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Story 02 side.TYAKO

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夜の仕事をサボったあたしは、バイト終わりの今野くんを連れてホテルに足を向けた。

戸惑いながらあたしを抱いた今野くんはとても可愛らしかった。



でもそれだけだった。

何も感じない。



あたしにあるのはいつも虚しさだけだ。



何一つ残らない。

薔薇の香りも、琥珀糖の甘さも、それ以外の全てすら。



今野くんの逞しい腕があたしの頭の下に敷かれている。



それだって、ごつごつした異物だ。

あたしには必要ない。



健やかに眠っている彼の寝顔は餡子とよく似ていた。

これも、あたしには憎悪の対象でしかなかった。



ぶぶー、とスマートフォンが震えた。

洋服屋からのメールマガジンだった。



今日はあたしの誕生日だから、割引クーポンを送ってくれたらしい。



やっぱりね。

餡子からの連絡はひとつもないのだ。



あたしはのそのそと起き上がり、スマートフォンをトイレに沈めた。



あたしには連絡を取るべき相手など最初からいなかったのだ。



そのことがようやく分かった。



あたしは今野くんを残してホテルを後にする。



さぁ、どこに行こうか。

誰もいない遠いところにしようか。



「最期は綺麗な海に抱かれてみるのも、良いかもね」
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