その女、女狐につき。

高殿アカリ

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11.平和的に解決しましょう

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「それじゃあ、そういうことで。さようなら」



 私は最後にそう締め括り、後ろにある扉に向かって歩き始めた。

 黒閻に背中を向けるようにして。



 こうすることで、終わりだという印象を彼らに与えるの。

 だから、まさか自分たちが疑われているなんて到底考えられないでしょう?



 うふふ。

 その手の最も内側に、私の駒がいることにも気付かずにね。



 扉に手をかけたところで、私は黒閻の方に振り返った。



 ふと思い立ったのだ。

 一応の決着はつけておくべきなのかなって。



 だから、私は黒閻唯一の女の子に向かって微笑みかけた。



 私の親友。

 私の味方。



 ……私の、仲間。



「ねぇ、一花。私たちはこれからも親友よね?」



 優しく、美しく、嫋やかに。

 儚く、麗しく、艶やかに。



 私たちは笑い合った。



「えぇ、もちろんよ」



 可憐な少女。

 寵愛姫の彼女。

 私の親友。



 一花は、一瞬だけそのヴェールを取り払った。



 まるで白昼夢のように。

 ほんの一瞬の出来事。



 この場に悪女は二人いた。



 その一花の一瞬の微笑みに、黒閻たちが困惑している。



 あぁ、なるほど。

 私は彼らのこの顔が見たかったのだわ。



 入学式の日、一花を初めて目にした時から。

 私はこの瞬間を待ち望んでいたのよ。



 この時、図らずしも当初の私の計画が完遂した瞬間だった。



 私は口角を引き上げて、扉を引いた。

 そして、燦々とした陽光が降り注ぐ中、私は一歩を踏み出した。



 昨夜の電話先の一花を思い浮かべながら。



「ねぇ一花。あなた、スパイをやってみない?」



「あら、何それ。とっても面白そうじゃない」



「黒閻の内部を探って欲しいの。少し危険が伴うのだけれど……」



「うふふ。私を誰だと思っているの? 危険なんて大歓迎よ」



 はてさて、どっちが本当の女狐だったんだか。
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