ぼくたちのたぬきち物語

アポロ

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ぼくたちのたぬきち物語(Episode0)

ショートショート・こたぬきの祈り

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 月のない夜。

 山奥の木陰。

 化けたぬきの子どもは泣いていました。
 人間に、うまく変身できないのです。

 このままでは父さんから、また殴られてしまう。
 大好きな父さんが、また旅にでてしまう。

 子たぬきは泣きながら、葉っぱをおでこに乗せました。

「神様、ぼくを助けて」

 子たぬきは心を込め込め、祈りました。
 あきらめるわけにはいきません。

「神様、早くして」

 たぬきの国の神様は、まだ子たぬきに力をくれません。
 子たぬきがまだ、神様を信じてはいなかったからです。

「ああ神様、神様」

 何回の夜が、すぎたことでしょう。
 何個の流れ星が、降っては消えたことでしょう。

 子たぬきがはじめて変化へんげの術に成功したのは、それからずっとあとのことです。
 大好きな父さんが、どこか遠く長い旅へ出ていってしまったあとのこと。

 たぬきの神様はにっこり笑って現れました。

「よくがんばった。もう泣くな。お前に変化の術を授けよう。ついでに名前も授けよう。今日からたぬきちと名のるがよい」

 たぬきちはやっぱり泣いてしまいました。

「遅すぎるんだよー!
神様なんか、きらいだー!」


 それからのお話は、また次の夜に。

 良い子のみんな、おやすみなさい。







🍀


🌟あとがき


 こんばんは。作者のアポロです。

 おやすみと書いておきながら、少々付記を。

 イラストの提供は
 ひろ生    絵描き氏。

 たぬきちくんが日頃からお世話になっているお姉さんです。いつもありがとう。
 もらった絵、何よりのお守りです。

 ひろ生氏の絵画、小説もぜひ閲読してみてください。noteで読めます。


 このちいさなお話は、「こたぬきたぬきち物語」のエピソード0です。

 ある夜、眠れなくて書き下ろしました。
 ちょっぴり皮肉なお話だとは思います。

 しかし希望をあきらめてはいかん・・・! そんな気持ちを込め込め書きました。

 神様には神様なりの愛があって、たぬきちだけでなくぼくたちにも色々試練を与えます。

 最後のハッピーエンドを信じてください。

 読んでくれたあなたの人生が、どうか善き光に導かれますように。


 ラブあんどピース🍀
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