周りに居るんだから、私達なんかに興味持たないでしょ?」
 とか先輩女子たちに言われちゃってけど、

「そんな事ないですよ! 鍛え抜かれたアスリートの姿って素敵だなって思って、見とれちゃってましたよ」って言ったら、

「へぇそうなんだぁ。私達も頑張ってアタックしたら松尾君の彼女になれちゃったりするのかな?」
 って感じでグイグイ来られちゃった。

「まだ俺も高校一年なんだし、先の事はどうなるかなんて解んないです!取り敢えずハードルとか未経験なんで教えて下さいね!」
「うん、ハードルだけじゃ無くて色々教えてあげたいな」

 中々手強いぜこの先輩。
 俺の理性が持つ範囲で頼みますよ、いやマジで……

 でもこの先輩がハードル競技は一番詳しいらしくて、教わる事になったよ。
 男子と女子では距離も違うし大丈夫なの? とか思ったけど重要なのは飛び方の姿勢とか理論とかだから、今のこの高校の男子のハードル選手よりも適任だろうって、瀬古先生も言ってくれたから、信じるしか無いよね。

 ハードル競技の場合は色々な数字が全部中途半端な、キリの悪い数字なのはこの競技自体がイギリスの一般的な距離単位のインチ、ヤード、フィートを基準にしてるからなんだって。

 110mの距離は120ヤードから。
 106.7㎝のハードルの高さは、3.5フィートから。
 1台目のハードルまでの長さである13.72mは15ヤードから。
 インターバルの9.14mは10ヤードからそれぞれ決まってるんだって。

 インターバルの歩数は一般的に3歩と表現されるけど、これは振り上げた前足がハードルを超えて着地するのを0歩目と換算しているからなんだって。

 それに対して後からハードルを越えてきた反対の足が1歩目および3歩目を担当し、3歩目がそのまま次のハードルの踏み切り足となるので、常に同じ足で踏み切っている状態が3歩と表現されているんだよ。

 スタートから1台目までの歩数は8歩が主流だけど、最近のトップ選手は7歩がスタンダードになって来たらしいよ。

 でもこの先輩、桜井さんって言う人なんだけど、「ハードルでね一番重要な要素は解る?」って聞いてきて、俺は解らないから素直に「解りません」って言うと勝ち誇ったように「それはね、身長なんだよぉ」

 って言って来た。
「そんなの努力でどうにもならない人の方が多いじゃないですか?」って聞いたら、
「だからハードルは選ばれた体格を持つ選手が中心の競技なんだよね」って言われた。

 確かに桜井先輩も女子なのに175㎝の高身長だしね。
「何㎝くらいが必要なんですか?」と聞くと、
「理想は185㎝以上だよ、それ以下の場合は100m走が10秒台で走れるとかの条件が無いと、3歩でハードルを越えて行く事が難しくなるから記録が伸びにくいんだよね。でも松尾君は100m10秒台どころか、9秒台だし関係無いのかもね、走高跳も世界記録保持者だからハードルの高さも気にならないだろうし、取り敢えず一回走って見ようか!」

「解りました。8歩で最初のハードルを越えて後は3歩づつですね。やってみます!」

 先輩に手動でタイムを計って貰って言われた通りの歩数で走って見た。
 結果は、13秒80だった。

「え? まじ? 初めてなんだよね??」
「どうしましたか? 先輩」

「このタイムって高校記録超えちゃってるんだけど」
「そうなんですか? ちょっと嬉しいです。因みに世界記録ってどれ位なんですか?」

「12秒80だよ、日本記録は13秒25だよ」
「まだ1秒も差があるんだぁどうやったら、これ以上速く走れそうですか?」

「高校生記録を超えてる人に私なんかがアドバイスとか烏滸《おこ》がましいんだけど、随分高く飛んでたからそれをギリギリの高さで飛ぶ練習をすればいいんじゃないかな?」
「全然参考になります。他には何かないですか?」

「そうだねぇ、最初のハードルまでの歩数をトップレベルの人達に合わせて7歩にできるんじゃないかな?」
「解りました。その2点に気を付けて取り組みたいと思います。ギリギリの高さを飛ぶ練習方法は、良いのありますか?」

「そうだね、ハードルの上に小石置いてそれを蹴る様にとか良く漫画とかで有るけど、そんな事したらシューズ傷付くし、スポンジの棒を張り付けてそれをける様な感じが良いよ。きっと松尾君ならすぐ出来るようになっちゃうんだろうね、才能ってホント理不尽だよね」
「自分だけだとそんな事思い付かないですし、経験に基づいたアドバイスが一番参考になりますから、大感謝ですよ」

 その日は、最初のハードルまでの歩数を7歩に合わす練習をして1時間程で何とか形になって来たぜ!
 
「先輩、ゴールデンウイークは予定詰まってますか? 良かったら是非記録会見に来て下さいね」
「勿論、みんなで応援に行くよ! ちゃんと優勝してメダルを首に掛けた状態で、記念撮影して貰うからね」

「はい! 頑張りますね」

 練習を終えると瀬古先生からも声を掛けて貰えた。
「松尾が来ると、みんなもいつも以上に頑張ってくれてたから、ちょくちょく顔を出してくれよ? 明日はフィールドにやり投げと円盤投げの練習が出来るように、明石さんが用意してくれるからな。専門のコーチも来るそうだぞ」
「ありがとうございます。時間のある時は寄らせて貰いますね」

 練習を終えて帰ろうとしてると、水泳部の北島先生が他の先生と一緒に声を掛けて来た。
「松尾君今日はもう帰りか? ちょっとだけ時間良いかい?」
「はい、大丈夫です」

「高橋先生は知ってるかな?」
「名前だけは解りますけど、お話をした事は無いです。初めましてでいいんですか?」

「入学式とかで顔は見てるけど、初めましてでいいんじゃないかな? スケート部の顧問をしてる高橋ですよろしく頼むな」
「こちらこそです。どうかされましたか?」

「うん、要件は松尾君の通ってるスポーツクラブの地下に結構な大きさのスケートリンクが出来てるだろ?」
「はい、出来てますね」

「そこで、うちの高校のスケート部の練習が出来るように交渉が出来ないかな? と思ってとりあえず聞いて見ようってとこだよ」
「あーそうなんですね。流石にスポーツクラブ自体は僕は水泳の練習させて貰ってるだけなんで、お力になれるかどうかは解りませんけど、所長とは仲が良いので一応伝えて置きますね。申し込みはされてるんですか?」

「そうだね、他にも何校か打診があったらしくて、複数高校だと何か問題があっても困るから、高校は2校に絞って、それぞれ週2回ずつ使えるようにするらしいね」
「そうなんですね、非公式では冬季五輪に挑戦してくれって要請がありますから、僕がスケートやるって言えば問題は無いと思います」

「高橋先生? そう言えば確認してなかったけど、競技はスピードスケートですよね?」
「俺としては、専門はフィギュアだったからそっちもやりたいんだけど、今はスピードスケートだけだね」

「俺って芸術点競うような競技は、絶対無理ですからそこだけはお願いしますよ」
「そうなのかい? コーチがちゃんとついてプログラム通りに滑るだけなら、全然フィギュアでも行けそうだけどね? 噂だと5回転が普通に飛べるんだろ?」

「何が普通なのかは解んないですけど、以前に試しで飛んだら出来たのは間違いないですね、その時のコーチの人は5回転アクセルジャンプって言ってました」
「本当なのかい? ますます勿体ないね。5回転アクセルを組み込んだ演技構成だと、一体どれだけの得点になるのか想像もできないな」

「取り敢えずは伝えて置きますので、お約束は出来ないですけど」
「ああ、頼むよ」

 なんだか、フラグって言うかスケートも結局始めちゃうんだろうな?
 
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