146 / 163
10.愛ってなんだ
9
しおりを挟む
市川はそんな私に気が付くと、いきなり表情を鋭くさせて、
「……平気なんだな」
低い声で、そう言った。
……怖い怖い怖い。
「……」
冷や汗たらたら。
何も言えない私に、市川はさらに睨みをきつくさせると。
そのまま、私の腕を引っ張り上げて。
どんっ!!
はぁい、イケメンからの壁ドンいただきました!!
で、ここで終わるかと思いきや。
両腕を万歳させられて、手首をひとまとめにされる。
所謂、拘束状態ってやつ?
彼は、その辺に散らばっている新聞紙のスクラップをちらりと見た後、私の顔に視線を戻した。
「何をしていた」
酷く怒っているはずなのに、あまりにも冷静なその声色に、私の背筋を恐怖が走り抜ける。
でも、だからこそ。
私はしゃんと背筋を伸ばして、彼の瞳を見つめた。
何を考えているのか、全く読み取らせてくれない、その深淵を覗き込んだ。
一度、唇を舐め、そして言葉を紡ぐ。
「教えて頂戴。……彼は一体誰? 私と何の関係があるの?」
私の問いかけに、市川は長い溜息を一つ落とす。
長い長い溜息を。
そうして全てを吐き出した彼は、私の瞳を捉えて、こう言った。
「君が僕にキスしてくれるのなら、教えてあげるよ」
それから、とてつもなく嫌な笑い方を一つ。
出来ないんだろう?
そう言いたげな市川の視線がこちらに再び向けられる前に。
私は、市川の唇を塞いだ。
もちろん、私自身の唇で。
まうすとぅーまうす。
これがファーストキスなんだけどなぁ。
私の頭の中は酷く冷静に、そんなことを考えていた。
なるほど。
こんな状況でも、私の脳みそはどうやら正常に機能しているみたい。
「……平気なんだな」
低い声で、そう言った。
……怖い怖い怖い。
「……」
冷や汗たらたら。
何も言えない私に、市川はさらに睨みをきつくさせると。
そのまま、私の腕を引っ張り上げて。
どんっ!!
はぁい、イケメンからの壁ドンいただきました!!
で、ここで終わるかと思いきや。
両腕を万歳させられて、手首をひとまとめにされる。
所謂、拘束状態ってやつ?
彼は、その辺に散らばっている新聞紙のスクラップをちらりと見た後、私の顔に視線を戻した。
「何をしていた」
酷く怒っているはずなのに、あまりにも冷静なその声色に、私の背筋を恐怖が走り抜ける。
でも、だからこそ。
私はしゃんと背筋を伸ばして、彼の瞳を見つめた。
何を考えているのか、全く読み取らせてくれない、その深淵を覗き込んだ。
一度、唇を舐め、そして言葉を紡ぐ。
「教えて頂戴。……彼は一体誰? 私と何の関係があるの?」
私の問いかけに、市川は長い溜息を一つ落とす。
長い長い溜息を。
そうして全てを吐き出した彼は、私の瞳を捉えて、こう言った。
「君が僕にキスしてくれるのなら、教えてあげるよ」
それから、とてつもなく嫌な笑い方を一つ。
出来ないんだろう?
そう言いたげな市川の視線がこちらに再び向けられる前に。
私は、市川の唇を塞いだ。
もちろん、私自身の唇で。
まうすとぅーまうす。
これがファーストキスなんだけどなぁ。
私の頭の中は酷く冷静に、そんなことを考えていた。
なるほど。
こんな状況でも、私の脳みそはどうやら正常に機能しているみたい。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
理不尽な理由で婚約者から断罪されることを知ったので、ささやかな抵抗をしてみた結果……。
水上
恋愛
バーンズ学園に通う伯爵令嬢である私、マリア・マクベインはある日、とあるトラブルに巻き込まれた。
その際、婚約者である伯爵令息スティーヴ・バークが、理不尽な理由で私のことを断罪するつもりだということを知った。
そこで、ささやかな抵抗をすることにしたのだけれど、その結果……。
【完結】双子の伯爵令嬢とその許婚たちの物語
ひかり芽衣
恋愛
伯爵令嬢のリリカとキャサリンは二卵性双生児。生まれつき病弱でどんどん母似の美女へ成長するキャサリンを母は溺愛し、そんな母に父は何も言えない……。そんな家庭で育った父似のリリカは、とにかく自分に自信がない。幼い頃からの許婚である伯爵家長男ウィリアムが心の支えだ。しかしある日、ウィリアムに許婚の話をなかったことにして欲しいと言われ……
リリカとキャサリン、ウィリアム、キャサリンの許婚である公爵家次男のスターリン……彼らの物語を一緒に見守って下さると嬉しいです。
⭐︎2023.4.24完結⭐︎
※2024.2.8~追加・修正作業のため、2話以降を一旦非公開にしていました。
→2024.3.4再投稿。大幅に追加&修正をしたので、もしよければ読んでみて下さい(^^)
【完結】捨ててください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。
でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。
分かっている。
貴方は私の事を愛していない。
私は貴方の側にいるだけで良かったのに。
貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。
もういいの。
ありがとう貴方。
もう私の事は、、、
捨ててください。
続編投稿しました。
初回完結6月25日
第2回目完結7月18日
【1/21取り下げ予定】悲しみは続いても、また明日会えるから
gacchi
恋愛
愛人が身ごもったからと伯爵家を追い出されたお母様と私マリエル。お母様が幼馴染の辺境伯と再婚することになり、同じ年の弟ギルバードができた。それなりに仲良く暮らしていたけれど、倒れたお母様のために薬草を取りに行き、魔狼に襲われて死んでしまった。目を開けたら、なぜか五歳の侯爵令嬢リディアーヌになっていた。あの時、ギルバードは無事だったのだろうか。心配しながら連絡することもできず、時は流れ十五歳になったリディアーヌは学園に入学することに。そこには変わってしまったギルバードがいた。電子書籍化のため1/21取り下げ予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる